295 サンセールの運命の番
フォルが静かに言った。
「皆様、補足として、サンセールが『番』を思い出せたこともお伝えいたします。」
フォルが誇らしげに弟へ視線を向けた後、国王陛下へと向き直った。
国王陛下夫妻は溢れそうになる涙を堪えるように、深く息を吐いた。
王妃様が愛おしげに目を細めてサンセールを見つめ、国王陛下が言った。
「サンセール。実はな、ここにいる全員でな。
お前に本当の意味での『おめでとう』を伝えるのは、自らの力で『運命の番』を思い出した時にしようとずっと心に決めて待っていたのだよ」
祖父母の口から明かされた、決意と深い愛情。
サンセールは驚きに目を見張った。
「三兄弟で手を取り合って見事に上級防御魔法を解呪せしめた。そして、真に誠実な男となって竜皇国建国以来はじめて『魔導技能特級推薦』合格だ。礼儀が素晴らしかったと聞いて本当に嬉しかった。
サンセール。『運命の番』との出会い本当に良かったな。おめでとう。」
国王陛下は慈愛に満ちた声で、真っ直ぐに孫を見据えた。
ずっと自分たちの成長を信じ、真の祝福の時を待っていてくれた祖父母や両親の深い想いを知り、サンセールの胸に熱いものが込み上げる。
「……はい。勿体なきお言葉、深く心に刻みます」
サンセールは感極まりながらも、毅然と背筋を伸ばし、家族からの最高の祝福をその胸にしっかりと抱き留めるのだった。
国王陛下が続けていった。
「だが、サンセール。真の祝福を贈ると同時に、お前には現実を突きつけねばならぬ。相手はあの、武を尊ぶリオンブラン王国の王女だ」
陛下の声が、低く、重く、室内の空気を引き締める。
「かの国の王女の隣に立ち続けるということは、想像を絶する過酷な『婿入りの戦い』に、この先ずっと戦いに、身を投じることを意味する。並み居る他国の強豪や、国内の猛者たちが、お前の命を奪う勢いで次々と挑んでくるだろう。
ただの一度でも敗北すれば、伴侶としての資格を失うばかりか、その命すら保証されん」
国王陛下は真っ直ぐにサンセールを見据え、その魂を試すように問いかけた。
「どれほど傷つき、決してその手を放さず、王女の隣を死守し続ける覚悟が、お前にはあるか?」
激しい試練を予感させる王の言葉。
しかし、サンセールの瞳に宿る光は、一切揺らがなかった。
「はい。我が身が砕け散ろうとも、必ずや勝ち抜き、彼女の隣に相応しい男となってみせます」
「その意気や良し。だが、どれほどお前の腕が立とうとも、相手の王女はまだ未成年だ。この世界においては、本人の明確な承諾がない限り、魂を繋ぐ『白銀の腕輪の誓い』を交わすことは絶対に許されん。それとルル王女はルノアと同じく『特級クラス』だ。半年で卒院してしまう場合もある。なるべく早く『特級クラス』に昇給しなさい。」
ルディノールが優しく含めるように言った。
「学院で共に過ごすことになろうとも、決して焦ってはならぬぞ。礼儀正しく適切な距離を保ち、まずは相手の精神の安定を第一に考えなさい。
完全な誓いを交わせずとも、同じ国に身を置くだけで、お前の精神も十全に安定するはずだ。
真の伴侶にふさわしい誠実さで、ゆっくりと信頼を育むのだぞ」
「はい。この胸に深く刻み、精進いたします」
サンセールは家族の深い愛と教えを背負い、これからの過酷な試練を見据えてまた深く一礼するのだった。




