385 レオン国王の問いかけ 2
レオンはサイルズの匂いを確かめるように、鼻を動かした。
「それより、サイルズ。まだ竜人特有の香水をつけてるのか?」
「……?」
「妖精様や精霊様に対しても失礼だぞ。お前以外には、かなりきつい匂いだ。皆から注意されていないのか?」
レオンが指を鳴らす。
次の瞬間、サイルズの身体から香水の匂いが完全に消えた。
「女の子にもてないぞ。やめとけ。そんなことも知らないなんて、恥ずかしい」
「なっ……無礼者! 何者だ、お前は……!」
サイルズの身体が、突然その場に伏せた。
レオンの魔力に押さえつけられたのだ。
「おいおい……」
レオンはサイルズを見下ろしながら、周囲を確認する。
「俺の魔力の半分以下しかないのに、この結界か?」
そして、すぐに気づいた。
「ああ、魔道具か」レオンは呆れたように首を振る。
「これは駄目だ。ズルだろ」指先を軽く動かす。
すると、サイルズの身体を補助していた魔道具が音もなく外れ、そのまま跡形もなく消滅した。
「なっ……!」
グランディス、グレイヴ、グラード、レイの全員が驚きに目を見開く。
しかし、レオンは平然としていた。
「帝王様。いくら許可制でも、これは駄目だよ」
「……」
「本人が自分の魔力を伸ばす機会を潰してる。
守っているつもりでも、これじゃ環境そのものが本人を弱くしてるぞ」
レオンはグランディスを見つめた。
「怪我を心配する気持ちは分かる。でも、こんな古い魔道具じゃ守れないぞ。魔道具だって進化してる。新しいものを取り入れ、学ばなきゃ駄目だ」
そして、床に伏せたままのサイルズを見る。
「それにしても、サイルズ。弱すぎるな」
「……っ!?」
「古竜種なのに、獣人の俺より弱い。魔力も低い。このままで大丈夫なのか?」
「レオン……」グラードが思わず声をかける。
「いや、本当のことだろ?」レオンはグラードを見る。
「魔術学院の質が落ちたのか? 大丈夫か、グラード魔術相」
誰も答えられなかった。
先ほど、サイルズの魔道具を、レオンが簡単に解除した衝撃が残っている。
「この執務室までの警護も古すぎるぞ」
レオンは周囲を見回した。
「前回より少しは直したみたいだな。でも、新しい人材も入れなきゃ駄目だ。考えが閉鎖的すぎるし、隠密も弱すぎる。ヴァリアードに相談しろ。」
そして、淡々と言った。
「今、俺一人でこの場にいる五十二名を抑え込めてるんだぞ。大丈夫か?」
全員の顔色が悪くなる。
「仮定の話をするぞ」
レオンの声が低くなった。
「今、『リオンブラン王国がヨーリアン帝国への侵略を完了』していたら?恐ろしくないか?」
顔色の悪いグランディスを見る。
「前回もそうだった。グランディス、いい加減に現実を受け入れろ。全員、俺の魔術で動けないだろ?」
その言葉通りだった。
誰一人、レオンの魔術から逃れられない。
「お前たちは、俺たち獣人を『獣臭い獣』と侮っているがな」
レオンは静かに続けた。
「本当の獣だったら……もう、簡単に侵略してるぞ。」
誰も口を挟めない。
「俺たちが入れない国は五ヶ国くらいだ。それでもお前たちを生かしているのは、俺たちが理性を持った獣人だからだよ。侮られていても相手をしないのは、自分たちの強さを分かってるからだ。許していない。忘れもしない。時期を見ているだけかもな……」
レオンの目は笑っていないが笑った。
「いつでも俺たちは獣にもなれるぞ。まあ、やらないけどな。マリアに怒られちゃうし、一番怖いからな。ただし、娘ルルに何かあれば……俺も息子たちも許さないからな……あぁ……長男も同じシルバーライオンだからな……俺とは違って、異質で俺でも怖いぞ!よろしくな!」
そして、レオンはサイルズの前にしゃがみ込んだ。
「俺はリオンブラン王国の国王レオンだ。忘れるな!」




