294 ヴァリアードの助言
一同が頷く中、それまで静かに見守っていたヴァリアードが、瞳を怪しく光らせて言った。
「お前たちが血の滲むような努力を重ねた結果、三人ともに『古竜種』としての最大の器を有していることが、自らの鍛錬を通じてようやく自覚できたはずだ。
……だが、それを他国に知られることは、あまりにも危険だと改めて伝えておく」
ヴァリアードは悪戯っぽく、しかし有無を言わせぬ威圧感を漂わせて三兄弟を見渡した。
「そこでだ。学院内におけるすべての模擬対戦には、己の持つ『一割の力』だけで臨みなさい。
もし破られた場合、お前たちの身につけている
『魔力制御の枷』が強制的に作動する仕組みになっている」
三兄弟が驚きに己の身体を見つめると、ヴァリアードは低く笑った。
「おや、ようやく気がついたな。そうだ、すでに仕込んである。これはヨーリアン帝国から、帝王の尊き孫たちを守るための防壁装置だと思ってくれればいい。
……ただ、まぁ、入学すればすぐに分かるが、ひどく厄介な不届き者が混ざっていてね。
ヨーリアン帝国から全力で行使する許可を貰っている。遠慮なく叩きのめしてくれ」
ヴァリアードのその言葉に、三兄弟の口元に好戦的な笑みが浮かぶ。
しかし、言葉はそれだけで終わらなかった。
「できればな、問題児たちにも、お前たちのその優秀な頭脳で、問題を解決して欲しいな。
それと卒院までにその枷を自力で解呪してほしい。
……まぁ、解いたらまたすぐに新しいものを付け直すがね。その時は、解呪の貴重な資料として、私の研究に貢献してもらうよ」
食えない言葉に三兄弟が揃って苦笑するのを見て、ヴァリアードは満足そうに表情を和らげ、最後に現実的な忠告を授けた。
「入学式には、誰もが自国を代表する者として集まってくる。中には、酷く閉鎖的で狭量な国から来た者も多数いるだろう。だが、暴力に訴えるのではない。
公の実戦の場において、確実に自分たちの確固たる位置づけを、正式な形で証明してやるのだ。……まぁ、身の程を知らずに調子に乗るような輩は、だいたい半年もすれば姿を消す。
放置しておいても構わない。それはヨーリアン帝国の仕事だからな」
ヴァリアードは一転して、獰猛な眼差しを向けた。
「だが、もし理不尽に絡まれたならば……何倍にもして叩き返してやれ。ただし、こちらから先に手を出すことだけは厳禁だ。どのような理由があろうともだ。また授業で会うからよろしくな。
あっ!そうだいい忘れた。ルノアもな、学院の規則だけは絶対に守れ。本当にちゃんと隅々まで読めよ。抜け道も対処法……余分なことは言わない。ラルフ睨むな!分かったよ。」
「「「はい。」」」
三兄弟は、ヴァリアードからの「魔導の枷」と、力強い激励をその胸に深く刻み込み、覚悟を新たにするのだった。
長男フォルが澄んだ瞳で言った。
「今後も決して慢心することなく、さらなる高みを目指して努力し続けることを、ここに誓います」
宣言すると、ジュストもサンセールも深く頷いた。
家族へ向けて深々と一礼した。




