283 竜神様の決断を愛し子として伝える
クロリナラドとルノアは、サラナの案内で国王夫妻の待つ私室へと向かった。
重厚な扉を開けると、室内には温かい空気が満ちていた。
その穏やかな気配に、一同はきっと報告を聞いて心から安堵したのだろう、と二人は察する。
「ただいま戻りました」
クロリナラドが声をかけると、私室にいた全員がこちらを振り返った。
「ああ……竜神様との面会、ご苦労だったな。ちょうどラルフから、フォル、ジュスト、サンセールの様子を聞いていたところだ」
国王陛下はどこか誇らしげに、しかし感慨深げに目を細めた。
ルノアはラド様とともに歩み寄り、お父様の隣へと静かに腰を下ろした。
ルノアは、国王夫妻、王太子夫妻、そして隣にいるお父様をまっすぐに見つめ、先ほど竜神から告げられた言葉を切り出した。
「皆様。先ほど竜神様より、西大陸のアーシャ愛幸国と、北・西大陸間の地脈の危機について伺いました。……そして、ラド様と私の魔石投入を打ち切るという『神の決断』を、直接告げられました」
その言葉に、室内の空気が出し抜けに緊張を帯び、全員の表情がわずかに動いた。
「……そうか。ついに竜神様から、そのお話があったのだな」
国王陛下が、静かにルノアを見つめ返した。
「はい。ユキノア様の元母国のお話も、世界の取捨選択における本当の決定権がどこにあるのかも、すべて納得いたしました。
私は竜神様の愛し子として、自然を愛し、約束を守る誠実な方々を……そして大切な家族を、ラド様と一緒に全力でお守りいたします」
一切の迷いがないルノアの強い瞳と、毅然とした言葉。
国王夫妻は深く息を呑み、次いで感嘆の吐息を漏らした。
「ルノア、お前は本当に強い子だ。それほど重い世界の選択を、それほどまっすぐに受け止めてくれるとは……。
クロリナラド、お前が言っていた通りだったな」
国王陛下はそう言って目を細めると、慈愛に満ちた声で言葉を続けた。
「だがな、ただ苦しく、悩み、悲しいときはいつでも話してほしい。クロリナラドがいるが、私たちもいつでもお前を支える覚悟がある。良いな。これからも共に歩んでいこう」
自愛に満ちた瞳でルノアを見つめた。
「我が国の未来を担う三人の王子たちも、そしてこの世界の理を支える愛し子も、皆、自分自身の足でしっかりと立ち、
『どう生きるか』を考え歩み始めている。……頼もしい限りだな。
あとは三王子たちが無事に本試験で合格することを祈ろう。」
室内を満たす沈黙の中、国王陛下が静かに立ち上がった。陛下はゆっくりと窓辺へと歩を進める。
そして、遮るもののない大きな窓から、遥か彼方に広がる空をじっと見つめ、これからの未来に思いを馳せるのだった。




