339 繋ぎ手がもたらした未来
リアムが力強く言った。
「今回のことで、また竜皇国の民に正確に伝えていかなければならないな」
ルディノールが頷く。
「そのためにも、貴族たち、民への教育を改める必要がありますね。『運命の番』についても、改めて周知する。
各家で伝えられないのなら、国が伝えるしかありません。私たちもルノアを守らなければ……」
ユキノアも静かに口にする。
「この国に嫁いでくる女性が、過去の悲劇を繰り返すような環境に置かれてはならない」
「ああ……そうだ。同じ失敗は許されない」
リアムの目が鋭くなる。
「クロリナラドに婚約者候補など、最初から存在しなかった。それを明確にする」
全員が頷く。
「そして、今回の嫌がらせについても徹底して調べる。二度と同じことが起こらないようにする」
リアムは窓の外へ目を向けた。
その日のうちに、王命が下された。
ルノアへの嫌がらせに関わった貴族家は、一件ずつ徹底して調査された。
呪いを仕掛けた家。
それを命じた家。
娘の行いを知りながら止めなかった家。
事情はそれぞれ違った。
だが、七つの家には明確な悪質な証拠が揃っていた。
三家は爵位を剥奪され、領地を没収。魔牢へ収監された。
二家は爵位を二段階下げられ、領地も半分となり、当主は隠居。
残る二家にも重い罰が下された。
呪い返しを受けた者たちは、自らの呪いによって苦しむこととなった。
一方で、改心した者も少なからずいた。
自ら修道院へ入り、罪を償うことを選んだ者もいた。
誰もが、自分たちの行いが決して軽いものではなかったと思い知らされた。
『運命の番』について。
これまで家の中だけで語り継がれてきた歴史を、国が責任を持って後世へ伝えることになった。
貴族だけでなく市井にも、次代を担う子どもたちへの教育が義務づけられた。
その中に、『運命の番の腕輪の誓いをしても、気持ちが離れることがある。
互いを大切にし、努力し、敬わなければ、心が離れ、最後には二人とも天へ還ることとなる。』
教育の中で明確に伝えられた。
誰かを傷つければ、その行いは自分へ返ってくる。
そして何より……
『運命の番』とは、誰かが勝手に望むものでも、本人たちが選び取るものでもない。
竜神様が定めた、ただ一つの縁なのだと。
魔術学園と魔術学院についても同様だった。
不正によって退学となった者が、ただ時間が経ったという理由だけで戻ることは認められなかった。
もう一度学ぶ資格を得るためには、自らの過ちと向き合い、定められた教育を受け、改めて試験を受ける。
失敗した者を切り捨てるのではない。
けれど、失敗をなかったことにもさせない。
それが、新しく生まれ変わろうとする竜皇国の答えだった。
そして……王城の竜舎では、今日も多くの竜たちが暮らしている。
一見すれば、以前と何も変わらないように見える景色。
けれど、その声に耳を傾ける者は、少しずつ増えていた。
誰かが特別だったから、声が聞こえるようになったのではない。
これまで誰もが聞こうとしなかった声に、ようやく耳を傾け始めただけなのだ。
今日も、竜たちは大空へ飛び立っていく。
その傍らで、大きな竜舎は静かに佇んでいる。
変わり始めた国の中で、変わらない日常を見守るように……。




