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転生したのでレアアイテム集めたい…えっヒロイン退場してしまいました  作者: 5H


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444/456

444 リオンブラン王国 魔術学園

 移動門を抜けた二十名の留学生と、魔道具人形を出迎えたのは、教育省に新設された留学支援課の代表を務める蛇族の男性だった。


 留学支援課は、今回の留学生を受け入れるため、一ヶ月前に急遽設立された部署である。


 代表の男性は、アキとサキの三番目の兄にあたるルセポンブラン侯爵家の三男、タイムだった。


「はじめまして。アキとサキの三番目の兄、タイムです。皆さんの学びを補助させていただきます。よろしくお願いします」


 タイムは穏やかな笑みを浮かべ、二十名を見渡した。


「このまま、リオンブラン王国の魔術学園へ移動します。移動門を続けて使用しますが、気分の悪い方はいませんか?」


 生徒たちは互いに顔を見合わせたあと、全員が問題ないと答えた。


「わかりました。それでは、もう一度移動します」


 タイムに促され、留学生たちは再び移動門をくぐった。


 次の瞬間、目の前に広がった光景に、全員が言葉を失った。


 そこは、木目の美しさと重厚さを兼ね備えた、広大な移動門の施設だった。


 百人以上が一度に入っても余裕があるほどの空間が確保され、周囲には整然と設備が配置されている。


 留学生たちは、思わず立ち止まった。


 ヨーリアン帝国にも移動門はある。しかし、これほど大きな施設は見たことがなかった。自国のものと比べても、こちらの規模は倍以上ある。


「……!?」


 驚きのあまり言葉を失う生徒たちを見て、タイムは理由を察したようだった。


「有事の際には、職員や学生たちを安全に避難させなければなりませんからね。子供たちは、この国の未来ですから」


 タイムは、それが当然のことだと言わんばかりに微笑んだ。


 その言葉に、生徒たちは改めて周囲を見渡した。


 これほどの規模の施設を、緊急時に人々を守るために整備している。自国にはないその考え方は、彼らにとって新鮮だった。


 やがて一行は、魔術学園の広々とした応接室に案内された。


 留学生二十名と、同行してきた魔道具人形が代表で一体、室内に入る。


 すでに学園長と担当教員が待っていた。


「皆さん、はじめまして。リオンブラン王国の魔術学園で学園長を務めている、ライオン族のサーチです」


 大きな体の学園長のサーチは、明るい声で挨拶した。


「そして、皆さんの担当教員を務める虎族のマーク先生です」


 紹介されたマークは、大きくゆったりとした体格に立派な縞模様を持つ獣人だった。


 生徒たちは、二人の姿を見つめながら、知らず知らずのうちに背筋を伸ばしていた。


 事前の授業で獣人社会について学んでいたとはいえ、実際に目の前にすると緊張してしまう。


 そんな生徒たちの様子に気づいたのか、サーチは楽しそうに笑った。


「皆さん、かなり緊張していますね。大丈夫ですよ。食べたりしませんからね」


 サーチの言葉に、何人かの生徒がぎこちなく笑った。


「本当に、本当に、食べませんからね。それから、皆さんも獣人の習慣について学んできたと思いますが、私たちには『咆哮』という魔術があります。生徒をたしなめる際にもよく使いますので、これから何度も耳にすることになるでしょう。なるべく早く慣れてくださいね」


 サーチの説明に、マークも大きく頷いた。


「咆哮に驚いて、魔術を暴発させないように気をつけてください。最初は驚くかもしれませんが、慣れればそれほど気にならなくなりますよ。

 それから……もし怖さのあまりお漏らしをしてしまっても、誰も笑ったりしません。小型の獣人は、本能的に恐怖を感じると、そうなってしまうことがありますからね。着替えもたくさん用意されていますので、心配しないでください」


 あまりにも具体的な説明に、生徒たちは思わず苦笑した。


 これまで授業で学んできた習慣の話とは違い、実際にその場に立ち会ってきた者だからこそ話せる内容だった。

 異性にはなかなか尋ねにくいことまで、二人は包み隠さず説明してくれている。


 生徒たちの反応を見て、マークもまた、穏やかな笑みを浮かべた。


「基本的な学則は、皆さんが通っていた魔術学院と同じです。大きく異なる部分はありませんので、安心してください。

 魔道具人形も六年前からヨーリアン帝国から購入し、導入しています。使い方も同じですからね。」


 続いて、サーチは今後の予定を説明した。


「魔道具人形は、一人につき一体ずつ付きます。皆さんの学習や生活を補助するためのものです。明日、学園で在学生に紹介します。」


 留学生たちは、自分たちに同行してきた魔道具人形へ目を向けた。


「今日は、まず荷物を片付けてください。そのあと、学則を再確認してもらいます。制服は、これまで学院で使用していたものをそのまま着用してください」


 サーチは一度言葉を切り、最後に付け加えた。


「それから、皆さんには、今後、東大陸語で会話していただきます。在学生には、南大陸語で返答するように伝えてあります。

お互いの言葉を学ぶためですから、積極的に交流してください」


 東大陸語を学ぶための授業が、早速実践の場へと変わるのだ。


「来季の魔術学院試験を受ける予定の生徒たちも、皆さんに積極的に話しかけてくると思います。

わからないことがあれば、遠慮なく周囲に尋ねてくださいね。できたら言語も教えてあげてください」


「はい。よろしくお願いいたします」


 二十名は揃って頭を下げた。


 その後、留学生たちは魔道具人形の案内で、それぞれの部屋へと向かった。


 廊下を歩きながら、生徒たちは学園の設備を目にして、何度も驚かされた。


 広々とした廊下に、手入れの行き届いた内装。安全性と使いやすさを考慮した設備の数々。そして、魔術学院を上回るほど充実した施設。


 移動門の規模だけではない。


 この国では、学生が学ぶ環境そのものに、十分な資金と手間がかけられているのだ。


 生徒たちは、ここに来るまで、自分たちの国が十分に豊かであり、教育環境にも恵まれていると思っていた。


 しかし、実際にリオンブラン王国を訪れたことで、その認識が大きく揺らいでいた。


 自分たちは、世界のすべてを知っているわけではなかった。


 知らないことが、まだ数え切れないほどある。


 その事実を、生徒たちは少しずつ受け入れ始めていた。


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