281 竜神様との面会 取捨選択とは
竜神様が続けて話した。
「境の北大陸のリーラン王国は、竜皇国の侯爵家次男が王配として番婚で婿入りして今も誠実な国を長く築いている。
竜神教会も竜皇国と同じ数の教会がある。
アーシャ愛幸国とは本当に不仲でな……
クロリナラドとルノアの魔石を、投入しながら様子を見ていたが……
お前たちの魔石を投入することは、アーシャ愛幸国を長く無償で守っていた聖女とその信者たち、妖精様と精霊様が無事に避難したあと、やめようと思っている。この判断を、まずは先に伝えたかったのだ。
以前、世界の取捨選択は竜皇国王が行っているとクロリナラドがルノアに伝えたと思うが……
実際に判断しているのはこの私だ。
これも建国の時代まで遡る話なのだが……竜神教会の信者の祈りが少なくなれば、祈りの力が減り、私の竜神の力も減ってしまう。
だからこそ、その時の竜皇国王からの公式な宣言とすることで、信者を減らさないようにと提案された。
私もその方針に従ってきたが……私はルノアに本当のことを知ってほしかった。
今、この話をするのは、以前の愛し子の『タナカユキ』がいた時と、また同じ状態になっているからだ。
もう『タナカユキ』の記憶が薄く、わからないルノアに話すべきか否か悩んだが……福も、精霊王様も、サラたちも、エルフたちも『話すべきだ』と言った。今のルノアなら、大丈夫だと。」
「そうでしたか……。記憶が何か無くなっていることは自覚していましたが……。他のサラたちも、前の私のことを知っていて見守ってくれていたのですね?」
ルノアの言葉に、そばにいたサライが静かに頷いた。
「はい。エミリア様から私たちが精霊侍女になれることや、ルノア様が苦しみながら天に還るようなことだけは絶対にさせないと、色々と準備されていました。
『きっと新しく生まれ変わったルノアなら、誠実な生き方で自分の人生を強く歩くことができる。だから私の代わりに見守ってほしい』と、そう託されました。
エミリア様は、『ラルフにもお兄様にも転生者だとは伝えない、皆にも伝えないようにお願い……二人は私の寿命を優先するから。
私は命の輪廻を歪ませてはいけない、誠実に生きることを、私自身が守らなければいけない』
とお話しされていました。
私たちにとって、エミリア様の言葉も習慣も理解できないものが多くありましたが、今こうして全てをお話しできて、心からホッとしております」
サライは深く頭を下げた。ルノアは優しい眼差しで彼女を見つめ、語りかける。「サライ、他のみんなにもぜひ伝えてください。今までも見守ってくれてありがとう。そしてこれからも、笑顔で私の側にいてほしいと。」
「私たちの方こそ、感謝しております。新しい生き方といつも過保護なほどに大切にしてくださること。私たちはみんな、本当に幸せです」
少し目元を潤ませたサライが、ニッコリと温かい微笑みを浮かべた
「竜神様。信者の祈りが竜神様の存在をより強固にし、力の原動力となる勉強は、いたしました。
竜神教会や聖書、聖歌の学びが進むにつれ、なぜ世界の理に関わる部分の決定権が『竜皇国の国王様』にあるのだろうかと、ずっと不思議に思っていたので納得できました。お話ししてくださり、ありがとうございます。
その判断は竜神様の、すなわち『神の決断』です。
私が口を挟むこと自体、間違っていると考えます。
私は『竜神様の愛し子』で、大切にお守りしたいのは、竜神様と精霊王様、妖精様、精霊様、そして皆様に感謝し、自然を大切に愛する者たちと家族。それだけは、はっきりとしています。
ただ其々の考えや価値観が違うのは当然です。
ただ保護され、守られることも決して当たり前ではありません。
愛し子の役目とは、竜神様の考えを理解し、伝え、厳しいようですが……
『約束を守る誠実な者』を守ること……。
今の私では、まだ視野が狭く、勉強不足で、もっと良い考え方もあるかもしれません。
でも、竜神様や他の皆様ののお心遣いで配慮あるお言葉を聞けて大変嬉しく思いました。
命の取捨選択は苦しく、重く、大変な決断です。
残念なことではあります……。できたら全員を助けたい。でも選択に迫られる瞬間は平等に訪れます。だからこそ『どう生きるか』が大事なのだと思います」
ルノアが強い瞳で答えた。
竜神様は深い慈愛に満ちた眼差しで受け止めた。
「うむ……さすがはルノアだ。その言葉を聞けて、我も安心した。」
隣で大きくなった福ちゃんが大きな翼を広げてルノアの横に立った。
「ルノア、クロリナラド。魔石作りを神域の近くで作った方が良いよ。回復が早いから。竜神様。いい忘れてるよ!」
福ちゃんがフーと鳴いてルノアをギュッと抱きしめた。
大切な一月一度の面会を終え、二人は静かに竜神様に一礼すると、クロリナラドの私室に移転で戻った。




