280 竜神様との面会 クロリナラドの報告
静かな瞳で竜神様がクロリナラドに問いかけた。
「クロリナラド、報告を聞かせておくれ。もちろん、大体の状況は精霊王様からも聞いているのだが……」
「はい。実は西大陸と北大陸の境に、かなり大きな魔素溜まりが生じております。
ここから一ヶ月の間にスタンピードが起きることは確実であると、すでに両国には伝えました。
しかし、西大陸側の一つの国は全く備えをしておらず……そればかりか、精霊様や妖精様に対して非常に横柄な態度を取っております。
そのため、その地から精霊様と妖精様が離れ始めています。このままでは自然の崩壊から小さなスタンピードが同時多発的に発生し、それが一気に巨大な穴となって繋がり、被害が拡大すると予想しています」
「ああ……あちらを治める精霊王様と愛し子、そして西大陸ランボトル精霊国の国王リヤンガからも報告は受けている。
ランボトルでは愛し子の地位が高く、誰もが言葉に耳を貸すので大丈夫だとのことだ。
だが、その隣の国がかなり危険な状態だと聞いている。あそこには竜神教会が一つしかないから、そこの聖女には伝えた。
しかし……その聖女もすでに高齢で、後継者は生まれなかった。
国と国民が聖女を大切に扱わなかったからだ。新しく生まれ変わらなかった。
アーシャ愛幸国だからな。愛の女神とアーシャが名乗り、宗教として国を建国したが……むしろよくここまで持った方だと思っている」 竜神様はそう言うと、ふっと視線を遠くへと向けた。
「あの国は、ルディノールの番であるユキノアの元母国と言っていいのだろう。
簡単に説明するとな……。ユキノアの公爵家は、元々は竜皇国の公爵家だったのだ。かつての祖先の中に、竜人との運命の番婚を拒否し、竜皇国からアーシャ愛幸国へ逃げた者がいた。
だが、拒絶された竜皇国の番が天に還ると、逃げた竜人もまた、深い後悔の中で天に還ったのだよ。
その時、妹を連れ戻すために国を出ていた公爵家の長男が、アーシャ愛幸国で自身の運命の番を見つけ、あちらで番婚をした。
……しかし、その二人の間に生まれた子供が、竜人の膨大な魔力を引き継いでいた。
そのため、アーシャ愛幸国の防衛結界を張り続けるという理不尽な契約で縛られてしまったのだ。
それが、ユキノアの祖先がアーシャ愛幸国で公爵家を興した始まりだ。
詳しい経緯を聞きたければ、この後にユキノアから直接聞いておくれ」
短編 「真実の愛ですか?おめでとうございます」
竜皇国王太子妃ユキノアのお話です。




