252 三兄弟の話し合い
竜皇国王様からの親書を読み終えた瞬間、マクアリール公爵家の一室は、かつてない静寂と緊迫感に包まれた。
そっとフォルがサンセールに近付き、その肩を抱いた。
「まず、椅子に座って話そう。ラルフ様、申し訳ありませんが、ここからは三人だけにしていただけませんか?
その後、公爵家に仕える私達の素性を話せる従者の皆様とお話をしたいのです。皆様のお昼食の後、少しお時間をいただけないでしょうか?
突然不躾なお願いをしてしまい申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします」長男であるフォルは、そう言って静かに頭を下げた。
「…はい。畏まりました。では、こちらに軽食とお飲み物をお持ちいたします」
ラルフは恭しく一礼し、静かに退室していった。
扉が閉まると、フォルは二人の弟に向き直った。
「ジュスト。私たちに何が不足しているのか、その分析と具体的な対策を簡潔に伝えてくれ。
サンセール。嘆いている時間はないんだ。私たちはやらなければならない。それだけだ。……そうだろ、ジュスト」
ジュストは、今までにない兄フォルの力強い魔力と言葉を感じ、その恐ろしいほどに冷静で冷めた瞳を見つめた。
「あぁ…その通りだ。…まずは私自身、怒りを抑えて話すことを学ばなければならないな。
サンセール。今まで怖がらせてばかりで悪かった。
私たち上の二人は、言語の習得、学問、魔術、礼儀作法のすべてにおいて、一応は合格点を貰っている。
お前は礼儀作法こそ合格しているが、竜皇国語以外の四言語の習得、特に世界史と竜皇国史の成績が著しく悪い。
それに、魔力は増大したが、コントロールが全くできていないな。未習得の魔術も多すぎる。
だが、時間がない。過去問は私がすべて読み込み、合格することだけを目的とした『対策重点問題集』を今日中に作り上げる。
満点を目指す必要はない。最低限の合格点数を毟り取るんだ。ただし、これからの隙間時間は休むためのものではない。
覚えたことを忘れないよう、常に世界史と竜皇国史の本を持ち歩き、1ページでもいいから開き続けろ。それだけでいい。
魔術に関して言えば、今の私たちには協力者と環境が必要だ。公爵家の騎士団の皆様に、教えを乞うた方が良いだろう。
平民でありながら、学院を飛び級で卒院された方ばかりだ。平民だからと侮るなど……私たちは世界を知らなすぎた。合格に何が必要か、魔術技能の確認と対策は、卒院生である彼らにお願いするのが一番確実だ。
サンセール。お前には何が足りないか。今ここで、自分の頭で考え、言葉にしてくれ。」
サンセールは拳をぎゅっと握りしめて、二人の兄を真っ直ぐに見つめた。
「兄上。私に足りないものは……竜皇国語以外の四言語の習得、未習得の魔術技術、そして、魔力をコントロールする力と知識です。自分の武器でもある魔力量を、毎日気絶するまで、限界まで増やし続けます。
その上で、暴走する魔力をコントロールできるようになってみせます。
騎士団の皆さんに厳しく指導をお願いし、体でその出力を覚えるしかありません。私はこれから、すべての時間を合格への努力に捧げます。
兄上たちや祖父母上様、そして父上や母上を、これ以上がっかりさせたくない。何より……私は兄上たちと一緒に、ヨーリアン帝国の学院へ行ってもっと強くなりたい。学びたいんです!
私のせいで、兄上たちの未来を……いいえ、自分自身の将来を閉ざすわけにはいきません。
やるしかない。皆様に多大な迷惑をかけますが、どうかよろしくお願いします!」
サンセールは、床につくほど深く頭を下げた。




