49 竜皇国王様の伝言
サバスが一歩前へ進み、静かに話し始めた。
「竜皇国国王様からのご伝言をお伝えいたします。
秘匿すべき内容が含まれているため、現状では私から口頭でのお伝えとなりますことを、どうかお許しください」
そう前置きしてから、サバスは姿勢を正した。
「『白銀の腕輪による『運命の番』の契約が無事に承諾され、契約を結ぶことができたことを、まずマクアリール公爵家当主ラルフ殿に許可いただいたこと、心より感謝申し上げる。
竜神様の愛し子でもあり、まだ十歳という幼い年齢での『運命の番』の契約となれば、ご心配も多いことと思う。
クロリナラドには、必ずルノア様を守るよう伝えている。これから先も、何があろうとも守り抜くことを約束する。
また、竜神様も竜皇国への訪問を強く望まれている。ご都合のよい時期が決まり次第、伝えていただきたい。
先ほど竜神教会より、竜神様の愛し子であるルノア様がこの世界に存在することを、世界へ向けて正式に発表した。
なお、次男クロリナラドとルノア様が『運命の番』であることについての婚約発表については、今後の状況を見ながら調整が必要だと理解している。
本人は一刻も早く発表したいと考えているだろうが、何よりもルノア様本人の意思と希望を最優先としてほしい。
今後のことについては、ザバスを通して話を進めることになる。どうかよろしくお願いする』
以上が、竜皇国国王様からのご伝言でございます」
サバスはそう告げると、深々と頭を下げた。
その横で、クロリナラドが両手で耳の上あたりを掻きながら、頭を抱えるように呟いた。
「父上……何でそう言うかな……。俺の日頃の行いなのか? 俺が悪いのか……?」
ぶつぶつと呟きながら目を閉じる。
ラルフとヴァリアードは、その様子を見ながら何とも言えない表情を浮かべていた。
サバスはクロリナラドを見送ってから、改めてラルフへ向き直った。
「では、今後の移動門の設置についてお話をさせていただきたい。
まずはラルフ様のご希望をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか」
「設置については、ルノア様がお目覚めになってからでも問題ございません。
設置場所についても、すぐに決める必要はありませんので、皆様で相談していただければと思います」
「承知した」ラルフが頷いた。
そして、少し声を落としてサバスが続ける。
「それと、ルノア様は現在お休みになられていると思います。
実は、今のクロリナラド殿下は『運命の番』であるルノア様から長時間離れることが難しい時期に入っております」
「『運命の番』の契約の影響か?」
ヴァリアードが尋ねた。
「はい。そのため、殿下にはルノア様のベッドの側で待機していただきます」
サバスは二人へ向けて、申し訳なさそうに頭を下げた。
「大変申し訳ございませんが、しばらくの間、ラルフ様とヴァリアード様にはルノア様のお部屋へ入室していただくことができません。ご心配されるお気持ちは十分に理解しておりますが、福様とサラたちも付き添っております。
ルノア様の安全については、どうかご安心ください」
サバスがそう告げると、ラルフは少し考えてから静かに頷いた。
「分かった。ルノアを頼む」
その言葉を聞いたクロリナラドが立ち上がった。
「では、俺はノアの側へ戻る。後はサバスに頼む」
「承知いたしました」
クロリナラドはそれだけ告げると、ルノアが休んでいる部屋へ戻るため、静かに部屋を出ていった。
扉が閉まるのを確認してから、サバスは改めてラルフとヴァリアードへ向き直った。
「ラルフ様、ヴァリアード様。少し今後のことについて打ち合わせをさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか」
二人が頷く。
「殿下に確認できなかったことも、いくつかあるかと思います。
これからの移動門の設置や、天空都市への訪問、竜皇国との連絡など、気になることがあれば遠慮なくお聞かせください」
サバスは二人を見つめ、穏やかに続けた。
「ルノア様のこれからをお守りするためにも、今のうちに皆様でしっかりと話をしておきたいと思っております」
ラルフはその言葉に頷いた。
「分かった。では、まず移動門の設置場所から話そう」
こうして、ルノアが眠っている間に、これから始まる新たな生活と、竜皇国との関係についての話し合いが始まった。




