4 母エミリア 解放の指輪
そこからの父の動きは早かった。
まず義兄のヴァリアード様を、自宅に招待する為に、王様に面会の許可の手紙を書いた。
「長い長い時間がかかったが、ようやく妻の思い出の品を片付けはじめた。
遺品を義兄のヴァリアード様に、お渡したいものがある。
公爵家に一度だけでいいので招待したい。」
本来魔塔の長との接触は、誰もが面会不可で、王様の許可が必要なのだ。
王様は魔塔の長を、厳重な檻で閉じ込めている!とも囁かれていた。
父がどんな方法を使ったかは分からないが、翌週に許可がおりた。
はじめてお会いしたヴァリアード様を見て、私と父は、涙が止まらなかった。
何年かぶりに会えた、背の高くなったお母様だった。
父がとにかく駄目だった。
「すみませんヴァリアード様。何とも情けないが、言葉が出てこない。
ただ抱きしめていただいても…大丈夫でしょうか?
出来たら娘もお願いしたいのですが…。」
ヴァリアード様はただ一言
「はい。」と強く強く抱きしめてくださった。
「妹は今も変わらずに、愛されているのですね。
あの時は結婚を、反対してしまい申し訳なかった。
私もまさかあれが最後になるとは思わず、今回手紙を頂けなかったら、会えなかったでしょう。
祝福して、結婚式に出れば良かったのに…
ただ妹からの手紙は、いつも読んでいました。
幸せなんだと安心していました。
返事も書かず申し訳なかった。」
ヴァリアード様は、妹のエミリアを溺愛していた。
いずれ宰相となる父を、受け入れる事が出来ず、疎遠となっていた。
ヴァリアード様も私を見て「小さなエミリアだ。可愛いな…やっぱり…はじめましてルノア。
ルノアの名前は…小さい時にエミリアに聞かれたんだ。
お兄ちゃんは女の子だったら、どんな名前をつける?って。だから白色の花弁に、薄い水色の瞳の色が、エミリアにそっくりなお花のルノア!って言ったら、
そうするって…」三人でまた泣いてしまった。
私はゲームの知識を生かし、昨日母の指輪二つについて、父から許可を取っていた。
この指輪はレアアイテムだ。父ラルフも、運命の相手候補なのだが、これがもう超難関だった。
全く靡かない。ネット検索をかけても、全く攻略情報が無い。
でもなぜか一回で、ガチャでレアアイテムが出る。
だから全員攻略を狙う者からは、絶対百点を取らせない先生が、制作側にいると嘆き節が並んだ。
ヴァリアード様に「これをお渡ししたいのですが…」と指輪を見せた。
ヴァリアード様が左手を差し出してくださった。
左小指に指輪を通した。
レアアイテムの「解放の指輪」だ。
ヴァリアード様の体から、黒銀の鎖が、ブロックのようにバラバラと崩れはじめた。
大きな渦を巻きながら同じ方向に飛んでいった。




