391 ヨーリアン帝国魔術学院 改革開始の朝
ヨーリアン帝国魔術学院は、いつもとは違う緊張感に包まれていた。
学院内の掲示板には、朝一番に新しい通達が張り出された。
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【ヨーリアン帝国魔術学院・制度改定通達】
昨日の確認試験において、魔道具による能力補助を受けている学生と、補助を受けていない学生を同一の基準で評価することについて、教員および学生から意見が寄せられた。
また、魔道具による補助を考慮せずに行われていた現在のクラス編成についても、学院の学則に照らして公平ではない可能性があるとの指摘があった。
これを受け、学院では魔道具の使用状況、能力評価、クラス編成について見直しを行う。
今後、学院におけるすべての判断は学則に基づいて行い、身分、家柄、爵位その他の立場による例外は認めない。
この制度改定は、ヨーリアン帝国帝王陛下の承認を受け、本日より実施する。
第一段階として、全学生を対象に基礎能力確認試験を実施する。
試験では、知力、魔力量、魔術能力を補助する魔道具の使用を禁止する。
第二段階として、試験結果をもとにクラス編成を改める。
第三段階として、領地管理部門では知力補助魔道具を使用せず、基準を満たした者のみを通常課程とする。
第四段階として、魔術部門では能力補助魔道具を使用せず基準を満たした者を通常課程とし、再学習が必要と判断された者は再教育課程へ移行する。
第五段階として、基準に届かなかった者のうち、再び学ぶ意思を持つ者には、リオンブラン王国への留学による魔力強化の再教育の機会を与える。
留学に必要な費用は、すべて学院が負担する。
留学期間は原則一年とし、一年後に再評価を行う。
本人に継続して努力する意思があり、学院側が必要と判断した場合は、最長三年まで延長を認める。
それでも復学基準を満たせなかった場合は、原則として退学とする。
いずれの場合も、身分、家柄、爵位その他の立場による特例は認めない。
今後の留学を含め、学院内におけるすべての言動と行動は、学院の学則に基づくものとする。
今後学院では、知力、魔力量、魔術能力を増幅、補助する魔道具の使用を一切禁止する。
今回の試験結果に基づき、学科の移動を認める。
ヨーリアン帝国魔術学院
学院長 ヤーナイド
ヨーリアン帝国
帝王陛下 承認
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掲示板の前には、すぐに大勢の学生が集まった。
「これ、本当に今日からなのか?」
「全員、魔道具を外して試験を受けるって……」
「王族や貴族も例外なしだってさ」
「じゃあ、昨日の試験で基準に届かなかった人たちは……」
「クラスも全部変わるってこと?」
ざわざわとした声が広がっていく。
中には、不安そうに自分の指輪を見つめる学生もいた。
「これ、父上からもらった魔道具なんだけど……外すのか」
一方、他国から来ている学生たちは、掲示された内容を静かに読み返していた。
「これなら、魔道具を持っているかどうかではなく、本来の能力で確認できるんだね」
「クラスも試験結果で決まるなら、分かりやすいな」
学生たちの間には、不安と戸惑いが入り混じっていた。
しかし、それ以上に大きかったのは、これまでとは何かが変わるのだという実感だった。
その頃、教員たちも職員室に集められていた。
学院長ヤーナイドが、集まった教員たちを静かに見回す。
「今後の方針については、掲示板に張り出した通達のとおりです。質問のある者は、挙手してください」
静まり返った職員室。
しばらくして、一人の教師が手を挙げた。
「……学院長。本当に、実施するのですね?」
ヤーナイドは静かに頷いた。
「はい。本日実施します。
混乱が予想されますが、各自、落ち着いて対応してください」
「……承知しました」
ヤーナイドは、もう一度教員たちを見渡した。
「皆さんも、気づいているでしょう。
今ここで改革を行わなければ、ヨーリアン帝国の未来そのものに関わります。
私たちが目指しているのは、かつての不正をなくし、正しい学院を取り戻すことだけではありません。
ヨーリアン帝国魔術学院は、世界でも唯一無二の、無償で学べる場所です。
優れた魔術を学び、最新の知識を取り入れた領地経営を学び、自分が学びたいことを幅広く学ぶことができる。
それは、この学院が長い年月をかけて築いてきた、大切な価値です。
私たちは、その価値をこれからも守り続けなければなりません。
誰もが同じ学則のもとで学び、努力し、自分の力を伸ばしていける。
そんな学院であり続けるために、私たちは今の制度を見直し、時代に合わせて変えていく必要があります。
その価値を未来へ残していくために。
私たちが、未来永劫、世界の先頭を走り続ける学院として、その伝統を次の世代へつないでいきたい。
そのためには、学生だけではなく、私たち教員も、常に新しいことを学び、自らを見直し、変わり続ける必要があります。
前学院長の下にいた教員が一人も残っていない今、これからの学院をつくっていくのは、私たちです。
不正のない学院。
身分や家柄に左右されない差別のない学院。
誰もが平等に学ぶことのできる学院。
そして、学びたいと思う者が、その機会を失わずに済む学院。
皆さんと一緒につくり、守り、さらに発展させていきたいと思っています。
今回、魔道具の使用が不平等につながるのではないかと声を上げてくださり、感謝いたします。
皆さんの声が、今回の改革のきっかけになりました。
これからも、遠慮なく声を上げてください。
私たち一人ひとりの力で、この学院が築いてきた大切な伝統を守りながら、より良い未来へつないでいきましょう」
「……はい、学院長」
教員たちは、力強く頷いた。
「では、本日の基礎能力確認試験の準備をお願いします」
「はい」
教員たちは、それぞれの持ち場へ向かった。




