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転生したのでレアアイテム集めたい…えっヒロイン退場してしまいました  作者: 5H


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364/466

364 タスワンズ湖の大樹の下で

タスワンズ湖のほとり。

静かに枝葉を揺らす大樹の下へ、ヴァリアードは精霊王様に呼ばれてやって来ていた。


「本当に久しぶりの呼びたしだな。

変わりはないか? 

足りていないものはないか? 

それで、精霊王様。今日は何の用だ?」

「……お前は、本当に昔から変わらんな。

精霊王である私に対して、その口の利き方だ」

「今さらだろ。昔からこうだったじゃないか」

「そうだったな」精霊王様は苦笑した。


ヴァリアードと精霊王様の付き合いは長い。

幼い頃から、ヴァリアードの周囲には精霊様や妖精様たちがいた。

彼らと話せることは、祖父上や父上から、決して誰にも知られてはならないと教えられていた。

それでもヴァリアードにとって、精霊様や妖精様たちとの交流は、特別なものではなかった。


『ヴァリアード、この子の体調が悪い。薬草が必要だ。見てくれ』

『分かった。その代わり、こっちの薬草を探してくれ』

『それなら精霊石もつけよう』

『本当か? 助かる』


お願いを聞けば対価をもらい、こちらに必要なものがあれば頼む。

精霊王様に対しても、それは変わらなかった。

エルフの里へ『御使い』として、薬草や精霊石を届けたり、精霊様のポーションを人族にあわせ薄めたり分けたりして扱えるようにする。

困っている者がいれば届け、頼まれればできることをする。

『御用聞き』

それが、ヴァリアードにとって当たり前の日々だった。


ユキライアナ侯爵家とマクアリール公爵家の領地は、昔から自然が多い。

そのため、子どもたちは、精霊様や妖精様の姿を見て育つ。

中でもタスワンズ湖は、精霊様や妖精様が特に多く集まる聖地だった。

多分、エミリアも彼らと話すことができた。

だが、お互いにそのことを口にはしない。

ただ、毎日窓際にお菓子を置いていた。

ラルフも、声を聞くことはできなかったが、幼い頃から精霊様たちを見ていた。

やがて念話の魔術が上達すると、精霊様や妖精様たちと念話で話す姿を見かけるようになった。

それでも、誰も何も言わなかった。


ヴァリアードが膨大な魔力を持つことで恐れられていた時も、精霊様や妖精様たちも、家族も、ラルフも、エミリアも、変わらず同じだった。

その経験があったからこそ、ヴァリアードも種族や身分で相手を判断することはなかった。

エルフだから。ドワーフだから。竜人だから。人族だから。

そんな理由で、相手への態度を変える必要などない。困っているなら助ける。

当然なことだ。ただ、それだけだった。


「……お前は、自分がどれほど多くの者と繋がってきたのか、分かっていないな」

精霊王様が静かに言った。

「繋がる?」

「ああ」

精霊王様は大樹を見上げた。

「お前が返上したユキライアナ侯爵家は、代々『世界の繋ぎ手』を担っていた」


「……世界の繋ぎ手?」


「そうだ。もう一つの役割も、先日ルノアに

『竜環の繋ぎ手』として、引き継がれた」


精霊王様は、穏やかに続けた。

「世界は、ようやく整った。最後に残っていたのが、ヴァリアードなのだよ」


その存在は、決して知られてはならなかった。

精霊様や妖精様、エルフ、竜人、ドワーフ。

様々な種族との繋がりが政治に利用されれば、それは争いの原因にもなる。

ヴァリアードが精霊様たちから受け取ったものも、

誰が、どこから手に入れたのか分からないよう、慎重に扱った。

必要な分だけを人族が扱える形に変え、世界の理から外れないように流通させる。

その役割を陰で担っていたのが、ユキライアナ侯爵家だった。


「お前は何も知らずに、我らと様々な種族を繋いでいた」

「……俺が?」

「そうだ」

ヴァリアードは首を傾げた。

「頼まれたからやっただけだぞ」

「そうだな。だからこそ、お前なのだ」

精霊王様は穏やかに笑った。

「ヴァリアード。話さなければと思いながらも、これまでしっかりと話す機会がなかった。今さらだと思わず、聞いてほしい」


精霊王様の真剣な表情に、ヴァリアードも向き直る。


「干渉できず、十年間も助けることができなかった。本当にすまなかった」

「……!」

「『黒銀の鎖』からようやく解放され、お前がこれからのことを自由に決められるようになるまで、そして落ち着いて話せる時を、ずっと待っていた」

「………?」


精霊王様は、静かにヴァリアードを見つめた。


「お前は、私の『愛し子』だ」


「……愛し子?」


「そして、今は無きユキライアナ侯爵家の当主が代々担ってきた、『世界の繋ぎ手』でもある」

一拍置いて、精霊王様は続けた。

「お前の父親も、その一人だった」

「…………?!」

ヴァリアードは、すぐには答えられなかった。


幼い頃から当たり前だった、精霊様や妖精様たちとの交流。

それが、自分の知らないところで、世界を繋ぐ役割へと続いていた。

しばらく黙り込んだあと、ヴァリアードは口を開いた。


「……だからって、俺は変わらないぞ」

「変わる必要などない」

「精霊王様だからって、これまで通りお願いもするからな」

「もちろんだ」

「俺も、精霊様や妖精様に頼まれたら、できることなら聞く」

「それでいい」


精霊王様は、嬉しそうに笑った。

『愛し子』だから特別なのではない。

『世界の繋ぎ手』だから選ばれたのでもない。

誰もが恐れるほどの力を持ちながら、その力を理由に誰かを見下さず、種族や身分にも関係なく、目の前の相手と向き合ってきた。

その積み重ねが、いつしか世界を繋いでいたのだ。

これからヴァリアードが『精霊王様の愛し子』として公表されるかどうかは、まだ分からない。

けれど、多くの種族を繋ぎ、『世界の理』を守りながら、争いのない道を歩いていく。それは、今までと何も変わらない。

ヴァリアードは、ようやく理解した。

それこそが、『精霊王様の愛し子』であり、『世界の繋ぎ手』としての自分の役割なのだと。

大樹の枝葉が、静かに揺れる。

その周囲を、精霊様と妖精様たちが楽しそうに飛び交っていた。

ヴァリアードは、その姿を見上げる。


「……まあ、今までと変わらないなら、それでいい」


本人だけは、まだ知らない。

その背中を見送る無数の精霊様と妖精様たちが、拍手し、歓声を上げ、どれほど嬉しそうに笑っていたのかを。


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