255 お祖父上様 お祖母上様へのご報告
ルノアは今日、ラド様と福ちゃんと一緒に食事とお茶菓子を携えて、タスワンズ湖にお祖父上様とお祖母上様に会いに行っていた。
お父様から念話が入り、昼食後に大広間でフォル殿下から重大なお話があると聞かされた。
タスワンズ湖に到着すると、お二人の前でルノアはすぐに自身の映像魔法を展開した。
映し出されたのは、マクアリール公爵家の大広間で、覚悟を決めて国王陛下の親書を読み上げるフォル殿下の姿。そして、その音声も映像と同時に鮮明に流れ始めた。
こうしてタスワンズ湖にいながらも、お祖父上様とお祖母上様に三殿下の様子を見ていただくことができた。
画面の横に映るジュスト殿下とサンセール殿下の姿を、お祖父上様とお祖母上様は本当に愛おしそうな表情で見つめていた。
「ルノアの無詠唱…映像魔法は……本来は繋がるはずのない別々の魔法同士を、こうもうまく連携させているところが実に見事だな。我にも真似できるだろうか?」
「フォール……。高度な魔術も素晴らしいですが、今は曾孫たちのあの強い決意の宣言の方が、心配ではないのですか?」
「ああ……すまない。つい魔術の仕組みに夢中になってしまった。
だが、私はあの子たちのことを一切心配してはおらんよ。なぜなら、あの強い眼差しは本気のものだからだ。それだけは疑いたくないし、必ずやり遂げると信じたい。
もう、余分な言葉は必要ない。マクアリール公爵家の皆様に『よろしく頼む』とだけ伝えておくれ」
フォール様はそう言うと、少し寂しそうに微笑んだ。
「私たちはいまだ、あの子たちとの直接の交流を許されてはおらん身だからな……。彼らの邪魔になってはいけない。今はただ、見守り、信じて待つしかないのだ。あの子たちは、もう平民の皆様に頭を下げた。自分たちの世界がいかに狭かったかを、しっかりと理解できている。それに、あの子たちの周りには妖精様たちもついておられた。ありがたいことだ。
自然を大切にすることも学べたのだな。市井に出て、平民の皆様と一緒に仕事を叩き込んでもらうことも必要な経験だ。
きっとリアムがやってきたことを、あの子たちもやり遂げるだろう。
大丈夫だ。……クロリナラド、お前も市井での経験をしたのか?」
「はい。厳しいと言うよりは……大変楽しかったですね。自分自身、王城で暮らすよりも市井で暮らす方が向いているのではないか? と思ったほどでした。お祖父上も?」
「私は『丁稚奉公』というやつでね……かなり苦しかった。ずいぶんと鍛えられたし、本当によく怒られた。でも悔しくてな……絶対に這い上がってやろうという気持ちになったのだ。そこでマールとも出会えたしな……。今でも可愛いが、当時は本当によく買い物に来てくれて。本当に可愛らしかったし、ありがたかった」クロリナラドはお祖父様の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「……お祖父上。実は、他にもご報告があるのです。……ヤヌス殿の件なのですが…お祖父上だけにすべてお見せするようにと言われて来ましたが……」
クロリナラドが少し躊躇うように言葉を濁すと、お祖母様が静かに割って入った。
「いいえ……。私もしっかりと見ます。私の罪ですから……」
「……分かりました」クロリナラドが映像魔法を操作する。映し出されたのは謁見室の光景だった。
ヤヌスが「…山から帰ってこなくなり……やっと自由…」と言い放ったその瞬間、お祖母様はきつく目を瞑った。
すかさずお祖父様がその肩を抱き寄せ、自身の怒りに暴走しかけた魔力を、深く息を吐き出すことでどうにか整えた。
陛下や王太子から下された厳罰の沙汰を聞き、お祖母上の言葉を伝えてヤヌスが退場するまでの一連の顛末を、二人はじっと見届けた。
「リアムに、申し訳なかったと伝えてください。私から何かを話せる立場ではありません。……クロリナラド、ルノア、今日は本当にありがとう。またゆっくり遊びに来てください。……少し、湖を見てまいりますね」お祖母様はそう静かに告げると、スッと転移魔法でその場を去った。
「我が追おう。リアムによろしく伝えてくれ。今日はありがとう。またいつでも遊びに来なさい。……曾孫たちのこと、よろしく頼む」お祖父様も一瞬で姿を消し、後を追っていった。
「ノア…大丈夫だ。…お二人できっと乗り越えて…信じて待つだろうから…心配するな。」そっと頭を撫でた。
福ちゃんが言った。
「フォールとマールにとってタスワンズ湖が癒しの場所に必ずなるからね。また来ようね。美味しい食べ物を持って…。時間が解決してくれるから。ルノア、クロリナラド。」




