357 三国合同演習の終了
試合後、五組、五十人の選手たちは、大食堂に案内された。
大きな部屋の壁側には
ところ狭しと料理や飲み物が並んでいた。
それぞれの国や、マクアリール公爵領の特産品が所狭しと並べられている。
窓際の扉が開かれ、庭で炭火でたくさんの肉や、魚や、野菜などが焼かれて、いい匂いが漂ってくる。
真ん中には全員が自由に座れる大きな丸机に、沢山の椅子が囲み、ゆっくりと食事が楽しめる席となっていた。
全員か席につき、ラルフが立ち上がった。
「皆、今日は素晴らしい試合だった。勝敗はついたが、今日の戦いで互いの力を知り、自分たちの強さや弱さを知ることができたはずだ」
五十人が静かに耳を傾ける。
「これからも互いに、国や立場を越えて相互理解を深めていってほしい。
今日の経験を、それぞれの国へ持ち帰り、今後の鍛錬に生かしてくれ」
ラルフは穏やかに笑った。
「では、今日の健闘を称えて……食事にしよう」
「いただきます!」
五十人の声が重なった。
途端に、食卓が賑やかになる。
焼き場では、大量の肉や魚、野菜が次々と焼かれていた。
マクアリール公爵家の甘みタレ、塩コショウ、カラシタレ、香草タレが並び、皆が好きなものを選んで、焼き立てを頬張っていく。
「この肉タレ、うまいな!」
「俺はカラシタレが好きだ!」
「香草タレもいいぞ!」
「全部試せばいいだろ」
あちらこちらから笑い声が上がる。
マクアリール公爵領の魔豚のオヤキも、焼き上がるそばから皿へ運ばれていく。
「これも食べ放題なのか?」
「そうらしいぞ」
「なら、遠慮する理由はないな!」
出来立ての卵料理も次々と運ばれ、五十人は思う存分に食事を楽しんだ。
中でも一番人気となったのは、甘味だった。
「オハギ、まだあるか?」
「あるぞ!」
「シオダイフクも!」
「ミタラシダイフクも残ってる!」
「センベイも五種類あるぞ!」
「試合より、こっちの方が激戦じゃないか?」
サンセールの言葉に、皆が笑った。
「これは仕方ない。うますぎる」
竜皇国の騎士がオハギを頬張りながら頷く。
「今日の試合では負けたが……これを食べられるなら、少し気が晴れるな」
ハルド王太子も頬張る。
「次は勝てばいい」ジュストが笑う。
「もちろんだ!」フォルが即答した。
「今日は連携不足だった。次に戦うことがあるなら、必ず勝つ」
「俺たちも、次は今日のようにはいかないぞ」
レオンジュニアも笑った。
「もっと冷静に戦う」ロアが呟いた。
「楽しみにしています。」サンセールが答える。
少し離れた場所では、カーナリアンのマクド宰相とナイド外相が、マクアリール公爵家二軍の選手たちと話をしていた。
「今日は見事だったな。」
「皆様、体が大きくなりましたね。正面からあれだけ耐えるとは思わなかった」
「次は負けない」
「こちらもです。また勝ちます!」
そこへライが割り込んだ。
「俺たちは次こそ二軍に勝つ!」黄金の尻尾が機嫌よくふわりと動く。
「今日も同じこと言ってなかったか?」
「今度は違う!」
「何が違う?」
「……もっと考える!」一瞬の沈黙。
そして、五十人が一斉に笑った。
食事は二時間ほど続いた。
互いの戦いを振り返りながら、勝者も敗者も関係なく、五十人は同じ食卓で笑い合った。
やがて、帰りの時間が近づく。
各国とも、この後はそれぞれの公務が待っている。
ラルフが立ち上がった。
「そろそろ解散としよう。皆、今日はご苦労だった」
「はい!」
そして順番に臨時移動門に案内された。
移動門が開かれる。
帰り際には、全員にマクアリール公爵家のセンベイが手渡された。
「これは?」
「現在販売されている全種類のセンベイだ。参加者全員と国の軍の皆への土産も別に用意した。
あと映像前で応援してくださった国王様や重鎮の皆様の分だ。
次の開催は持ち回り制で頼みたいと、お伝えしてくれ。頼むな。」
いい笑顔のラルフだった。
「全種類……?」
袋を覗き込んだ者たちの顔が明るくなる。
「これは嬉しいな」
「家に帰ってからも食べられるぞ!」
「今日の試合より、こっちが楽しみだ!」
「おい!」また笑い声が響いた。
「また会おう!」
今日、競い合った五十人は、最後まで互いに声を掛け合い、それぞれの国へ帰っていった。
そして、そのまま各国で待つ公務へと向かっていく。
約四時間ほどの滞在。短い時間だった。
それでも、五十人にとっては、互いの力を知り、認め合う大切な時間となった。




