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転生したのでレアアイテム集めたい…えっヒロイン退場してしまいました  作者: 5H


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420/458

420 『命環の契』

ヴァリアードは、マクアリール公爵領にあるタスワンズ湖を訪れていた。


湖面には穏やかな風が吹き、岸辺では妖精様や精霊様たちが楽しげに舞っている。

いつもなら彼らの賑やかな声に囲まれ、気ままに過ごしているヴァリアードだが、今日はどこか落ち着かない様子だった。


原因は、リシューとの出会いによって明らかになった、自分の運命にある。


彼女と初めて目が合った瞬間、ヴァリアードはリシューが自分の『運命の番』だと悟った。

そして、リシューもまた、彼と同じ想いを抱いている。それは、互いの反応から疑いようのないことだった。

しかし、番だと認め合ったからといって、これからの人生がすべて決まるわけではない。


「精霊王様。それで、これからどうすればいい?」


ヴァリアードが尋ねると、傍らにいた南の精霊王様は、面白そうに目を細めた。


「どうするも何も、お前たちが望むようにすればよい」


「そう簡単に言うな。俺たちは、普通の番とは事情が違うんだろう?」


「そのとおりだ」


南の精霊王様は、表情を改めた。


「お前もリシューも、精霊王の愛し子だ。その二人が番となり、共に生きることを選ぶ。これまでに例のないことゆえ、何が起こるかは誰にも分からぬ」


精霊王の愛し子は、精霊たちに深く愛され、世界の均衡にも関わる特別な存在だ。


二人が結ばれることで、それぞれの力や役割がどのように影響し合うのか、正確に予測することはできない。だからこそ、周囲の都合だけで二人の未来を決めるべきではなかった。


「お前たちは、世界を繋ぐ存在となる。だが、それを理由に生き方を決められる必要はない。周囲が何を望むかではなく、二人自身がどう生きたいかを大切にせよ」


「……本人たちの意思が一番ということか」


「当然だ。誰かに決められることではない」


ヴァリアードは静かな湖面へ視線を向けた。


長い年月を生き、魔術も精霊魔法も学び続けてきた。知識には自信がある。

それでも、リシューとの未来については、何一つ決めつけたくなかった。


彼女が何を望み、どのような人生を歩みたいのか。

自分の都合で、その可能性を狭めるつもりはない。


「俺は、リシューの意思を尊重する。俺の隣にいることを望んでくれるなら、一緒に生きたい。

だが、俺のために何かを諦めさせる気はない」


「ならば、その気持ちをリシューに伝えることだな」


南の精霊王様が答えたとき、湖の向こうから二つの気配が近づいてきた。


西の精霊王様と、その傍らを歩くリシューだった。


ヴァリアードを見つけたリシューは、少し緊張した面持ちで歩み寄る。


「ヴァリアード様……」


「リシュー。来てくれたのか。ありがとう」


いつもどおりに接したいのに、目が合うだけで胸の奥が熱くなる。


リシューも同じなのだろう。頬をわずかに赤らめながらも、彼から目を逸らさなかった。


「私も、お話ししたいことがありました」


「聞かせてくれ」


リシューは一度息を整え、まっすぐにヴァリアードを見つめた。


「私は、ヴァリアード様と一緒にいたいです。

でも、番だから、精霊王様の愛し子だからという理由で、何かを決められるのは嫌です。

自分の気持ちで、これからのことを選びたいんです」


ヴァリアードは静かに頷いた。


「俺も同じだ。立場や力に関係なく、お前が望むことを大切にしたい」


「それなら……これからも、隣にいてもいいですか?」


「もちろんだ。俺も、お前の隣にいたい」


二人の想いを確かめ合うと、西と南の精霊王様は顔を見合わせた。


「ならば、古い盟約に従って誓いを結ぶか?」


西の精霊王様の問いに、リシューは不思議そうに首を傾げた。


「それは、どのような誓いなのですか?」


「妖精や精霊たちが、互いを生涯の伴侶として認める際に交わすものだ。名を『命環の契』という」


南の精霊王様が説明を続ける。


「互いの命を分かち合い、共に生きることを誓う契りだ。

ただし、リシューはまだ未成年ゆえ、正式に夫婦となるのは成人する三年後の『結びの式』となる。

それまでの間に、二人の心身も落ち着いていくだろう」


「命を分かち合う、というのは?」


「リシューはエルフで長命だ。その命をヴァリアードと分け合うことでもある。もちろん、相手の命を奪ったり、自由を縛ったりするものではない。

互いの存在を支え合い、共に生きるためのものだ。

望まぬ者に強いることはできぬ」


その説明に、リシューはほっとしたように息をついた。


ヴァリアードは彼女の様子を確かめてから、そっと手を差し出した。


「リシュー。俺と、この誓いを結んでくれるか?」


「はい。私も、ヴァリアード様と結びたいです」


リシューがその手を取った瞬間、二人の足元に淡い光が広がった。


銀色の光が円を描き、その内側を水色の輝きがゆっくりと巡る。

湖面からも無数の光の粒が浮かび上がり、二人を優しく包み込んだ。

岸辺に集まっていた妖精様や精霊様たちも、二人を祝福するように舞い始める。


やがて、古い言葉が静かに紡がれていった。


互いを自らの意思で選ぶこと。


相手の心を尊重し、喜びも苦しみも分かち合うこと。


そして、どのような未来が訪れようとも、互いに向き合い、共に歩んでいくこと。


それは相手を縛るためではなく、二人が自ら選んだ道を確かめるための誓いだった。


ヴァリアードは、リシューの手をしっかりと握った。


「俺はリシューだけを選ぶ。これから先も、お前の意思を尊重し、共に歩んでいく」


「私も、ヴァリアード様だけを選びます。どんな未来になっても、お互いの気持ちを伝え合い、一緒に歩んでいきたいです」


二人の言葉が重なると、銀と水色の光が一つになった。


光は二人の繋いだ手を包み込み、そこから左右の手首へと流れていく。


ヴァリアードの左手首と、リシューの左手首。


それぞれの肌に、銀色の細い環が浮かび上がった。環の中央には小さな銀の雫があり、その周囲を水色の光が優しく巡っている。


二人の印は、形も大きさも同じだった。


銀の環は、共に生きると誓った二人の命を。

水色の光は、互いを想う心を。

そして中央の雫は、相手を大切にしながらも、それぞれが自分自身であり続けることを、示していた。


「これは……私たちの印ですか?」


リシューが手首を見つめながら尋ねると、南の精霊王様が頷いた。


「命環の契を結んだ証だ。互いの意思で誓いを交わした者にのみ刻まれる。

二人が離れていても、命環が繋がっていることを感じ取れるだろう」


「相手の考えていることも分かるのですか?」


「いや。心を読んだり、相手の行動を縛ったりする力はない。あくまでも、互いの存在を感じられるだけだ」


リシューは安心したように微笑んだ。


「よかった。私、自分の気持ちは自分の言葉で伝えたいんです」


「俺もそう思う。何かあれば、ちゃんと言葉にして伝え合おう」


「はい」


リシューは、ヴァリアードの手を握り返した。


二人の手首に刻まれた印が、呼応するように淡く輝く。


それは、誰かに定められた運命に従うための印ではない。二人が自らの意思で互いを選んだことを示す、世界に一つだけの証だった。


「お揃いですね」


リシューが嬉しそうに呟く。


「ああ。これからずっと、お揃いだ」


ヴァリアードが微笑むと、リシューも幸せそうに笑った。


二人の手首に刻まれた銀と水色の環は、やがて落ち着いた輝きを取り戻す。


『命環の契』が結ばれたのだ。


これから何が待ち受けているのか、二人にはまだ分からない。それでも、互いの意思を尊重しながら、自分たちで選んだ未来を歩んでいける。


二人の様子を見届けた西と南の精霊王様は、満足そうに頷いた。


しかし、この誓いが世界にどのような波紋を広げるのか、二人はまだ知らなかった。


手首に刻まれたお揃いの印だけが、二人の新たな始まりを静かに告げていた。


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