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転生したのでレアアイテム集めたい…えっヒロイン退場してしまいました  作者: 5H


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2 ルノアが知る悪徳令嬢と魔法色

物語の中で、ルノアは意地悪な悪役令嬢だった。


母エミリアは、ルノアが六歳のときに亡くなった。


それ以来、父親から重すぎるほどの愛情を一身に受けて育った。


欲しい物は、何でも手に入った。


ドレスも、宝石も、お菓子も。


欲しいと言えば、父は必ず用意してくれた。


そんなルノアにとって、唯一手に入らなかったもの。


それが、サリド殿下だった。


初めて、自分の望み通りにならない相手だった。


なぜ自分が拒絶されるのか、ルノアには分からなかった。


だからこそ、当たり前のように主人公であるアテリアナ伯爵家次女、マリナの排除へと動き始める。


しかし、マリナには数多くの運命の相手候補がいた。


ルノアがマリナを排除しようとするたび、彼らが問題を解決していく。


何をしても、何を企んでも、ことごとく失敗する。


そして最後には、必ず同じ結末を迎える。


――国境にある魔界の森へ捨てられる。


マリナが誰を運命の相手に選んでも、ルノアの結末だけは変わらない。


魔界の森に捨てられ、魔物に襲われて命を落とす。


「……うん。魔物に食べられて終わりなんて、冗談じゃない」


前世の記憶を取り戻したルノアは、そう思った。


だから、とにかく目立たないようにする。


今日のお茶会では、サリド殿下にも近づかない。


マリナにも関わらない。


余計なことは何もせず、静かに時間をやり過ごした。


そして、お茶会が終わり、家へ帰ると――。


「お父様。少し、お話があります」


ルノアは父にそう告げ、人払いをお願いした。


部屋から使用人たちが退出する。


二人きりになったところで、ルノアは改めて父を見上げた。


「お父様。お話が漏れないように、結界を張ってくださいませ」


父は驚いたように目を見開いた。


「……なぜ、私が結界を張れると気づいたのか、教えてくれるかい?」


そう尋ねる声は、いつもと変わらず優しかった。


ルノアは少し考えてから、答えた。


「お父様が帰ってくるのを、私はいつも待っていますよね?」


「ああ」


「なのに、お父様が帰ってきたことに、私が朝まで気づかないのは、おかしいと思っていたの」


父は黙って、ルノアの話を聞いている。


「今日のお茶会で、お父様が騎士団長様とお話ししていたでしょう?」


「ああ」


「そのとき、急にお父様の周りが薄く光って見えたの」


ルノアは、そのときの光景を思い出しながら話す。


「だから、お父様は結界か……何かの魔法を使っているのかなって思ったの」


すると父は、ぱっと表情を明るくした。


「正解!」


嬉しそうに手を叩くと、ルノアの頭を優しく撫でる。


そして、父は実際に結界を張った。


薄い光が部屋全体を包み込んでいく。


結界が完成したのを確認すると、父はルノアを見つめた。


「ルノア。今日、私以外にも光っていた人は、たくさんいたのかい?」


「はい」


ルノアは頷いた。


「王妃様と、サリド殿下と、ライド殿下。それから護衛の方々は、ほとんど色がついていました」


父の表情が、わずかに変わる。


「参加者の中では、アテリアナ伯爵家のマリナ様だけです」


「マリナ嬢は、どんな色だった?」


「初めて見る色でした。濃い桃色です」


ルノアは少し考えてから、続けた。


「それと、大人の貴族の方はお名前が分かりませんが、黒と紫色をしている人がいました」


「……黒と紫?」


「はい。なんだか怖かったです」


父の眉間に、深い皺が寄った。


しばらく沈黙したあと、父が静かに尋ねる。


「ルノア。色が見えるようになったのは、いつからだい?」


「今朝です」


「なぜ、お父様に教えてくれなかった?」


「朝、侍女に起こされたときに、紫色の靄が近づいてきたの」


ルノアは思い出しながら話す。


「そのとき、初めて気持ち悪いって思ったの」


父は黙って聞いている。


「前から、侍女が時々、黒い靄みたいなものを出しているように見えることがあったの。見えたり、見えなかったりして……」


ルノアは首を傾げた。


「お父様は、侍女のアンナと結婚するの?」


「……は?」


父の動きが止まった。


「アンナが、『私が相応しいとお父様に言え』って、いつも紫色の何かを飛ばしてくるの」


ルノアは困ったように眉を下げた。


「よく分からなかったから、お父様に聞こうと思っていたの。だから、今お話ししました」


父の表情から、笑みが消えた。


それでも声は穏やかだった。


「ルノア。お父様は、天に還ったお前の母、エミリアを今も愛している」


「……はい」


「だから、他の誰とも結婚するつもりはない。何と言われても結婚しないから、安心しなさい」


父はそう言って、ルノアの頭をもう一度優しく撫でた。


そして、少しだけ真剣な表情になる。


「それと、これから話すことは、とても大事なことだ」


「はい」


「お父様と約束してくれるかい?」


「何をですか?」


「誰にも話さないと」


ルノアは、真剣な父の顔を見つめた。


「魔法を使ったときに、その魔法の色が見える人。そして、誰がその魔法を使っているのかまで分かる人はね……」


父は、一度言葉を切った。


「今、この世界には一人しかいない」


「一人……?」


「魔塔の長、ヴァリアード様だ」


ルノアは驚いて目を見開いた。


「ヴァリアード様は、エミリア……お母様のお兄様なんだ」


「お母様の……?」


「ああ」


父は静かに頷いた。


「とても貴重な魔法なんだ。だから、この力がルノアにあると知られたら、ルノアの自由はなくなってしまう」


「自由が……?」


「最悪の場合、王命によって王族との婚姻を命じられる危険さえある」


父の声は、いつになく真剣だった。


「分かるかい?」


ルノアは、しっかりと頷いた。


「はい。分かりました、お父様」


そして、まっすぐ父を見つめる。


「誰にも話さないと、お約束します」


本来のルノアは、自分に何ができるのかも、この力がどれほど重大なものなのかも知らなかった。


父も多忙だった。


そのため、二人がゆっくり話す機会は、なかなか訪れなかった。


そして結局、ルノアは自分の力を理解することもできないまま、物語の結末へと進んでいった。


――魔界の森END。


けれど、今のルノアは違う。


前世の記憶を取り戻した。


そして、これから起こることも知っている。


「……絶対に、あんな結末にはならない」


ルノアは、心の中で静かに決意した。


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