96 臨時世界魔法会議10未成年の罪
フィスが尋ねた。
「今回の王子たちは未成年だろ? 竜皇国では、未成年の罪は本来どうなるんだ?」
「未成年の犯罪自体が、ほとんどないんだよ。
周りがもう怖いからな……。俺のところの坊主たちは、五歳くらいでもう魔力が強かったからなぁ。
親に怒られれば、それで終わることが多い。
俺もよく投げられたし……ユキノアも我が子たちを投げてたな。
ユキノアが魔力を解放して、子供たちが失神することだってある。
俺の前に、ユキノアのほうが超絶怖いんだよ……。
これは内緒だぞ。
成人も、基本的には学校を卒業してからだ。
ただ、学校が始まる前から王族は国の仕事の補助をしている。
失敗すれば、人族や獣人、他種族の誰かが天に還ることだってある。だから、許されないだろ。
『弱い者だから仕方ない』という考え方はないんだ。
自分の強さを過信させないためにも、自分の強さには責任が伴うと教える。俺もそうやって育った。
ただし、成人後の犯罪については、基本的にその罪に応じた処罰をする。
分からないなら、分かるまで教える。それが基本だな。
まあ、俺の周りには、そういう犯罪をする奴はいないけどな。
『強いから、弱い者を虐げても仕方ない』
なんて考え方もない。
……でも、これは竜人の考え方だろ? フィスのところはどうなんだ?」
フィスは少し考えてから答えた。
「俺のところも、そうだな……。規則を破れば、住む場所を追われる。
村というより、皆で互いに安全を守り、護られながら生きているからな。
生存率を考えれば、かなり厳しい環境だ。
でも……大人になってから、そういうことをする者はいないな。
規則は規則だ、という考え方になっていく。
それに、年齢だけじゃない。エルフとしての思想教育が厳しいし、その内容も多い。勉強ばかりだ。
精霊や妖精は我儘で激しいから、世話も大変なんだよ。
人族のような短い人生じゃないからな。
エルフには、もともと他人を虐げるような性質がない。
他人と自分を比べないんだ。誇り高く、それぞれが静かに自然の中で、のんびり生きている。
……魔石戦争以来、考え方は変わったけどな。
やられないためには、状況を把握して備えておくことが大事だ。ユキが言っていた通りだな。
『ないなら、ないでいい』という考え方はいい。
でも、『あるかもしれない』という可能性を考えないことのほうが怖い。
俺もエリも、死ぬまで忘れないだろうな。
『守る』なんて、簡単に口にしていい言葉じゃない。あの時、俺たちはそれにちゃんと気づけた。
それが大事なんだろ?
……じゃあ、裁判も大人と同じなんだな?」
「ああ。例外はない。
これまでの処罰で、最低年齢は六歳だからな。九歳なら、もう十分に対象になる。
ただし、これは人族側の規則だ。竜人が口を出せば、干渉になる。
……それより、今後の魔塔の監査について、率直な意見を聞きたい。どう思う?」
フィスは少し考え、それから口を開いた。
「精霊王様と竜神様、それにクロリナラドと話していたんだが……。
侍女精霊のサラニは、言語や歴史、それに全世界の地域についての知識が高いだろ?
それに、ヴァリアードについていたサラさんは、魔術と精霊魔法が得意だ。
だったら、二人に頼んだらどうかって話していた。
今回の件で、精霊たちもかなり怒っているからな。
サラニについては、精霊王様のもとで今している仕事が、監査人の仕事とほとんど同じなんだそうだ。
だから、ヴァリアードとサラさん、サラニの三人に現場へ行ってもらう。
そして、竜皇国ではクロリナラドと番が、サラたちの精霊眼を使って監査する。そういう話になっていた。
クロリナラドも、『番が竜皇国から出ないのならいい』と許可したみたいだ。
だから、魔術協会、精霊協会について、竜皇国が第三者による監査を行うことで決定してほしい、と話していた。
サラニが『ものすごい竜気と精霊気をまとって降臨するから』って笑っていたぞ。
後で、竜皇国の監査人として正式に呼んでほしい、とも言っていた」




