88 臨時世界魔法会議2定例報告
全員の着席が確認され、定刻どおり臨時の世界魔法会議が始まった。
冒頭、魔術協会の長が立ち上がり、各国へ向けて説明を始めた。
「開催にあたり、まずヨーリアン帝国の皆様に御礼を申し上げたい。急な日程変更にもかかわらず、会場の準備と対応をしていただき、感謝する」
そう言って、ヨーリアン帝国の席へ向けて目礼した。
続いて、魔術協会の定例報告に入る。
「まず、数年前に協会の対応が遅れたことで被害が拡大した、魅了による被害について報告する。
先月、南大陸のカーナリアン王国で、魅了の使い手が確認された。
今回は初動が早かったため、被害者は八名に留まった。そのうち三名は現在回復し、すでに日常生活へ戻っている。
残る五名については、麻薬や薬草による依存症と同様の状態となっており、残念ながら日常生活への復帰は不可能との診断を受けている」
会場内に、重い空気が広がった。
「魅了は非常に危険な魔法であることから、幼少期からの早期発見と対応が必要だという研究者たちの意見を受け、今回、各国へ通達することとなった」
魔術協会の長は手元の資料を確認しながら続けた。
「今回確認された魅了の使い手にも、幼少期から家族間の問題があったことが分かっている。
両親や義両親の生家から、正当な理由もなく祖父母や教会、その他の親族などへ養育を託す申請があった場合は、必ず調査対象とするよう、各国で法整備を徹底していただきたい」
数人の国王が資料へ目を落とした。
「また、これまで魔力判定を受けられる年齢は国によって異なっていたが、今回、竜皇国を含め、三歳から無料で魔力判定を受けられる制度へ統一することとなった。
さらに、全世界で早期に判定を受けられるよう、各国の教会、学校、国立病院に加え、要望の多かった各種ギルドにも判定の場を設ける。
親の承諾がなくても、本人が希望すれば無料で受けられる体制を整えた。
早い国では明日から、遅くとも今週末までには、世界各地で対応が開始される予定だ」
魔術協会の長は一度言葉を切った。
「ここまでで質問のある方は、挙手のうえ国名と氏名を名乗ってから発言を――」
その言葉が終わる前に、一人の国王が手を挙げた。
「東大陸、マーカーハザ王国の国王、ヨサンだ」
名乗ってから、質問を続ける。
「我が国では、三歳の祝いとして子供が全員登城し、国王と面会する習慣がある。その際に、王宮内で魔力判定を行いたいのだが、先ほどの説明には王宮という場所が含まれていなかった。王宮でも対応可能か?」
「対応可能だ」
魔術協会の長は即答した。
「ただ、マーカーハザ王国は精霊魔法を使う者が多い国だと理解している。魔力判定を希望する者が増えてきたということか?」
「そうだ。我が国でも人族との婚姻が進み、ここ百年ほどで精霊魔法と魔術魔法の割合が近くなっている。
さらに、両方の魔法を使える者も増えてきた。
我が国だけでは対応できる技術が不足しているため、精霊魔法と魔術魔法の両方に対応した判定装置が必要だと考えている。
そうした判定も可能なのか聞きたい」
「対応可能だ」
魔術協会の長は手元の資料を確認した。
「ただし、必要な台数を揃えるまでには、来月下旬頃まで時間が必要となる。
他国についても、判定が必要な場所の設置や、鑑定用魔道具について相談がある場合は、魔術協会本部の魔道具事務次官宛てに書簡で依頼していただきたい」
そこで一度顔を上げ、会場を見渡す。
「では、次の議題へ進んでもよいだろうか?」
そう確認すると、魔術協会の長は再び手元の資料へ視線を落とし、次の議題について説明を始めた。




