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転生したのでレアアイテム集めたい…えっヒロイン退場してしまいました  作者: 5H


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410/451

410 自分の魔力を知り制御する。

ヴァリアードから放たれた膨大な魔力が、教室全体を覆っていた。


空気そのものが重くなったように感じられる。


十一位以降の生徒たちは、すぐに自分の結界を展開した。

結界の外側から押し寄せるヴァリアードの魔力を受け止めながら、必死に維持している。


一方、成績上位十名は、すぐには動かなかった。


「――上位十名は、結界を解きなさい」


ヴァリアードの声が教室に響く。

命じられたのは、ただ結界を消すことではない。

上位十名は、クラス全員の魔力を感じ取りながら、自分の魔力を周囲へ余計な負担をかけないように調整し、慎重に結界を解かなければならなかった。


自分の魔力を扱うことに、誰もが慎重になる理由がある。

強すぎる魔力を急激に受ければ、身体がその力に耐えられず、魔力酔いを起こす。

軽いものであれば、眩暈や吐き気、身体の震え。

しかし、重症になれば意識を失う。

そして最悪の場合――そのまま天に還る。

だからこそ、上位十名は慌てなかった。

自分たちの魔力量が高いことを知っているからこそ、なおさら慎重だった。


ルノアは周囲の魔力を感じながら、まず自分の結界を薄くしていく。

一気に消すのではない。

結界の一部を少しずつ弱め、そこから流れ込むヴァリアードの魔力を確認する。

問題がないことを確かめてから、さらに結界を弱める。


リシューも同じように慎重に結界を解いていく。


ルル、フォル、ジュスト、ライルズ。

そして残りの上位生徒たちも、結界を少しずつ解除していった。


やがて全員が結界を解く。

だが、それで終わりではない。

結界を解いた瞬間から、ヴァリアードの魔力が直接身体へ触れる。

上位十名は、自分の魔力を暴れさせることなく、周囲へ余計な影響を与えないように制御しながら、ヴァリアードの魔力を防ぐための新しい結界を再構築していった。


その様子を、ヴァリアードは静かに見ている。


「そうだ。急ぐ必要はない。サンセールは、結界を解きなさい」


生徒たちは無言のまま集中していた。


「自分の魔力だけを見るのではない。クラス全員の魔力を感じなさい」


ヴァリアードの声が続く。


「誰の魔力が乱れているのか。誰が限界へ近づいているのか。それを感じながら、自分の結界を調整するんだ」


上位十名の表情が変わった。

自分を守るだけではない。

教室全体の魔力の流れを感じ取る。

そのすべてを意識しながら、自分の魔力を制御して結界を維持する。

それが、今回の授業だった。


「結界は、ただ強く張ればいいものではない」


ヴァリアードが続ける。


「自分の魔力を必要以上に外へ流せば、それだけ周囲への負担になる。細く、長く。必要な分だけ流しなさい」


ヴァリアードは、フォルたちの魔力の流れを見つめる。

彼ら三兄弟には、自分の力を制限する仕組みがある。

『一割の力』そして、一定以上の魔力が流れようとした際に強制的に作動する『魔力制御の枷』。

本人の意思だけで外すものではなく、安全に力を扱うために備えられた仕組みだ。


「フォル、ジュスト、ライルズ、サンセール、ギルト、バルト、ダルト、アキ、サキ。大丈夫だから、結界を解きなさい」


 呼ばれた七人が、一瞬だけ顔を上げた。


「……ですが」


 誰かが言いかける。


「大丈夫だ」


 ヴァリアードは穏やかに制した。


「今のお前たちに必要なのは、無理に耐えることではない」


結界を解除する。その瞬間、身体を押し潰していた圧力が直接魔力へ触れた


ヴァリアードが声をかける。


「力を無理に抑え込む必要はない。結界を安定させることだけを考えなさい」


全員が静かに魔力を調整した。


その様子を見ながら、ヴァリアードは次に精霊魔法を使う生徒へ視線を向ける。


「リシュー、マリアン、アーリア」


三人は大量の汗を流し苦渋の表情だ。


ヴァリアードの魔力は、強大だ。

まして精霊魔法を使う三人にとっては、耐えようとすれば大きな負担になる。


「ゆっくり呼吸を整えなさい。妖精様や精霊様の声を聞くんだ」


三人が静かに息を吸う。


「精霊魔法は、魔術魔法とは力の使い方が違う」


ヴァリアードは、教室全体へ向けて説明した。


「魔術魔法は、自分の魔力を術式によって変換し、自分の力で現象を起こす。

だが、精霊魔法は自分の魔力だけで現象を作るものではない」


生徒たちがヴァリアードを見る。


「この地にある魔素。

空気の中にある魔素。

自然に宿る力。

そして、そこにいる精霊様や妖精様。

その力と自分の魔力を繋ぎ、共に現象を起こす。それが精霊魔法だ」


魔術魔法についてなら、学院の生徒たちも十分に学んでいる。

だが、精霊魔法までここまで正確に理解している魔術師は、ほとんどいなかった。


「だから、精霊魔法では魔力を抑え込むだけでは負担が大きくなる」


ヴァリアードは三人を見る。


「精霊様や妖精様だけにお願いするのではない。

この地の魔素、空気の中にある魔素、自然の中にある力を感じなさい」


三人は必死に周囲の気配へ意識を向ける。


「強い魔力を抑えるのではなく、自分の魔力を自然の中へ循環させる。そう考えた方が負担は少ない」


「……はい」


リシューが答えた。

マリアンとアーリアも、ゆっくりと呼吸を整えていく。

驚いたようにヴァリアードを見る。


「……両方を理解している?」


マリアンが小さく呟いた。


アーリアも、精霊の気配を感じながら続ける。


「精霊様や妖精様がヴァリアード先生を補助している……。なんで?」


リシューも、ヴァリアードの周囲へ意識を向けた。

まわりにたくさんの精霊様妖精様を感じる。

自然の中にいる精霊たちが、ヴァリアードの魔力の流れを邪魔することなく、その周囲を支えている。

魔術魔法だけではない。

精霊魔法の仕組みまで理解している。

生徒たちは、改めて目の前にいる教師の異常なまでの知識と実力を感じていた。


「やっぱり……この学院は違う」


誰かが、荒い息の合間に呟いた。


「魔術だけじゃない。精霊魔法まで、両方理解して使用出来るんだ……」


その言葉に、何人かの生徒が静かに頷いた。


そしてその間も、ルノアはクラス全員の魔力を感じ取っていた。


誰が苦しくなっているのか。

誰の魔力が乱れているのか。

誰が限界へ近づいているのか。

それらを感じ取りながら、自分の結界を少しずつ調整していく。


やがて――。


「そこまでだ」


ヴァリアードの魔力が消えた。


張り詰めていた教室の空気が、一気に軽くなる。


そこに残ったのは、荒い呼吸と、大量の汗だけだった。


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