95 臨時世界魔法会議9精霊教会の長
「各国からの緊急魔鳥便がかなりの数、届いているとのことだ。三十分の休憩に入る」
その言葉を受け、各国の国王や関係者は足早に退室していった。
魔術協会長と関係者も、用意された待機室へ移動する。
その中には、魔術協会長に変装した竜皇国王太子のルディノールの姿もあった。
待機室に入ると、ルディノールは念話をつないだ。
「サラ、今の状況はどうなっている?」
「はい。南大陸カーナリアン王国は、国土の三分の一ほどが自然崩壊に向かう可能性があります。
特に王妃の実家と親族の領地では、豪雨が始まった段階で避難を呼びかけたため、指示に従った者たちは無事に避難できたようです。
一方、ルノア様とヴァリアード様の元領地周辺は、今のところ普段と変わらず穏やかだそうです。
東大陸マーカーハザ王国では、国土の半分ほどで先月から一度も雨が降っていません。
このままでは砂漠化する可能性があると、精霊王様がおっしゃっています。
また、十五体の精霊を狩猟し、捕らえた精霊を斡旋していた者が、かつてマーカーハザの魔塔を追放された者であることも判明しました。
国王ヨサンと王太子には精霊様や妖精様に対する誠意がなく、国民の間でも精霊様への感謝が失われ、精霊様離れが進んでいるようです。
そのため、精霊王様はかなりお怒りです。
さらに、隣国のタハナヤ森林国への侵略を防ぐため、森林の魔木たちが力を合わせ、マーカーハザ側から入る道を迷いの森へ変えているようです。
タハナヤ森林国では、自然を深く愛するカイリ夫妻とその子供たち、そして国民を、森そのものが守っているとのことです。
それから、精霊王様から伝言があります。
今後の世界魔法会議に精霊協会も正式に参加し、各国と連携して世界の安定に協力してほしいとのことです。
竜神様と精霊王様のお二人からのご意向でもあります。
そのため、精霊協会の長を今から移転魔法でこちらへ送ります。
この後の会議から、急遽参加させてほしいそうです。
会議終了後で構わないので、今回問題となった精霊様を使役する魔術についての説明と、今後の対策についても協議したいとのことです」
「了承した。対策についても、すでにこちらで準備を進めている。
竜神様と精霊王様には、心配はいらないと伝えてくれ」
「承知しました」
その直後、待機室に移転魔法の光が現れた。
光が消えると、二人の人物が立っていた。
「お久しぶりだ、ルディノール。
精霊協会の長になったエルフのフルエフィスだ。学院を卒業して以来だな」
「フィスか。久しぶりだ。
やはり、頼まれたのか?」
「そうだな……頼まれた。
私もエリもユキに会いたかったからな。
まあ、クロリナラドにはとても言えないが……。
ところで、クロリナラドはどうした?
竜神様のところか?
サラゴも久しぶりだな。何人になった?」
「お前にも分かるんだな……。俺にはまったく分からないから、本当にすまないな、サラ」
「お気になさらずに。人数については内緒です」
「そうか。
ところで、結婚生活はどうだ? エリは?」ルディノールが聞いた。
フィスが笑った。
「ユキが言っていた通りだ。素晴らしい。
ただ、もういつも一緒だよ。ほら」
隣にいた女性が一歩前へ出る。
「精霊協会の事務次官として参りました、エリです。
サラゴ、久しぶり。これからよろしくね」
「エリも久しぶりです。
こちらこそよろしくお願いします」
フィスは改めてルディノールへ向き直った。
「今後、世界魔法会議には必ず出席する。
精霊協会としても各国と連携していくから、よろしく頼む。
それから……今回の自然崩壊はかなり深刻だ。
百年、二百年程度では元に戻らないと思う。
これは会議では伝えなくていい。
精霊王様からも、今は公表しないようにと言われている。
私はこの後、タハナヤ森林国へ寄ってから帰るつもりだ。
カイリ夫妻にも久しぶりに会いたいからな。今から楽しみだ」
ルディノールは静かに頷いた。
「分かった。会議では必要な情報だけ共有しよう。
これからは精霊協会とも連携して、世界の安定に努めよう」
待機室には、これまでとは違う新たな協力体制が静かに築かれ始めていた。




