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転生したのでレアアイテム集めたい…えっヒロイン退場してしまいました  作者: 5H


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333/353

333 竜たちと福との約束

昼食を終えた頃には、ルノアはすっかり眠たくなっていた。

「……ふぁ……」

小さな欠伸がこぼれる。

「ノア?」

隣にいたクロリナラドが振り返った。

「大丈夫?」

「はい……少し眠いだけです」

そう答えたものの、ルノアの瞼はもう重たくなっている。その周囲では、先ほどから竜たちがルノアを取り囲んでいた。


ーーもう少し話そう。

ーーまだ聞いてほしいことがある。

ーー我にも魔力を分けてくれ。

ーー少しだけでいい。


「え……?」

ルノアが顔を上げた瞬間だった。ふわり、と身体から淡い光がこぼれた。その光が竜たちへと流れていく。

「だめ!」

居眠りしていた福が叫んだ。

「……あ」

ルノア自身は気づいていなかった。竜たちは、ルノアの魔力を受け取ると気持ちよさそうに目を細めている。


ーーやはり心地よい。

ーーこの魔力は落ち着く。

ーーもう少し……。


「ちょっと待て!」

クロリナラドが慌てて立ち上がった。

「魔力を取りすぎだ!」

けれど、ルノアはすでにふらふらと身体を揺らしていた。

「……ラド様……」

「ノア!」

倒れかけた身体を、クロリナラドが慌てて抱き留める。

「大丈夫?」

「はい……」

ルノアはクロリナラドの胸元に寄りかかる。

「ただ……なんだか……とても眠くて……」

そのまま、こてん、と頭を預けた。瞼がゆっくりと閉じていく。

その時だった。


「……ちょっと、竜たち!!!」

可愛らしい声が森に響いた。竜たちが一斉に振り返る。

そこに立っていたのは大きくなった神獣の福だった。いつもの愛らしい姿はない。竜よりも何倍もの大きさで見下ろしている。

けれど、その顔は明らかに怒っている。

「何してるの?」


ーーどうした?

ーー竜神様の御使いの福様じゃないか……?

ーー怒ってる?……。


「どうしたじゃないよ!福は怒ってるんだからね!」

その一言で、竜たちがぴたりと静まった。

「ルノアはね、竜よりずっと弱いの」

福は一頭一頭、竜たちの顔を見る。

「身体も小さいし、魔力だってたくさん持っているけど……無限ではないでしょ?わかる?」

竜たちは黙って聞いている。

「なのに、みんなで好きなだけ魔力を取ったらどうなるの?」


ーー……疲れる。

ーー倒れる。

ーー眠ってしまう。


「そうでしょう?」福は頷いた。

「ルノアはみんなのお話を聞いてくれた。魔力も分けてくれた。嫌だって言わなかった」

眠ってしまったルノアへ視線を向ける。

「だからって、全て甘えていいわけじゃない!」

福の声が少しだけ低くなる。

「みんなで大事にしなきゃいけないの!」

竜たちは俯いた。

「これからは約束して!

ルノアから魔力をもらう時は、ちゃんと本人に聞くこと。

疲れていたら、絶対に魔力は取らないこと。

眠そうだったら、ちゃんと休ませること。」

そして最後に、にっこりと笑う。

「みんなで約束を守ること」


ーー……分かった。

ーー約束する。

ーーもう勝手には取らない。


福は満足そうに頷いた。

「うん。わかればよし!約束守らないやつは福が許さないからね。竜神様もみてるからね!」

その時、竜たちの中からラグナが一歩前へ出た。

大きな身体を低く伏せ、福に頭を垂れる。


ーーならば、我が代表で皆を正そう。

ラグナの声が森に響いた。

ーーここに生きる全ての竜を代表して、誓う。

ラグナは眠っているルノアを見る。

ーー我らはルノアの許しなく、魔力を奪わない。

ルノアが疲れた時には休ませる。

ルノアが助けを求めれば、必ず力を貸す。


そして、ゆっくりと翼を広げた。


ーー我ら竜は、ルノアを守る。


その言葉に呼応するように、森中の竜たちが頭を下げた。


ーー誓う。

ーー我らも誓う。

ーーラグナの誓いを、我ら全ての約束とする。


「うん」

福は満足そうに頷いた。

「それなら、福も安心」

そしてルノアのそばへ歩み寄る。

眠るルノアをそっと抱きしめ撫でた。

「ごめんね、ルノア。みんな、ちょっと反省してるから」

「……福ちゃん……?」

眠りかけていたルノアが、うっすらと目を開ける。

「みんな……怒られたんですか……?」

「うん。怒ったよ」

「そう……なんですか……」

ルノアは眠たそうに微笑んだ。

「でも……皆さん、悪気はなかったと思います……」

「知ってるよ」

福も笑う。

「だから、これからはちゃんと約束を守るの」

「……それなら……よかった……」

安心したように呟くと、ルノアは再び目を閉じた。


しばらくして。「……ん……」どれほど眠ったのだろう。ルノアがゆっくりと目を開けた。

「……あれ?」

木漏れ日が眩しい。身体はすっかり軽くなっていた。

「あ……私、寝てしまったんですね」

「おはよう、ノア」

クロリナラドの声が聞こえる。

「おはようございます、ラド様」

ルノアは身体を起こした。そして、ふと気づく。

「……?」

周囲が妙に静かだった。

目を覚ましたルノアの周りには竜たちが集まっているはずなのに。……いない。

いや……いる。ものすごく遠くに。木々の陰。少なくとも十数歩以上離れたところに、竜たちがずらりと並んでいる。

しかも、全員がルノアをじっと見つめている。

「…………」

ルノアも竜たちを見る。

竜たちもルノアを見る。

けれど、誰一頭として近づいてこない。

「……皆さん?」

ルノアが手を振る。竜たちはびくっと身体を揺らした。


ーー近づいてはいけない。

ーー魔力を取ってはいけない。

ーー疲れさせてはいけない。

ーー福様との約束だ。


「……」

ルノアは首を傾げる。

「どうしてそんなに離れているんですか?」


ーー約束だから。

ーー近づきすぎてはいけない。

ーーお前が疲れてしまう。


「えぇ……」

ルノアはしょんぼりと肩を落とした。

「でも……」

少し寂しそうに、竜たちを見る。

「……あんなに近くにいてくれたのに……」

竜たちがざわざわする。


ーー寂しいのか?

ーー近づいてもいいのか?

ーーだが、約束が……。


ルノアはますますしょんぼりする。

「私……皆さんとお話しするの、楽しかったんですけど……」

その言葉に、竜たちは一斉に顔を見合わせた。

そして。


ーー福様。


竜たちの視線が、一斉に福へ向いた。


「なあに?」


ーー少しくらいなら、近づいてもいいのではないか?


「……」

福は腕を組み、竜たちを見る。

「そうだね」

にっこり笑った。

「でも、今度はちゃんとルノアに聞いてからね」

すると竜たちが一斉にルノアを見る。


ーールノア。

ーー近くに行ってもいいか?

ーー隣にいてもいいか?

ーー少しだけ、話してもいいか?


ルノアの顔がぱっと明るくなる。

「もちろんです!」

その瞬間。待ってましたとばかりに、竜たちが一斉に駆け寄ってきた。

「わっ……!」

あっという間にルノアの周囲が竜だらけになる。


ーー近くに来たぞ!

ーー約束は守った!

ーー魔力は取らない!

ーー話だけする!


「ふふっ……」

ルノアは竜たちに囲まれながら、嬉しそうに笑った。


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