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転生したのでレアアイテム集めたい…えっヒロイン退場してしまいました  作者: 5H


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269/305

269 サンセールの記憶1

マクアリール公爵家に滞在し、過酷な教育を施されている竜皇国の第三王子サンセール。

血の滲むような修練の末、彼はようやく自らの膨大な魔力をさらに増大させ、それを制御する術を身につけた。

魔力の巡りが劇的に改善され、濁っていた頭が冴え渡り始めたその時、サンセールの胸中に奇妙な違和感が這い上がってきた。


(私は……何か、酷く重要なことを忘れてはいないか?)


記憶の奥底に、どうしても思い出せない空白がある。

その違和感を証明するかのように、サンセールは自らの魔力制御が向上したことで、ある一つの驚くべき事実に気がついた。

もちろん、ラルフ公爵様からは聞いていた。我ら三兄弟に何かあれば、国と国との問題に発展する可能性があるから護衛がついていますと。

マクアリール公爵家の敷地内、自らのすぐ近くに、公爵家の配下ではない強力な気配が潜んでいた。

かつての未熟な自分には分からなかったが、それは騎士団の面々とは全く違う体格と、立派な尻尾を持つ獣人たちであった。

何も分からなかった当時の自分が、今では酷く恥ずかしいが……。

初めて対面した時、その姿を侮るような態度と言葉遣いをしてしまい、思い出したくもないほどの洗礼を受け、真摯に謝罪した記憶が蘇る。

彼らは、獣人とその番が住まうリオンブラン王国出身の獣人たちであった。

なぜか彼らはいつもサンセールの近くにいて、中には色々な技を伝授してくる者さえいた。

その洗練された技を見るに、彼らは単なる警護ではなく、身分を隠して動く「隠密」であるとわかった。

とにかく物凄く強く、一生かかっても勝てそうにない底知れぬ恐ろしさがあった。

彼らは、公爵家の騎士団でさえ見分けることが難しいほどの、極めて高度な隠蔽術を誇っていた。

そして、技を使いながら、なぜかサンセールの身辺を影から守護していたのである。

日々の戦技訓練において、時々サンセールを完膚なきまでに叩きのめし、しごきを与えてくる臨時の指南役たちもいた。

彼らは黒の装束を纏い、顔を隠してはいるが、その圧倒的な体格と凶悪なまでの強さは、常人の枠を遥かに超えていた。

「おい、新参。まだ魔力の練り方が甘いぞ。遅すぎる!ほら武器を飛ばされたら魔術は使えん!

魔術ばかりに頼るな! 頭を使え!体を鍛えろ!いざとなったら逃げろ!身を隠せ!生き残れば勝ちなんだよ!」

容赦なく叩き込まれる一撃に、サンセールは何度も土を舐めた。何度となく行われた黒装束の者たちとの訓練だったが……

自分の魔術技術が上がり制御出来るようになってからは一人だった対戦相手が二人になり、複数で共闘で戦う訓練と変化していった。

激しい攻防の最中、不意に風が凪いだ。

至近距離で男の一人が放った魔弾とともに、サンセールの鼻腔を、ある独特な「甘い匂い」が貫いた。

その匂いを嗅いだ瞬間、サンセールの脳内で、分厚い氷が砕け散るような衝撃が走った。


(……思い、出した……!)


記憶が、一気に蘇る。

かつての自分は、愚かな獣人差別発言を番に聞かれ、あろうことか、まだ十歳の幼き獣人の女の子の腰へ、馴れ馴れしく手を回そうとしたのだ。

その瞬間、相手の女の子に吹き飛ばされた。

「弱い番など認めない」と……。

大罪に対し、蔑みの瞳で見られ、嫌われ拒絶された。そして、近くにおられた母親……リオンブラン王国のマリア王妃様の手によって、「忘却の魔法」をかけられたのであった。

すべては、自らの傲慢さと知識不足が招いた、愚行の報いだったのだ。


(ここでまた、失敗するわけにはいかない)


記憶を取り戻した衝撃の渦中にありながらも、サンセールは即座に心を立て直した。

不自然にならぬよう息を整え、すぐさま東大陸の言葉を用いた普段と変わらない口調へと切り替える。

さらに、他国の戦術書から知識を総動員し、リオンブラン王国の戦法における欠点や死角を狙う複数戦術へと切り替えた。

実戦形式の「旗取り訓練」において、一度も勝てなかった。その日初めて勝利を収めた。

指南役であった男たちは、良い笑顔を浮かべて対等な言葉で問いかけてきた。

「我らの敗因はどこにある?どうして戦術を変えた?」

しかし、今までの訓練で彼らから嫌というほど叩き込まれてきたのは、

「甘いわ! 隙を見せるな! 相手の技がすべてだと思うな! 己のすべてを見せるな、隠せ! 常に裏に何かあると考えろ!目を離すな!狙われているのだと常に警戒しろ!結界を解くな!」

だからこそ、サンセールは真っ直ぐに相手を見据えて返答した。

「簡単に明かしてしまっては、次は勝てませんのでお答えできません」

その正直な答えに、隠密たちは目を見張った。

「おぉ……。そうだ。正解だ。実によく努力して学んだな。我らも学び続けなければならない。大事なものは守れない。次は負けんぞ!」

男たちはそう言って力強く握手を交わし、いい笑顔で影へと消えていった。




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