394 学院史に刻まれる六人
基礎能力確認試験が終わると、学院では学科変更とクラス再編成が行われることになり、それに伴って三日間の休校となった。
新しい学科編成やクラス分け、教室や実習設備の調整が行われ、授業は翌週から再開される予定となった。
その休校期間中、教務部では卒業論文の審査と面談が進められていた。
ルノアは入学前にすでに面談を終えていたため、リシュー、ルル、フォル、ジュスト、サンセールの五人について、順番に面談が行われた。
面談では、提出した卒業論文について、研究を選んだ理由や研究方法、本人が考えた部分、さらに記載された魔術理論を別の条件で応用する場合の考え方まで、アガサと専門学科の教員が細かく確認した。
五人はどの質問にも落ち着いて答え、自分が研究した内容を正確に理解していることを示した。
そして、五人全員の面談が終了した。
「卒業論文、全員合格です」
アガサから告げられた言葉に、五人は静かに息を吐いた。
「ありがとうございます」
これで六人全員が飛び級卒院試験の受験資格を得た。
休校となった学院で、六人の卒業学科試験が行われた。
試験は、通常なら三年間をかけて学ぶ各学科の学力確認試験、実戦実技試験、卒業資格として定められた魔法陣百種の確認、そして個々に研究した短縮魔法陣による応用確認試験で構成されていた。
まず行われた学力確認試験では、魔術理論、魔力制御、魔法陣学、薬学、魔道具学、領地経営学など、三年間で学ぶ範囲から問題が出された。
六人は問題を一つずつ確認し、必要な計算や理論を正確に処理しながら、落ち着いて解答していく。
続く実戦実技試験では、攻撃、防御、結界、魔力制御など、複数の条件を与えられた状況で魔術を使い分けた。
派手な魔術を競うものではなく、状況を正しく判断し、必要な魔術を正確に選択して発動できるかが確認される。
六人はそれぞれの課題に冷静に対応し、安定した魔術を披露した。
次に、卒業資格として定められた魔法陣百種類の確認が始まった。
指定された魔法陣を一つずつ正確に書き上げ、発動まで行う。
百種類という数にも焦ることなく、六人は一定の集中力を保ったまま、順番に魔法陣を完成させていった。
「九十八番、確認」
「九十九番、確認」
そして最後の百番目。
魔法陣が光を放ち、指定された魔術が正常に発動する。
「百番、確認しました」
記録用の魔道具人形に結果が保存される。
試験官たちが確認すると、六人全員がすべての魔法陣を正確に書き、発動させていた。
最後に行われたのが、短縮魔法陣による応用確認試験だった。
通常の魔法陣から不要な部分を省きながら、術式の安定性と必要な効果を維持する。
それぞれが自分で研究して完成させた短縮魔法陣を使い、指定された魔術を発動させる。
六人は一人ずつ魔法陣を展開し、慎重に魔力を流した。短縮された術式が淡い光を放ち、安定した状態で魔術が発動する。
最後の一人まで確認が終わると、試験官たちは記録を確認した。
学力確認、実戦実技、魔法陣百種類、そして応用確認。すべての項目で六人は合格基準を満たしていた。
「……全員、合格です」
アガサが告げる。
「おめでとうございます。これをもって、皆さんはヨーリアン帝国魔術学院の卒業資格を取得しました」
六人は静かに頭を下げた。
入学から、わずか一週間で。
通常三年間で学ぶ内容をすべて確認し、六人全員が卒業資格を取得したのである。
学院の記録には、六人それぞれの卒業資格取得日とともに、「入学から六ヶ月で卒業資格取得」と記録されることになった。
教務部で正式な記録を整理していたアガサは、過去の資料と今回の記録を並べて確認していた。
そこには、学院史に残る魔術師ヴァリアードの記録と、カーナリアン王国マクアリール公爵家のラルフの記録も残されている。
そして今回、その記録に新たな六人の名前が加えられることになった。
ルノア、リシュー、ルル、フォル、ジュスト、サンセール。
学院開校以来、これほど早く卒業資格を取得した生徒が、一つの年に六人も揃ったことはなかった。
アガサは六人に記録を確認させると、最後に告げた。
「今後、実際に学院を卒業する時期については、それぞれ決まった時点で学院へ知らせてください。
卒業資格を取得したからといって、すぐに学院を離れる必要はありません。
学びたいことや研究したいことがあるなら、これまで通り学院で学んで構いません」
「はい」
六人が揃って返事をする。
卒業資格を得たことと、学院を去ることは同じではない。
それぞれが自分の学びを終えたと思った時に、正式な卒業を選べばいい。
こうしてヨーリアン帝国魔術学院は、開校以来初めて、一つの年にこれほど優秀な生徒が揃い、全員が入学から一週間もたたずに
卒業資格を取得するという記録を残すことになった。




