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転生したのでレアアイテム集めたい…えっヒロイン退場してしまいました  作者: 5H


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32/442

32 運命の番の魔力の匂い

「はじめまして、ルノア嬢。私は竜皇国第二王子、クロリナラドだ。

小さいのに、しっかりと挨拶ができたね。えらいよ。

驚かせてしまったかな?

魔力が苦しい?

それとも……私が怖いのかな?

涙の理由を聞いても大丈夫かい?」


初めて聞いた、優しい声。


その声を聞いた瞬間、胸の奥がさらに熱くなった。


涙は、ますます止まらなくなってしまう。


ヴァリアードが心配そうにルノアへ近づこうとした。


けれど、ラルフが小さく首を横に振って止めた。


今は、何もせず見守った方がいい。


「ぁ……申し訳……ございません……。

ただ……懐かしくて……。

温かい気持ちが……湧いてきて……。

クロリ……ラド……。

クロリ……」


うまく言葉が出てこない。

クロリナラドは、そんなルノアを見て優しく笑った。


「言いにくいよね。

それなら、ラドと呼んでおくれ。

大丈夫だからね」


「あぁ……本当に……申し訳ございません……。

恥ずかしい……です。

私は、竜人皇族の方を……愛称でお呼びするような……立場ではありません」


ルノアは涙を拭いながら、必死に呼吸を繰り返した。


肩が小さく上下する。


「怖く……ないです。

私の魔力も……大丈夫ですか?

魔力が苦手だと思う方もいると……ヴァリー伯父様に……教えてもらったのですが……」


「そうか。

しっかりと礼儀作法も勉強しているんだね。

大丈夫だよ。

ルノアの魔力は、とても優しい魔力だ」


クロリナラドは穏やかに微笑んだ。


そして、少し考えるようにルノアを見る。


「少し試してみても大丈夫かな?

私がどの程度まで魔力を解放しても大丈夫なのか、実際に確かめてみないと分からないからね。

福様も、よろしいですか?」


すると、福ちゃんが翼をばたつかせながら声を上げた。


「クロリナラド! 来るの遅い!

ヴァリーが生意気だから、立場をしっかり教えて!

ルノア~、大丈夫?」


福ちゃんはルノアの顔を覗き込む。


「分かるんだね。

ルノアの運命の番がクロリナラドだよ。

すぐに分かったでしょ?

会いたかった人に会えたって思えた?」


そして、涙で濡れたルノアを見て言う。


「ほら、もう泣かないの。

クロリナラドも、早く抱きしめてあげて」


「少し待ってください、福様。

では、魔力を少し解放しますね」


クロリナラドがそう言うと、福ちゃんは当然のように答えた。


「ルノアなら大丈夫だよ。

全開で早く試して!」


「……全開?」


ラルフとヴァリアードの顔が強張る。


しかし、次の瞬間。


クロリナラドの魔力が、一気に広がった。


部屋いっぱいに、圧倒的な魔力の波動が満ちていく。


その魔力には、どこか不思議な香りがあった。

ルノアはゆっくりと息を吸い込む。


――ミントのような、すっきりとした香り。


その奥から、ラベンダーのような柔らかな香りが広がってくる。


眠る前に使っていたアロマを思い出すような、心地よく穏やかな香りだった。


「……すっきりとした……優しいお花の香りに包まれて……安心します。

もう、お昼寝をするような年齢ではありませんが……。

でも……この中で、お昼寝したい……です」


ルノアの顔に、蕩けるような笑顔が浮かんだ。


その表情を見たクロリナラドも、優しく微笑む。


そして、そっとルノアを抱きしめた。


「大丈夫かい?

……ルノア、と呼んでも?」


ルノアは言葉を返すことができなかった。


ただ、何度も何度も、嬉しそうに頷いた。


「あっ!」


福ちゃんが突然、ラルフとヴァリアードを見る。


「ヴァリーとお父様、結界間に合った?」


その言葉に、二人は苦しそうに目を閉じた。


肩で大きく息をする。


クロリナラドの魔力は、あまりにも桁違いだった。


二人とも必死に結界を張った。


それでも、完全には受け止めきれない。


強烈な魔力の波動が、身体を圧迫してくる。


そんな状況の中。


クロリナラドに抱きしめられたルノアは、幸せそうに笑っている。


その姿を見たラルフは、複雑な気持ちになった。


――ああ。


もう、この子は嫁に行ってしまうのだろうか。


まだ十歳なのに。


ついさっきまで、自分の腕の中にいた娘なのに。


寂しさと、嬉しさと、戸惑い。


そして、父親として簡単には割り切れない感情が胸の中で入り混じる。


さらに、桁違いの魔力に身体まで圧迫され、ラルフは苦しそうに息を吐いた。


隣ではヴァリアードも同じように耐えている。


二人は顔を見合わせた。


――娘の幸せを願う気持ちは、もちろんある。


それでも。


「運命の番」と出会ったばかりの娘を、そう簡単に手放せる父親など、いるはずがなかった。


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