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転生したのでレアアイテム集めたい…えっヒロイン退場してしまいました  作者: 5H


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411/457

411 獣人の実力を知る

生徒たちは、すぐには動けなかった。

数十分もの間、強大な魔力にさらされ続けた身体には、まだ疲労が残っている。


ヴァリアードは、静かに全員を見渡した。


「ルノア、リシュー」


呼ばれた二人が顔を上げる。


「全員に必要な最低限の癒しと、疲労回復をかけなさい」


「はい」


「分かりました」


「ただし、全員を同じように癒す必要はない。

体調は一人ひとり違う。状態を見て、必要な分だけ施しなさい」


二人は、それぞれ生徒の状態を確認していった。


ルノアは一人ずつ魔力の流れを確かめる。


軽い疲労だけが残っている者。

魔力を大きく消耗している者。

身体に強い負担が残っている者。

その状態を見極めながら、必要な分だけ癒しを施していく。


そして――リシューの前で、ルノアの足が止まった。


本人はいつも通りに見える。

姿勢も崩れていない。

呼吸も乱してはいない。

けれど、ルノアには分かった。


「リシュー、癒すね」


「え?」


返事を待つより先に、ルノアは穏やかな魔力を流した。

疲労した身体を包み込み、負担を取り除きながら、整えていく。


「……ありがとう」


リシューの肩から、わずかに力が抜けた。


その様子を見ていた生徒たちは、改めて三人のことを見た。


ルノア、リシュー、ルル。


入学してから今日まで、三人の魔力が周囲に与える負担を感じたことは全くなかった。

それは、三人が常に自分たちの魔力を抑え、周囲へ漏らさないよう結界を張っていたからだった。


だが、今は違う。


ヴァリアードの魔力を前にして、誰もが自分自身の魔力を抑えるだけで精一杯だった。


その状態になって初めて、生徒たちは気づいた。


――この三人は、普段からこれほどの魔力を抑えていたのか。

自分たちが今日、数十分耐えただけで立っていることさえ苦しくなった魔力。

それと同じような負担を、三人は学院生活の中で周囲に感じさせないよう、ずっと自分たちで閉じ込めていた。

しかも、ただ魔力量が多いというだけではない。

三人の魔力には、明らかに普通とは違う圧がある。

近くにいるだけで感じる重さ。

身体の奥まで響くような濃さ。

ほんの少しでも制御を緩めれば、周囲の魔力の流れそのものを乱しかねないほどの密度。

それほどの魔力を持ちながら、三人は日常の中でそれを表に出さなかった。

今まで当たり前だと思っていた学院生活が、実は三人の慎重な制御によって保たれていたのだと、生徒たちはようやく理解した。


そして、頭上から押さえつけられるようなヴァリアードの魔力が消えた今でも、その感覚は身体に残っている。

誰もが思った。

これに耐えられなければ、次の段階へ進むことなどできない。


自分の魔力を正確に扱うこと。

特級クラスにいる以上、それは誰にとっても必要なことだった。


この状態でも、なお平然と全員を癒すルノアとリシューを恐ろしく感じた。


しばらくすると、生徒たちは自分の力で立てるまでに回復していった。

それでも、教室の空気は重い。

誰も、すぐには口を開かなかった。

恐怖。畏怖。

そして、自分たちがまだ知らなかった力への驚き。

世界最高と呼ばれる魔術師が持つ力が、どれほど底の見えないものなのか。

誰もが身をもって知った。


だが、それ以上に生徒たちの意識を変えたものがあった。


教室の中にいる、もう一つの存在だった。

獣人たちへ、自然と視線が向く。


ルル、アキ、サキ、そして兎耳を持つマシュー。

特級クラスには、四人の獣人がいる。

ほとんど疲れも見えず普段と変わらない様子で立っていた。

その姿に、生徒たちは言葉を失う。

これまで密かに、獣人を自分たちより劣る存在だと思っていた者もいた。

だが、それが完全な思い込みだったことを、今日ほどはっきり思い知らされたことはない。


彼らの魔力量は、自分たちとは比べものにならない。

何十倍もの魔力を持ちながら、それを乱すことなく正確に制御している。


ヴァリアードの魔力に耐えながら、なお自分の力を保っている。

それは、今日ここにいる全員が目の前で見た事実だった。

誰も、それを口にはしなかった。

ただ、それぞれの胸の中で、自分自身の考えを振り返っていた。

種族や外見だけで、相手の力を決めつけていた。

相手がどれほど努力し、どれほどの力を身につけているのかも知らずに。


リオンブラン王国への留学を学院が提案したことも、今なら理解できる。

四人が、それだけの実力を持っているからこその判断だったのだ。

そして今日、その理由を数十分で思い知らされた。


これからは、見た目や生まれだけで相手を判断しない。

目の前にいる相手がどれほどの力を持っているのか。

それを、自分自身の目で確かめる。

そう、心の中で決めた。


特級クラス最初の授業。


生徒たちは魔力の制御だけではなく、自分たちが知らず知らずのうちに抱いていた偏見についても、身をもって学んだのだった。


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