286 ヨーリアン帝国魔術学院 魔導選抜試験3
サンセールの一勝目の勝利は、序幕に過ぎなかった。 サンセールの戦術は、試合を重ねるごとに凄みを増していった。
全方位に目があるかのような完璧な防御。
そして、相手が「攻撃が終わった」と錯覚した瞬間に足元をすくう。隠された数多くの攻撃や追撃の短縮魔法陣。
戦い方が全て違う緻密に練り上げられた多様な変化が、次々と勝ち進んできた強者の対戦相手を沈めていく。
終わってみれば、サンセールは一度の敗北も、一瞬の隙も見せることなく、怒涛の「六戦全勝」を成し遂げていた。
六回目の試合が終わり、サンセールが礼を終えた直後だった。
中央の監視台から、本試験の総括を務める特級試験官が立ち上がり、魔力で増幅された声を演習場全体に響かせた。
「見事だ。サンセール! 無駄を徹底的に排除した術式構築、実戦における多角的な戦術、そして何より、六戦すべての相手と正々堂々戦い、実力でねじ伏せたその技量……。礼儀も素晴らしい。文句なしに、本年度の『魔導技能特級推薦枠』への編入を、この場で宣言する! 合格だ!」
歓声が爆発するように沸き起こった。特級推薦枠。
それは、実技において圧倒的な才を示した者だけに与えられる、最高峰の特権である。
一方で、同じく全勝を誇った兄たちの結果は、少し異なるものとなった。
フォルとジュスト。二人の実力は間違いなく圧倒的だった。
学院が求める最高数「五十」を遥かに超え、「百」の魔法陣を目指して泥臭い実戦訓練を積んできた彼らの応酬は、あまりにも苛烈で、破壊的だった。
その桁外れの強さゆえに、兄たちの対戦相手は恐怖し、合わせて二つの陣営が試合前に「棄権」を選択してしまったのだ。
不戦勝を含めての全勝。戦績としては完璧だったが、推薦枠の規定は厳格だった。
「不戦勝を含む勝敗の場合、どれだけ実力があろうとも、技能特級推薦での入学は不可とする」という鉄の掟が存在した。
兄たちはその圧倒的な強さゆえに、皮肉にも推薦枠を逃す形となったのである。 しかし、兄たちは全く悔しそうな顔をしなかった。
それどころか、静かに、年の離れた弟の姿に、誇らしげな笑みを浮かべ合格に安堵していた。




