249 ナダルノ侯爵家 選別の戦い
リアムは視線を鋭くし、三兄弟の今後について言葉を続けた。
「ただ、三兄弟に関しては、ヨーリアン帝国の学院を途中退学にならないだけの結界の知識と学習、そして全五か国語の習得だけは必須だ。
詰め込めるだけ詰め込んでほしい。また、警護と費用の関係上、三人揃わなければヨーリアンの学院には入学できないことも本人たちに伝えてくれ。
その上で、彼らがどう動くか、どう考えるか。相手を思いやることができるか。
フォル、ジュストの確認、そしてサンセールの持つ嫉妬や怠惰や感情を抑えることができるか。
……彼らがそこから逃げるのか、逃げないのかを確かめてほしい」
そこまで言うと、リアムの表情が少しだけ和らいだ。「私も、ルディノールも、クロリナラドも、いつも養育係や教育係にその本質を確認されていたそうだ。
当時は知らなかったがね……。
私たちは全員、鉄拳制裁や説教、つまり『問いによる攻撃』を山ほど受けて育った。
『どうしてそう考えましたか?』
『どうしてこの結果になったのか、自分でわかりますか?』
『相手はどう思ったか、想像がつきますか?』
『殿下が同じことをされても大丈夫ですか?』
『どうしたら、この問題は起きませんでしたか?』
ああ……思い出すだけで、今でも時々夢に見るよ。
正しい答えに辿り着くまで、徹底的に考えさせられた。……今となっては、いい思い出だがね」
リアムとルディノールは、互いに顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。
その一連の会話を静かに聞いていたヴァリアードが、二人に問いかけた。
「――その養育係と教育係は、いつから、誰が務めるのですか?」
「実は、代々王族の教育係兼執事長を務めるのはナダルノ侯爵家と決まっていてな。
『誰がその任に就くか』ということに関しては、王族も一切干渉できない慣習になっているのだ。
……セバス、いつ頃になりそうだ?」
話を振られたセバスは、一歩前に出て頭を下げた。
「ナダルノ侯爵家にて行われておりました、候補者たちによる選別の戦いが先ほど終了いたしました。
かなりの激戦だったと聞き及んでおります。
……そして、その苛烈な試練を乗り越え、上位三名を勝ち取りましたのは、私の不肖の息子たちでございます。
一位に長男、二位に次男、三位に三男と、三兄弟で独占する結果に決定いたしました。
ルディノール様のお子様方の教育係となることを一度は閉ざされた道。
絶望したあと、いつか必要になった時に備えて血の滲むような努力を重ねてきた息子たちの執念が、ここでようやく結実いたしました。
親としても、一人の執事としても、安堵の念に堪えません」
セバスは一度言葉を切り、見つめ直した。
「彼らの負った怪我を治療し終えてからとなりますので、三日ほどでマクアリール公爵家の方へお伺いできるかと存じます。
……手加減など一切せぬよう、厳しく言い含めて送ります」
セバスの誇りと決意に満ちた報告に、一同の間に新たな緊張と期待の空気が流れた。




