39 白ちゃん水ちゃん 使役獣?
お父様と伯父様は、少し寂しそうな笑顔を浮かべた。
ラルフが静かに言う。
「分かったよ。大丈夫だ。ルノアの顔を見れば分かる。複雑な父親の気持ちが、顔に出てしまっているとは思うけれど……」
一度、言葉を切ってから、優しく微笑んだ。
「ルノアが安全に護られて、幸せでいてくれるなら、それでいい。エミリアとの約束も、これで果たせるからね」
ヴァリアードも頷いた。
「うん。大丈夫だ。クロー、ルノアをよろしく頼む」
そして、ルノアの指を見た。
「ただ、ルノアには俺が渡した指輪をつけてもらっている。竜人の番として、それを許容するのは難しいだろう?」
クロリナラドはルノアの指輪へ視線を向ける。
ヴァリアードは続けた。
「それと、ルノアが俺たちのために作ってくれた魔石はどうしたい?
クローが苦しくならない方法で構わない。どうするか考えてくれ」
そして、ラルフを見る。
「ラルフはエミリアとの約束を守って、エミリアが初めて作った宝物の魔石をルノアに渡している。
クローにも、そのことは考えてほしい」
「……ああ。そうだな」
クロリナラドは少し考えたあと、ルノアを見る。
「確かに、ヴァリアードの指輪をそのまま身につけているのは、俺には難しい」
そして、申し訳なさそうに言った。
「ルノア。我儘を言ってすまないが、その指輪は外してほしい。俺が言えるのはそれだけだ。ルノアは……どうしたい?」
「はい」
ルノアは自分の指輪を見つめた。
「ヴァリー伯父様からいただいた指輪と、魔導初期の本は、私にとって大切なものです。ですから、部屋に飾って大事にしたいです」
そして、もう一つの魔石について話し始めた。
「それから、私が最初に作った魔石があります。
護り、毒返し、呪返し、魔力補助、身体強化の五つの効果を込めた魔石です」
少し考えてから続ける。
「三個あるので、お父様と伯父様、それからクロリナラド殿下にお渡ししたいです。できれば、福ちゃんと白ちゃんにも持っていてほしいです」
ルノアはさらに、別の魔石を取り出した。
「あと、健康のために作った魔石もあります」
病原菌の排除をはじめ、身体の状態を整えることを目的として作った魔石だった。
「病の源のようなものを取り除いて、脳や血液、筋肉、臓器など身体全体を強くすることをイメージして作りました。
これも、お父様、伯父様、クロリナラド殿下に持っていてほしいです」
そして、少し申し訳なさそうに付け加える。
「できれば、簡単には外せない形にして持っていてほしいです。ただ……」
ルノアは魔石を見つめた。
「見た目が若返ってしまうんです。私にはまだ細かな調整ができなくて……。
クロリナラド殿下なら、指輪の形にして、見た目の変化などにも問題がないよう調整できますか?」
「もちろんできる」
クロリナラドが答える。
「これも福ちゃんと白ちゃんに渡したいです」
さらにルノアは、ヴァリアードと一緒に作った魔石にも目を向けた。
「それから、伯父様と一緒に作った魔石も何個かあります。必要なら使ってください。こちらに置いておいても困るものですから」
クロリナラドは頷いた。
「うん。分かった」
魔石を確認しながら考える。
「俺は二つの魔石なら、身体への影響を調整して、そのまま身につけられる。だから、それは俺がもらうよ」
そして、残りの魔石を見た。
「残りの四個と、ヴァリアードと作った魔石のいくつかは、俺が調整してヴァリアード、お義父上、福様、白ちゃんに渡そう」
「指輪にするものは指輪の形にして、福様と白ちゃんの分は首飾りにしようと思う。どうかな?」
「はい。ありがとうございます」
ルノアは二人の父親と伯父を見た。
「お父様、伯父様、福ちゃん。どうですか? 白ちゃんにも渡して大丈夫なのでしょうか?」
少し不安そうに首を傾げる。
「私には分からないので、教えてください」
ヴァリアードが白ちゃんを見る。
「福は守護獣だから、もらっても大丈夫だと思う。でも、白ちゃんは俺の魔力から作った存在だから……どうなんだろうな」
すると、福ちゃんが嬉しそうに羽を動かした。
『大丈夫だよ』
竜神様の言葉を伝えるように、福ちゃんが続ける。
『白ちゃんは、ルノアの魔石を受け取れば、使役獣としてもっと強くなってヴァリーを守ってくれるって』
さらに福ちゃんは、ラルフを見上げた。
『それと、竜神様がラルフにも魔力で使役獣を作ってほしいって。
そうすれば、お父様とヴァリーアードが守られるから、ルノアも安心できるって言ってるよ』
「私も……?」
ラルフが驚いたように目を瞬かせる。
「そうか……」
少し考えたあと、ラルフは自分の魔力を集め始めた。
やがて、その手のひらに水色の小さな鳥が姿を現した。
「……できた」
「わぁ……可愛い」
ルノアは目を輝かせ、小さな鳥をじっと見つめた。
「水ちゃんだね」
その瞬間――。
水色の鳥が、ブルブルッと身体を震わせた。
すると、みるみるうちに身体が一回り大きくなった。
「えっ……?」
ルノアが目を丸くする。
ラルフは苦笑した。
「……また、そのままなのか」
「え?」
「ルノア。君は魔力が強いから、名前をつけると契約になってしまうことがある。気をつけなさい」
「……はい」
ルノアは小さく頷いた。
「気をつけます」
水色の鳥は、嬉しそうにルノアの周りを飛び回っていた。




