92 臨時世界魔法会議6 竜皇国国王降臨
「カーナリアン王国国王と第三王子以外の者は、頭を上げよ。着席を許す」
その言葉に、全員がゆっくりと頭を上げ、静かに着席した。
竜皇国王は会場全体を見渡すと、重々しく口を開いた。
「まず、皆に伝えておくことがある。
先日、竜神様より神託があった。
竜神様の愛し子様が、竜皇国で見つかった。
そして此度の愛し子様は、精霊王様からも祝福を受けておられる。
ただし、愛し子様は普通の生活を望まれているゆえに、その身に関する一切の情報は開示しない。
詮索することも、探ろうとすることも許さぬ。
これまで通り、竜皇国は他国へ干渉しない。
そのことを、皆、決して忘れるな。良いな?」
その瞬間、竜皇国王から凄まじい竜気と魔力が放たれ、会場全体を覆い尽くした。
誰一人として返事をすることができない。
「続いて、今回の件についてだ。
私は先ほど、精霊王様ともお話をさせていただいた。
精霊が離れた土地では、当然ながら自然の崩壊が始まる。
それぞれが犯した罪は、それぞれが償うしかない。我々が代わってどうにかできるものではない。
できることは、真摯に謝罪すること。
そして二度と同じ過ちを繰り返さず、その過ちを忘れずに語り継いでいくことだ。
これまで敢えて皆には伝えてこなかったが、スタンピードや予知・予兆の管理、魔石の流通などについて、我が竜皇国の王子たちが魔術協会にも情報を開示し、善意で協力している。
だが、過去には竜皇国への侵攻や、魔石戦争など、暴挙に出た国も複数あった。
では、そのような国々がその後どうなったのか。
我々は、その末路を知らせてはおらぬ。
なぜだと思う?
語り継ぐ者が、誰一人として残っていないからだ。
本当に強い者が弱き者を助けるのは、当然のことだと思っていた。
だからこそ、わざわざ言葉にする必要もないと思っていた。
だが、『言わなければ分からないこともある』と、竜神様の愛し子様に諭された。
ゆえに、敢えて伝えておく。
竜神様でさえ、スタンピードを管理することはできぬ。
あれは自然の摂理によって起こるものだ。
どこで、いつ、突然発生しても不思議ではない。
そのことを決して忘れるな。
各国も、日頃から備えと対策を怠らぬようにせよ。
そして、当たり前のことではあるが――自然と精霊様、妖精様を大切にし、常に感謝を忘れずに誠実に生きること。
それが、竜神様の愛し子様からの伝言だ。
魔術協会の長、そして精霊協会の長とも互いに面識を持ち、これからも世界の安定のために努めよ。
以上だ」
言葉が終わった瞬間――。
まばゆい光とともに、竜皇国王の姿が消えた。
同時に、会場を満たしていた凄まじい魔力も跡形もなく消え去る。
誰も、すぐには動けなかった。
全員が高魔力酔いをおこし、青ざめた顔で息を整えている。
あまりにも強大な竜気と魔力。
その場にいた者の多くが、あと少し長く晒されていれば意識を失っていたのではないかと思うほどだった。
大会議場には、しばらくの間、誰一人として言葉を発することができないほどの沈黙が続いた。




