276 魔導適正考査 魔力技術試験
やがて、昼食休みが終わり、大きな声が会場に響いた。
「これより、午後の部『魔力技術試験』を開始する。全員、第一演習場へ集まれ!」
魔力技術試験では、まず最初に「基礎の型」を審査される。
三人が無駄のない綺麗な姿勢で、極めて精密に基礎の魔力回路を構築していく。周囲の平民や同じ受験生からは逆に
「型ばかりで威力が全然足りてないぞ!」
「真面目にやれよ!」と侮るような声が漏れた。
彼らは、その基礎の型がどれほど完璧に統御されているか真の恐ろしさに気づいていなかった。
試験会場には、本人の申告した構築できる魔法陣の数が頭上に現れる仕組みとなっていた。
そして、その場で放たれた魔術の構造を読み取り、数字が空中に映し出す構造となっていた。
次は受験生同士が戦う「実戦魔術試験」だった。
二箇所の対戦場所にフォルとジュストが其々の相手と向き合った。
「おい、貧乏人。『五十』なんて数字を嘘つくな!すぐに降参した方が身のためだぞ」
平民の対戦相手たちが口汚くののしるが、二人は冷ややかな視線を返すだけだった。
試合開始の合図と同時に、相手たちはいくつもの魔法陣を重ねて大きな術式を組み始めた。
だが、フォルとジュストは動じない。無駄な呪文をすべて省いた「短縮魔法陣」を瞬時に、わずか一、二の手数で展開した。
ドォン、と激しい音が響く。
相手が魔術を完成させるより早く、圧倒的な速さと威力の一撃が炸裂した。
平民の受験生たちは、何が起きたかも分からぬまま吹き飛ばされ、一瞬で勝負が決まった。
続いて、三男サンセールの番になった。
「おいおい、お前の頭上には『十五』の最低数字しか見えないが大丈夫なのか?よくそんな恥ずかしい数で試験を受けるなんて、なめられたものだな!」
相手は、サンセールの頭上に浮かぶ数字を見て、大声であざ笑った。
サンセールは、その言葉を静かに受け流した。
丁寧な呼吸で体内に魔力を循環させ、余分な力を抜く。 相手は「短縮魔法陣など、この田舎者にできるはずがない」と判断し、自分の強さが証明できる大きな術式で仕留めようと唱えはじめた。
だが、次の瞬間、サンセールの短縮魔法陣の「風圧」の完璧な一撃。
それが、相手の防御をすり抜けて胸元へ当たった。
「がはっ……!」 平民の男は、反撃の手を打つ暇さえなく、静かに崩れ落ちた。 「勝負あり!」の声が響く。
サンセールは、倒れた相手の手を優しく取り、丁寧な動作で起き上がらせた。
そして、凛とした佇まいで微笑んだ。
「私は、短縮魔法陣ができないとは一言も言っていませんよ」
礼儀正しく、そして圧倒的な器の大きさを見せたサンセールの姿に、会場の誰もが言葉を失い、深く息をのんだ。




