253 竜皇国第一王子の言葉
マクアリール公爵家の大広間に案内されたフォルは驚きを隠せなかった。ラルフが声をかけた。
「あぁ…。驚かれていますね。全員の集合などルノアの時以来です。私達公爵家は大きな家族ですからね…。素性を話せない者など公爵家にはいないのですよ。」ラルフが軽やかに笑った。
ラルフをはじめとする従者と、騎士団の面々が集まっていた。
その中央に進み出たフォルは、手にした一枚の書簡を広げ、室内に響き渡る声で朗読し始めた。
それは、竜皇国国王様からの親書であった。
お前たちの実力は王族として不適格であること。
国民の血税を留学費用には使えないこと。
そして、来月の『魔導適性考査』に三兄弟全員で合格しなければ、留学はすべて見送るということ。
最後まで読み終えると、フォルは静かに手紙を閉じ、集まった一同へ向けて深く、深く頭を下げた。
竜皇国の第一王子という最高位の身分にある者が、一介の使用人に至るまで腰を低くする姿に、大広間全体が息を呑んだ。
「皆も聞いての通りだ。私たちは特権に溺れ、学びを怠ってきた。だが、三人揃って合格し、必ずヨーリアン帝国へ行く。そのために、皆の力を貸してほしい」
フォルは頭を上げ、真摯な瞳で一同を見つめた。
「まず、ラルフ殿、そして従者の皆様にお願いがある。今日この時を限りに、私たちの前では二度と、我が国の言葉を使わないでいただきたい。
皆様の出身国や、得意な四カ国語の言語だけで私たちに話しかけてほしい。
生活のすべてを、強制的な言語漬けの環境にしたい。」
ラルフは驚きに目を見張ったが、王子の本気の覚悟を察し、すぐに右手掌を左胸に手を当てて一礼した。
「畏まりました。フォル殿下。ここにいないものにも通達いたします。」
続いてフォルは、腕を組んで待機していた騎士団の面々に向き直った。
「そして騎士団の皆様。三男のサンセールは、毎日魔力が枯渇するまで特訓を重ね、魔力量を格段に増やしている。だが、急激に増えた魔力をコントロールできず、周囲に多大な迷惑をかけているのが現状だ。
どうすれば、この短期間で彼の魔力の制御、魔術技術を学院の合格まで引き上げられるか、卒院者である皆様の目から見た合格対策をお願いしたい。」
騎士団長は不敵に笑い、一歩前に出た。
「平民を侮らず、我ら騎士団に教えを請うたこと、見事でございます。
サンセール殿下は無理に魔力を小さく制御しようとするから反動がデカい。
ならば、我が騎士団が盾の陣形を組み、『全力の暴走魔力』を正面から受け止めます。
限界までぶつけ合って体で出力を覚える。これこそが、一番速い我が騎士団の対策です。
小さい頃から遊びに来ていたヴァリアード様やエミリア様、我が当主のラルフ様もルノア様も魔力制御には苦労なさった。
そのおかげで私達騎士団も対応出来るようにと強くなりました。竜皇国の皆様のおかげで私達もまた鍛錬し強くなる機会をいただけたと感謝いたします。」
「ありがとう…ございます。」フォルは拳を握りしめ、力強く頷いた。
ジュストの学習対策、騎士団の魔術技能対策、そして従者たちの言語対策。マクアリール公爵家はひとつの使命を帯びた集団となった。




