393 基礎能力確認試験の結果
基礎能力確認試験の結果が集計され、新しいクラス編成が正式に発表された。
今回の制度改定では、学院内で使用できる補助魔道具にも大きな変更が加えられた。
今後、学生本人の能力を補う魔道具は、すべて使用禁止となる。
魔術を補助するもの、魔力を増幅・補助するものだけではない。記憶力、計算力、判断力、知力などを補助する魔道具も対象となった。
これらは試験中だけでなく、普段の授業でも使用することができない。
これまで魔道具に頼っていた学生たちは、これからは自分自身の魔力、魔術、そして知力だけで学ばなければならなくなった。
その結果、今年入学した一年生だけでなく、二年目、三年目の学生の中にも、魔術学科を離れる者が出た。
特に多かったのは、ヨーリアン帝国の貴族子弟だった。
「リオンブラン王国なんかに行けるものか!」
「獣人に魔術を教わるなど、あり得ないわ!」
試験結果を受け入れられず、獣人に対する差別的な発言を繰り返す者も少なくなかった。
そうした発言や行動は魔道具人形によって記録され、学則違反として累計加点の対象となっていた。
さらに、警告を受けても従わず、魔道具人形を力任せに倒したり、破壊したりする学生まで現れた。
そのような学生には、規則に従って停学や退学がその場で通達された。
一方、規則違反をしていない学生たちの多くは、学院に残るため、魔術学科から領地経営学科へ移る道を選んだ。
これまで魔道具に頼っていた状態では、魔術学科の卒業資格試験に合格することが難しいと判断したためである。
ヨーリアン帝国では、領地を持つ貴族が当主として領地を経営するには、領地経営学科の卒業資格が必須となる。
この資格がなければ、爵位を継ぐことはできない。
また、婿入りや嫁入りによって別の貴族家を支える場合にも、領地経営に関する知識と資格が必要とされている。
つまり、魔術学科を離れたとしても、領地経営学科を卒業することができれば、貴族として家を継ぎ、領地を治める道を残すことができる。
そのため彼らは、魔術を完全に諦めるのではなく、まず学院に残ることを優先した。
そして、領地経営を一から学び直し、卒業資格を得ることに望みを託したのである。
その結果、領地経営学科の下級クラスは、全員がヨーリアン帝国の貴族となった。
ただし、学科を移ったからといって、卒業が保証されたわけではない。
クラス編成から半年後には学力調査試験が行われ、必要な学力に達していなければ、領地経営学科であっても退学となる。
こうして学生たちは、それぞれが自分の実力と将来を考え、新たな進路を選ぶことになった。
一方、他国から来ている王族や貴族の多くは、もともと魔術や魔力、知力を補助する魔道具を使用していなかった。
そのため、基礎能力確認試験でも本来の実力を発揮し、以前とほぼ変わらない結果を残した。
その結果、退学や学科移動によって空いた席を埋めるように、各クラスでは順位が大きく繰り上がっていった。
ヨーリアン帝国の貴族で魔術学科に残ることができた王族は、ライルズただ一人だった。
下級クラスまで含めても、残った者は数十人ほどしかいない。
そして、新たに張り出されたクラス編成表の前には、学生たちが次々と集まっていった。
最上位には、以前と変わらず、満点を取ったルノア、リシュー、ルルの三名の名前が並んでいる。
その後には、フォル、ジュスト、ライルズの名前が続いていた。
さらに、フォルたちの教育者たちの名前もしっかりと記載されている。
その中には、リオンブラン王国から来たアキとサキの名前もあった。
そして、もう一つ大きな変化があった。
これまで下級クラスにいたサンセールの名前が、特級クラスの末席である五十番に移っていたのだ。
知力試験と魔術実技試験で、以前よりも大きく点数を伸ばした結果だった。
「……上がった」
掲示板を見上げたサンセールが、涙目になりながら小さく呟いた。
これまでとは違う名前の並び。
そこにあるのは、身分でも家柄でもない。
魔道具による補助でもない。
自分自身の力で積み重ねてきた結果だった。
サンセールは自分の名前と順位を何度も見つめ、静かに拳を握った。
五十番。
まだ上には多くの学生がいる。
それでも、以前の自分からすれば、大きな一歩だった。
身分や家柄ではなく、自分自身の力で学び、努力した結果が、そのままクラス編成に反映される。
ヨーリアン帝国魔術学院は、少しずつ、本来あるべき姿へと変わり始めていた。




