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転生したのでレアアイテム集めたい…えっヒロイン退場してしまいました  作者: 5H


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398/463

398 短命の運命から解放された日

帝王グランディスは、静かに口を開いた。


「……一つ、どうしても確認しておきたい」


その表情には、慎重さが滲んでいた。

その声に、部屋の空気がわずかに張り詰める。


「マイルズは……本当に治るのか?」


その問いは、治療方法を尋ねるものではなかった。


「一時的に症状が軽くなるという話ではない。薬で抑え続けるという意味でもない。……完治できるのか、と聞いている」


グランディスは、マイルズへ視線を向けた。


「今までにも、できることはすべて試してきた」


世界中から良いとされる薬草を集め、名のある薬草医にも診せた。

聖女たちにも治癒を頼み、医療魔術も何度も試してきた。

それでも最後には、皆が首を横に振った。


「症状を和らげることはできても、完全に治すのは難しい、と……」


その言葉を聞いてきたのは、グランディスだけではない。

王太子夫妻も、マイルズ自身も、何度も同じ言葉を聞かされてきた。


「だからこそ、私は聞いている」


グランディスは苦しそうに息を吐いた。


「また治るかもしれないと期待させて……その後、やはり無理だったと知ったマイルズが落胆する姿を、私は見たくない」


静かな声だった。

帝王としてではない。

祖父としての言葉だった。


「治療方法があることは嬉しい。だが、簡単に希望を持たせるわけにはいかない。……本当に、完治できるのか?」


しばらく、誰も口を開かなかった。

その問いに最初に答えたのは、ルノアだった。


「はい」


小さな声だったが、迷いはなかった。


「マイルズ様は、必ず治ります」


グランディスが驚いたようにルノアを見る。

ルノアはまっすぐにマイルズを見つめ、それからグランディスへ視線を戻した。


「今までの治療方法とは違います。だから……大丈夫です」


その隣で、クロリナラドも静かに頷いた。


「俺も同じだ」


そして、はっきりと言葉を続ける。


「マイルズは必ず治る。俺たちは、そのためにここにいる」


二人の言葉には、迷いも曖昧さもなかった。

グランディスは二人を見つめたまま、しばらく言葉を失っていた。

そして――長い間、心の奥底にしまい込んでいた願いを、初めて信じてもいいのかもしれない。

そう思った。


以前のように魔力に押し潰される感覚がない。

けれど、この変化に誰よりも強く心を揺さぶられていたのは、マイルズ自身だった。


少なくとも、マイルズが生まれてから今日まで、二十代を迎えた『神眼』の持ち主は一人もいなかった。

幼い頃から、その事実を何度も聞かされてきた。


十歳になった。

十一歳になった。

十二歳になった。


誕生日を迎えるたび、家族は喜びながらも、その胸の内では「今年も無事だった」と安堵していた。

そしてマイルズ自身も、年齢を重ねるたびに考えるようになった。

あと何年、生きられるのだろう。

次の誕生日を迎えられるだろうか。

二十歳になる前に、自分は天へ還るのだろうか。

未来を考えるたび、過去の『神眼』の持ち主たちの姿が頭に浮かんだ。


やがてマイルズは、生きることそのものに希望を持てなくなっていった。

身体は苦しい。それでも、いつか終わるのなら――。

そんな諦めが、少しずつ心を蝕んでいた。


帝王グランディス夫妻も、王太子夫妻も、兄も、マイルズの変化には気づいていた。


身体の苦しさだけではない。

未来の話をしなくなったこと。

欲しいものを尋ねても、「何もいらない」と答えること。

将来何をしたいのか聞いても、困ったように笑うだけになったこと。

誰も、それを見て見ぬふりをしていたわけではなかった。

何とかしてやりたかった。


だからこそ、先ほどルノアがマイルズの身体を確認し、「必ず治る」と伝えた瞬間、家族は皆、涙を流した。


長い間、どうすることもできないと思っていた運命が、初めて変わる可能性を見せたからだった。


「……本当に、治るんですか?」


マイルズが震える声で尋ねた。


ルノアは迷わず頷いた。


「はい」


その一言に、マイルズの目から涙がこぼれる。


「マイルズ様の魔力過多は、必ず治ります」


「必ず……」


「はい。時間はかかります。でも、治ります」


ルノアは優しく続けた。


「マイルズ様の体と相談しながら、進めていきましょう」


「……僕は、二十歳を迎えられますか?」


その問いに、ルノアは少しも迷わなかった。


「迎えられます」


マイルズの頬を、大粒の涙が流れた。


「……そうですか」


それだけを言うのが精いっぱいだった。


「僕は……生きてもいいんですね」


「もちろんです」ルノアは微笑んだ。

「これからは、何歳まで生きられるかを考えなくていいんです。何をして生きたいのかを考えてください」


マイルズは顔を伏せ、何度も頷いた。


「……考えてみます」


その言葉を聞き、グランディスも静かに涙を拭った。

長い間、誰もが恐れていた未来。

それが、ようやく変わろうとしていた。


マイルズは、もう一度胸いっぱいに息を吸った。

そして初めて、一月後の自分を想像した。


「……一月後が、楽しみです」


その言葉に、ルノアは微笑んだ。


「私も楽しみにしています」


マイルズは小さく笑った。

未来を楽しみにする。

そんなことを考えたのは、生まれて初めてだった。


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