421 ヴァリアード リシューを紹介する。
ヴァリアードとリシューは、手を繋いだままタスワンズ湖を離れ、マクアリール公爵家の居城へと戻った。
二人の左手首には、銀色の環と水色の光が重なり合う、お揃いの印が刻まれている。
目が合うたびに自然と笑みがこぼれ、まだ照れくささは残っていたものの、どちらも手を離そうとはしなかった。
湖畔で二人を見送った西と南の精霊王様は、週末は二人でゆっくり過ごし、これからのことを十分に話し合うよう告げていた。
「二人でこれからどうしていくのか、自分たちで決めよ。そのうえで、決まったことを報告してくれればよい」
そう言い残し、二人の精霊王様は精霊界へと帰っていった。
マクアリール公爵家の応接室では、ルノア、福、クロリナラド、ラルフ、サラたちが二人の帰りを待っていた。
扉が開き、ヴァリアードとリシューが手を繋いで入室すると、真っ先に福が嬉しそうな声を上げた。
「ヴァリアード、おめでとう! ほら、ちゃんと出会えたでしょ。よかったね。リシューもおめでとう!」
福は翼を大きく広げ、二人の周りをくるりと回った。
「ありがとう、福様」
「ありがとうございます、福様」
二人が礼を告げると、福は満足そうに羽ばたいた。
続いて、ラルフがリシューの前へ歩み出た。
「はじめまして、リシュー様。いつも娘がお世話になっています。ルノアの父、ラルフです。ラルフと呼んでください」
「はじめまして、ラルフ様。リシューです。こちらこそ、ルノア様にはお世話になっています」
丁寧に挨拶を返すリシューに、ラルフは穏やかに微笑んだ。
「ヴァリー、リシュー様という『運命の番』に出会えたこと、心からお祝い申し上げる」
そう言ったラルフの目元は、わずかに潤んでいた。
「ヴァリーは私の義兄であり、幼馴染でもある。口が悪く、子供のようなところもある男だが、どうかよろしく頼む」
「おい、ラルフ。余計なことを言うな」
「本当のことだろう?」
ヴァリアードが睨んでも、ラルフは涼しい顔をしている。
「ヴァリー、本当に、本当によかったな」
「ああ。ありがとう」
短い返事だったが、長年の付き合いがある二人だからこそ、そこには言葉以上の思いが込められていた。
ラルフは二人の左手首に目を留めた。そこに刻まれた印を見つめ、静かに問いかける。
「そうか……命を分け合ったのだな。これで、お前も長命になったのか?」
「ああ。そういうことだ」
「そうか……」
ラルフは安堵したように息を吐いた。
ヴァリアードがこれまで一人で生きてきたことも、どれほど多くのものを抱えてきたのかも、ラルフはよく知っている。
そんな彼が、ようやく生涯を共にしたいと思える相手に出会えた。
しかも、互いの命を分かち合い、これから先の長い年月を共に歩めるようになったのだ。それが、何よりも嬉しかった。
しかし、ラルフはふと思い出したように表情を引き締めた。
「だが、ヴァリー。お前が私に言ったことを、今度は私がお前に言うぞ」
「……何だ?」
「相手は未成年だ。成人するまで、あと三年ある。誠実に過ごせ!」
「分かっている!」
ヴァリアードが即座に言い返すと、ラルフは満足そうに頷いた。
「ならばいい」
「まったく、お前は……」
呆れたように額を押さえるヴァリアードを見て、クロリナラドが苦笑しながら二人に声をかけた。
「ヴァリアード、リシュー様、おめでとう。
そして、はじめまして。クロリナラドだ。クロリナラドと呼んでくれ。ノアと親しくしてくれてありがとう」
「ああ。ありがとう」
「はじめまして、クロリナラド様。ありがとうございます。私の方こそ、ルノアにはお世話になっています」
挨拶を交わしたクロリナラドは、ルノアへと視線を移した。
「ノア。ヴァリアードのイヤーカフを二つに分けて、リシュー様とお揃いにした方がいいかな?
それとも作り直すか?俺が二つに分けることもできるが、俺の魔力が気に入らないなら、ヴァリアード自身が加工してもいいぞ」
「ああ……気に入らない。俺がやるから、仕上げはルノアに頼んでいいか?」
「もちろんです。」
ルノアが嬉しそうに頷くと、クロリナラドも納得したように頷いた。
「そうだな。ノアに守護を付与してもらえば安心だ。必要なものを一通り揃えた方がいい」
「リシューを守れるなら、私も手伝いたい。ヴァリー伯父様、私からのお祝いにしてもいい?」
「ああ。頼む」
ヴァリアードが答えると、ルノアは二人を見比べて微笑んだ。
「それじゃあ、ヴァリー伯父様。イヤーカフを二つに分けてください。出来たら私の掌の上に置いてください」
ヴァリアードがイヤーカフを外した。次の瞬間、イヤーカフが銀色の光に包まれた。
光が静かに広がり、ひとつだったイヤーカフが、まるで最初から対になる品だったかのように二つへと分かれていく。それをルノアに渡した。
これから二人が身につけるものは、ただのお揃いの装飾品ではない。
互いを大切に思う二人が、長い年月を安心して歩んでいくための、特別な贈り物になるのだった。




