91 臨時世界魔法会議5他国の愛し子の伝言
東大陸マーカーハザ王国の国王ヨサンが挙手した。
「怒りに任せず、感情を抑えて話さなければならないことは理解している。
しかし、最近、我が国では精霊魔法の使い手が急激に減少している。原因も分からず、状況を確認することすらできず、国全体が混乱している状態だ。
さらに、精霊王様との交信も途絶えている。
詳しい状況を知るためには、どうすればよいのだろうか?」
魔術協会の長は静かに答えた。
「機密情報が含まれるため、詳しい話は別室で対応する。この場での発言はここまでにしてほしい。
残念ながら、マーカーハザ王国出身の魔塔職員が複数、この件に関わっていることが確認されている。
今後の処遇については、我々が決めることではない。
精霊界側の判断に委ねられることになると考えている。
我々は、魔術協会として果たすべき責任を果たしているにすぎない。
今後は精霊協会とも連携し、対応していく必要があるだろう」
その言葉が終わると、一人の国王が挙手した。
魔術協会の長が発言を許可する。
「西大陸ランボトル精霊国、国王リヤンガだ。
我が国の精霊王様の愛し子様から託された伝言を、この場でお伝えしてもよいだろうか?」
「了承する」
リヤンガは一度深く息を吸い、静かに口を開いた。
「この世界に生きる者には、誰もが平等に生きる権利がある。
誰かを利用し、虐げれば、当然その報いを受けることになる。そのことを理解しなければならない。
世界が精霊様と妖精様と自然を大切にしなければ、この世界そのものが崩壊する。
そんな当たり前のことが、なぜ分からないのか理解に苦しむ。
精霊様は便利な魔道具ではない。
互いに幸せに生き、大切にされる関係があってこそ、その先に精霊魔法を授けてもらっているのだ。
精霊様が存在することは、決して当たり前ではない。
精霊界にも厳しい規則がある。
その規則に違反した者は、これからの人生で、精霊様がいなくなるということが何を意味するのか、自ら理解することになるだろう。
以上だ」
リヤンガは一度言葉を切った。
「お告げを受けた時、私は恐ろしいと感じた。
だが、今この場にいることで、その言葉の意味をすべて理解した。
これは他国からの干渉などではない。
今、世界そのものに危機が迫っているのだと理解するべきだ。
もし自分たちが間違っていたのなら、真摯に謝罪し、許しを得られるまで努力を続けなければならない。
そして、二度と同じことを起こさないために、何度でも伝え続ける必要がある。
危機感を持って、この場で真剣に話し合うべきだ。
以上だ」
リヤンガが着席すると、魔術協会の長が続けた。
「他国にも神託やお告げを受けている国王がいるのであれば、挙手のうえ発言をお願いしたい」
その瞬間だった。
大会議場を見下ろす中央上部に、これまで存在しなかった格式高い椅子と簾が、まばゆい光とともに姿を現した。
一瞬にして、会場の空気が変わる。
誰もがその意味を理解した。
全員が一斉に立ち上がり、右の掌を左胸に当てる。
そして、腿の近くまで深く頭を下げた。
何十年ぶりだろうか。
竜皇国王――その御方が、この場にご光臨された。




