↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したのでレアアイテム集めたい…えっヒロイン退場してしまいました  作者: 5H


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
382/465

382 ヨーリアン帝国帝王グランディス

ヨーリアン帝国の帝王グランディスの執務室には、日を追うごとに報告書が積み上がっていた。


その中心にあるのは、魔道具管理部から届けられた書類だった。


寮の魔道具人形の点検から始まった調査は、やがて過去の整備記録や部品交換、さらには職員たちの会話にまで及んでいた。


魔道具人形が記録していた映像と音声。


それらをもとに作成された報告書には、これまで見過ごされていた不正や怠慢までも、事実として記されている。


帝王は、一枚ずつ目を通していった。


「……まだあるのか」


魔道具人形が報告書を整理している間にも、机の上には新たな書類が積み重なっていく。


グランディスは長い年月を生きてきた。


帝王として国を治め、帝国内の勢力についても、自分が知らないことなどほとんどないと思っていた。


だが、現実は違った。


自分が把握していると思っていた帝国には、まだ知らない問題がいくつも残っていた。


その事実を最初に突きつけたのが、竜皇国から訪れたクロリナラド殿下だった。


リアム国王の親書を携えてヨーリアン帝国を訪れたクロリナラドは、分厚い資料を帝王の前に置いた。


そこには、ヨーリアン帝国の貴族一覧をはじめ、不正や横領、謀反につながる動き、さらには不満を募らせる国民の状況まで、詳細に記されていた。


映像と音声による証拠も揃っていた。


そして、クロリナラドは静かに問いかけた。


「帝王様……この状況で、来期から私の番が魔術学院へ入学しても、安全に守れるとお考えですか?」


その言葉が、帝王の胸に深く残った。


『竜神様の愛し子様』であり、クロリナラド殿下と『白銀の腕輪の誓い』を交わした番であるルノア様を、この帝国で安全に魔術学院へ通わせることができるのか。


帝王は、初めて自分自身に問い直した。


今の状態で「安全だ」と言い切ることなどできなかった。


そして帝王は、長年にわたって親族の問題も抱えていた。


実弟ナザル。


当時、ヨーリアン帝国魔術学院の学院長を務めていた男である。


その背後には、ナザルに甘い実母と、その実家である公爵家があった。


帝王は長い年月をかけ、彼らを排除するための材料を集めていた。


表立って動くことなく、勢力の動きや不正を調べ、いつか決断するための準備を続けてきた。


そして、クロリナラドが持参した資料によって、その判断は決定的なものとなった。


『これ以上、先延ばしにはできない』


帝王は、自らの手でナザルと実母、そして実母の公爵家を排除することを決断した。


長年続いてきた勢力を崩す、大きな決断だった。


その結果、帝国内部にあった大きな問題の一つは取り除かれた。


しかし――。


「……あれで終わりではなかったのだな……」


帝王の目の前には、再び魔道具管理部から届いた資料が積み上がっていた。


ナザルたちを排除しても、不正は消えなかった。


長年にわたって根を張った癒着。


仕事を怠る者。


古い制度に甘え、新しい技術を学ぼうとしない者。


一つの勢力を取り除いただけでは、帝国そのものに積み重なった問題までは消えない。


そして、その問題を表へ引き出したのは、入学したばかりのルノア様だった。


ルノア様は、自分の魔道具人形だけを整備してほしいとは言わなかった。


一体だけを改善するのは平等ではない。


寮にあるすべての魔道具人形を調べ、同じように整備するべきだと提案された。


その言葉から始まった点検によって、魔道具管理部が長年抱えていた問題が次々と明らかになった。


帝王は報告書をめくりながら、静かに息を吐いた。


「自分だけではなく、皆を……か」


ルノア様は、目の前にあった一つの問題を、自分だけの問題として終わらせなかった。


その結果、隠されていたものまで明らかになったのだ。


そして帝王は、長年の懸念の一つだった魔道具の在り方にも目を向けた。


帝国では、安全管理のために魔道具を多用してきた。


だが、その魔道具自体が古くなっている。


新しい技術を取り入れる努力も、高度な技術を学び続ける姿勢も、十分だったとは言えない。


便利だから使う。


安全だから記録する。


しかし、人の安全を守るための魔道具が、必要以上に個人の情報まで集めている。


そこにも、新たな問題が生まれていた。


「安全管理と個人の情報……」


その両方を守る仕組みを、改めて考えなければならない。


帝王は、窓の外を眺めた。


ふと、リアム国王の顔が浮かぶ。


リアムとは、長い年月を友人として過ごしてきた。


同じ長命な古竜種として、世界の理を守る者として、それぞれの国を治めてきた。


長い年月の中で互いの立場を理解し、必要なときには率直な言葉を交わしてきた。


今回、クロリナラドがヨーリアン帝国へ来たことも、リアムとの長い信頼関係があったからこそだ。


「……リアムには、感謝せねばならんな」


友人だからこそ、クロリナラドを託してくれた。


そして、その息子が持ってきた資料によって、自分が見落としていたものを知ることができた。


帝王は、再び机の上に積まれた書類へ視線を戻した。


ナザルたちを排除して終わりではない。


不正も、古い魔道具も、制度も。


一つずつ向き合い、見直していかなければならない。


「知らないことを、知らないままにしないことだな」


帝王は静かに呟いた。


長く帝国を治めてきたからこそ、変えることには時間がかかる。


それでも、ルノア様が示してくれたように、目の前の問題から一つずつ向き合えばいい。


安全を守るための魔道具を残しながら、個人の情報を必要以上に扱わない仕組みへ。


古いものに頼るだけではなく、新しい技術を学び、取り入れる帝国へ。


帝王はしばらく考えたあと、静かに頷いた。


「……今が、見直す時期なのだろうな」


帝王は、目の前にある問題から逃げることなく、一つずつ向き合っていくことを改めて決意した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。