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転生したのでレアアイテム集めたい…えっヒロイン退場してしまいました  作者: 5H


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258/261

258 ヴァリアードの特訓

マクアリール公爵家の演習場に足を運んだヴァリアードは、一人静かにサンセールの特訓を見つめていた。


(なるほど、非常に理にかなった泥臭い方法だ。あえて魔力を全開にさせ、本能で理解させているな。フッ……懐かしい)


しかし、次の瞬間。サンセールの体内から溢れ出たのは、これまでとは比較にならないほど不気味で濃密な魔力だった。

急激な魔力の成長に肉体が悲鳴を上げ、完全に制御を失ったのだ。

「……ああぁっ……暴走だ!!!」

騎士団長の鋭い怒号が響く。だが、フォルとジュストはサンセールのそばを離れなかった。

不気味に膨れ上がった光の球体は、すでに演習場の結界ごと周囲を丸ごと呑み込もうとしている。

騎士たちの頑強な盾の陣形をしても、この規模の暴走を受け止めきればただでは済まない。

「やれやれ……。若き古竜種の全力は凄いな。今はまだ荷が重いか? いや……やれるだろう。本気なら」

それまで微動だにしなかったヴァリアードが、静かに一歩を踏み出した。

次の瞬間、演習場全体の空気が、一瞬で凍りついたかのように重圧に支配される。

「あぁ……ヴァリアードだ! 助けに来たのか、それともまた俺たちの実力を試す気か!? どちらなんだ、ヴァリアード!!!!」

騎士団長の絶叫が響く中、ヴァリアードは一瞬でフォルの背後へと転移した。

そして、両手をその肩に置き、耳元で静かに伝える。「フォルなら必ず出来る。自分を信じろ。お前も巨大な器を持つ古竜種だ。冷静にサンセールの魔力を包み込め」

フォルが暴走する巨大な光の渦に向けて、ただ静かに右手をかざした。

「最大結界障壁!」

フォルの魔術回路が、漆黒の障壁がゆっくりと、しかし確実に編み上げられていく。フォルを軸にして、サンセールの狂える光の渦を全方位から包み込んでいく。

騎士団の盾をも容易く弾き飛ばすはずだった破壊の波動が、その漆黒の壁にぶつかり、霧散するように強制的にゆっくり押さえ込まれていくように見えた。

「な……ッ!?」息を呑む騎士たちを守るように立つフォルの肩から、ヴァリアードはそっと手を離した。そして、自身の穏やかな魔力を、あえて少量だけフォルの体内に流し込む。

「フォル。私の魔力の波に合わせなさい。サンセールの暴れる力を外から押し込めるのではない。

フォルの内側の自分の核へ、深く深く沈める感覚だ」

その導きに応じるように、サンセールも充血していた瞳が、徐々に静寂を湛えた冷静な瞳へと戻っていく。それは、凄まじい魔力に自分自身で打ち勝った瞬間だった。

同時にフォルもその光の渦のすべてを受け止め、自分自身の核を覚醒させた。

巨大な魔力を受け止めるだけの「器」が、自分にはあるのだと気がついた瞬間だった。

短期間で莫大な魔力を手なづける唯一の荒療治。だが、その最後の仕上げには、やはりこれだけの『壁』が必要だったのだ。

ヴァリアードの介入により、サンセールの放つ魔力の波形は、今度こそ完全に安定し始めていた。

しかし、ヴァリアードの特訓はここで終わらない。

「まだいけるぞ、ジュスト。お前の魔力をサンセールに当てて制御を覚えさせろ。お前自身も自分の中の核を最大限に使い、強弱の練習をするんだ。古竜種の器を信じろ。やりすぎたら体内の核に沈めればいい。恐れるな! こんなこと、本には書いていないぞ。お前が誰にでも分かる言葉で論文を書けば一発卒院だ!経費削減になって良かったな!」

さらに、ヴァリアードは騎士団の方へと視線を向けた。

「オイオイ……騎士団。盾の陣形が安心して弱くなったぞ。眠くなったのか? 若い古竜種に負けるな。

数で打ち勝て! 二人ずつ休め。交代しながらやるんだ。魔力量を増大させる絶好の機会だ、感謝しろよ。かつての楽しい訓練を思い出したか?」


(もう……結構です。早く終わらせて……お願いだから……!)


騎士団全員が心の中でそう叫びたかったが、声を殺して堪えた。

「負けてたまるか」と必死に喰らいついていく。


「おぉ……。サンセールが限界だな。……よし、明日も明後日もやるぞ。皆、しっかり食べ眠るんだぞ。楽しい時間になりそうだ」

ヴァリアードが右手を胸の高さまで伸ばし、横へスッと、はらった。

その瞬間、演習場を覆っていたすべての暴走魔力と漆黒の障壁が、まるで幻だったかのように跡形もなく消滅した。

同時に、その場にいた全員が糸が切れたように地面へ倒れ込んだ。

三王子も騎士たちも、意識こそあれど、指一本すら動かすことができない。

呼吸を整えることすらままならず、ただ荒い息を吐き出すのが精一杯だった。

そんな泥まみれの中を、ヴァリアードだけが衣服ひとつ汚さず、軽やかな足取りで歩いていく。

誰もが動けない体で、遠ざかっていくその後ろ姿へ、一斉に怨み辛みの籠った視線を向けた。

だが、当の本人はそんな視線などどこ吹く風で、鼻歌でも歌い出しそうなほど上機嫌に演習場を後にするのだった。

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