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転生したのでレアアイテム集めたい…えっヒロイン退場してしまいました  作者: 5H


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299/356

299 生まれ変わった二人

『年始の祝賀』の夜会を前に始まった、王家による貴族たちの事前面談。

その緊迫した部屋で、宰相のマラドの前に座る侯爵は、これまでの王家からの通達を全く理解していなかった。

それどころか、未だに傲慢な笑みを浮かべ、我が国の高貴な血を引く目上の存在であるマクアリール公爵家を侮る発言を平然とした。


「マラド宰相。マクアリール公爵家は、ただ運が良いだけだ。タスワンズ湖を持っていただけで、我が国の領土の三分の一も持たせておくなどあまりに危険だ。いつ国を裏切るか分からない。あの湖と領地は国へ献上させるのが筋、王家の権威で今すぐ取り上げるべきですな」


その浅ましい妄言を聞いた瞬間、マラドの瞳から完全に光が消えた。

タスワンズ湖の魔術協会と精霊協会の立入禁止の意味。

他国の闇ギルドが消滅した竜皇国の怒り。

不可侵条約の本当の重み。

この男は何一つ理解していない。

そればかりか、王族の血筋である公爵家を格下のように見下すその無知。

この男のような存在こそが、国を滅ぼす最大の害悪だ。マラドは冷徹な声を面談室に響かせる。

「そこまで言うのであれば、侯爵。お前はマクアリール公爵家が我が国のために行っている施しを、すべて拒絶する覚悟があるのだな?」

「……なっ?」

「我が国に無償で引いてくださっている水路だ。お前の領地は、あの水路が無ければ度重なる干ばつに耐えられず、とうに干上がっていたはず。

王家の血を引く公爵家を侮り、その領地を奪えと言うのなら、今この瞬間をもって、お前の領地へ繋がる水路を完全に閉鎖するよう通告する」

「な、何だと!? そんな横暴、許されるはずが……」「横暴なのはお前だ、この愚か者が!」

ドン! とマラドが激しく机を叩き、立ち上がった。

その凄まじい気迫に、侯爵は息を呑む。

「目上の公爵家を不当に侮り、世界の支配者たる竜皇国が守る聖域を強奪しようなど、明白な国家反逆罪だ!

お前のような戯け者が夜会に出れば、今度こそ我が国は消滅する!」

マラドの鋭い眼光が侯爵を射抜く。

「もはや弁明の余地は無い。国を滅ぼしかけた責任を取り、今すぐ爵位を返上せよ。さもなくば、お前の優秀な弟に今ここで家督を譲れ。それ以外にお前が生き残る道は無い」

マラドの合図とともに、聡明な面持ちをした侯爵の弟が静かに室内へと入ってきた。

兄とは違い、世界の情勢と王家の意図を完璧に理解している若者だった。

「今この場で、家督譲渡の書類に署名しろ」

突きつけられた絶対的な命令。そして、用意周到に準備されていた。

侯爵は顔面を蒼白にしてガタガタと震えた。

しかし、拒めばその場で首が飛ぶ。選択肢など最初からなかった。侯爵は絶望しながら、書類にペンを走らせる。

「これでよし。お前は今日をもってすべての地位を失った。お前の子供たちの問題も証拠がそろっている。無能すぎる、全員で刑期を終えよ。

国を危険に晒した罪は重い。これからは、マクアリール公爵家の水路作りの現場で、一介の泥塗れの作業員として、死ぬ気で働き、己の無知を償うが良い」

その場で家督を奪われ、平民へと叩き落とされた元侯爵は、絶望のあまりその場に崩れ落ちた。

新当主となった弟が、マラドに向かって深く敬礼を捧げる。

マラドは近くにいた宰相補佐官や近衛騎士たちを見やり、苦々しく首を振った。

「お前たちも気を引き締めろ。私たちもまた、あの無能に見くびられていたのだ。『この程度の浅知恵でも、こいつらなら大丈夫だ』とな。全く舐められたものだ」

最初の一手を見事な冷徹さで打ったマラドは、静かに次の面談の書類へと目を移すのだった。

すべては、あらかじめ用意されていた冷酷な筋書き通りだった。

元侯爵の失脚を皮切りに、その日のうちに合計六つの貴族家が降格、あるいは爵位剥奪の憂き目に遭うこととなる。

国を滅ぼしかねない無知な者たちに、弁明の機会など最初から与えられていなかった。

先ほどの元侯爵と同じように、魔道具の枷を嵌められて連行されていく貴族たちの悲鳴が、代わる代わる面談室の外へと消えていく。

勢力図が確実に、そして静かに塗り替えられていく中、マラドは感情の消えた瞳で次の書類をめくり、呼び出しの鈴を鳴らすのだった。


弟ナイドの言葉は、王太子ハルドの胸にも深く突き刺さった。あの日を境に、彼は猛烈な勢いで変わり始める。

誰よりも朝早く執務に赴き、しっかりと食事を取り、寝る前に魔力鍛錬をし枯渇寸前で眠る日々。時間を作り自らマクアリール家の過酷な魔術訓練へと志願した。

さらに、平民の服を身にまとい、隠密を連れて市井を巡り、民の声を直に拾い集めた。

新たな魔術を貪欲に吸収し、魔力限界まで己を鍛え上げるその背中には、王位を継ぐ者としての圧倒的な気迫と覚悟が満ちていた。

その奮闘ぶりは、カーナリアン王国の王太子としての真価を見事に行動で証明してみせたのだった。


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