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転生したのでレアアイテム集めたい…えっヒロイン退場してしまいました  作者: 5H


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18/452

18 ヴァリー伯父様と白ちゃん

 午後になり、ヴァリー伯父様が私の部屋へ転移してきた。


「……え?」


「……あ」


 私も福ちゃんも、突然現れた伯父様に驚いて固まった。


 いきなり部屋の中に現れるなんて、完全にお父様への相談案件だ。


「伯父様!」


「ん?」


「女の子の部屋に、ノックもせずに入ってきてはいけません!」


「……」


「お父様に相談しますからね。ちゃんと怒られてください。私は味方しませんよ。いいですね?」


「いや、それは……」


「今は福ちゃんのブラッシングの時間です!」


 私は福ちゃんの毛を整えながら、ジト目で伯父様を見た。


 すると伯父様は、福ちゃんへ恨めしそうな視線を向ける。


「あぁ……福。そんな嫌そうな顔するなよ。

 俺だってルノアに会いたかったんだぞ。

 お前、いつもルノアから魔力をもらってるから、もう魔力タンクみたいになってるんじゃないか?」


 すると福ちゃんが、明らかに不満そうな顔をした。


「なんだと? 『大きなお世話だ』って?」


 伯父様が福ちゃんの表情を勝手に通訳する。


「生意気なんだよ。使役の分際で!」


「……伯父様」


 私はじーっと伯父様を見つめた。


「お父様から言われているんですよ。


 福ちゃんのことは妹として、家族として、大切にしなさいって。

 だから『使役』なんて言わないでください」


「……はい」


「それに……」


 私は少しだけ唇を尖らせる。


「白ちゃんも使役なんですか?

 もう私たち、お友達になったのに……」


 わざと悲しそうな顔をしてみせた。


「あぁ……」


 伯父様が頭を抱えた。


「やっぱりルノアが名前をつけたのか?」


「……?」


「そうか。ルノアだったんだな!」


「どういうことですか?」


「いや、そうだと思っていたんだ。

 あの魔鳥、全然消えなくなったし、魔空間にも入りたがらない。

 一日中ピーチクパーチクうるさいんだぞ。

 仕事中くらい静かにしろって言ってくれ。

 俺の言うことなんて、まったく聞かないんだから」


「……」


 やっぱり。あの時、頭の中に聞こえた、


『名前をつけて!』 という声。

 あれは、白ちゃんが私に名前をつけてほしいと伝えていたのだ。

 私が「白ちゃん」と呼んだことで、本当に名付けになったらしい。


「白ちゃん……」

私が呼ぶと、白ちゃんは嬉しそうに近づいてきた。

そして、私の腿に顎を乗せる。


「撫でてほしいの?」


頭からゆっくり撫でてあげると、白ちゃんは気持ちよさそうに目を細めた。


「白ちゃん。

 お便りのお仕事がない時は、伯父様の魔空間で休んでくださいね。

 お便りを届ける時は、気をつけて来てください。

 私はここで待っていますから」


 そう言いながら頭を撫で続ける。

 白ちゃんは嬉しそうに身体を震わせると、ヴァリー伯父様の魔空間へ入っていった。


「……ちゃんと俺のところには帰ってくるんだな」


 伯父様が少し複雑そうな顔をする。


「福も魔空間に入るのか?」


「福ちゃんは、全然入らないんです」


 私は福ちゃんを見る。


「体調とか、大丈夫なんでしょうか?」


「問題ないと思うぞ」


「それに……福ちゃん、伯父様とは会話していますよね?」


「ああ」


「私はまだ、福ちゃんと話せないんです。

 どうしてでしょうか?」


「ルノア」


「……え?」


 頭の中に、突然、伯父様の声が響いた。


「えっ……今の……」


 私は思わず声に出してしまう。


「どうやっているんですか?」


「念話だよ。

 これも結局はイメージだ。

 声を出す必要はない。

 私の瞳の奥へ声を届けるようなつもりで、優しく話しかけてごらん」


「……はい」


 私は伯父様の目を見る。


「ヴァリー伯父様」


「そうだ。それでいい」


 伯父様は笑って、私の頭を優しく撫でた。


「上手にできたな」


「……!」


 初めて、自分の声を頭の中だけで届けられた。


「じゃあ、福にもやってみよう」


「はい」


 私は福ちゃんのほうを向いた。


 そして、声には出さず、心の中で優しく語りかける。


『福ちゃん、大丈夫ですか?』


『どこか苦しかったり、不快なところはありませんか?』


 すると――。


『ルノア~!』


「……!」


『ようやく話せた~!』


 頭の中に、嬉しそうな福ちゃんの声が響いた。


『いつも優しくしてくれてありがとう。

 大好き、ルノア』


「福ちゃん……!」


『それから、お父様を呼びましたからね。もうすぐ来ますよ』


「え?」


 その瞬間――。


「ヴァリー様!!!!」


 廊下から、お父様の大きな声が響いた。


「……!」

扉が勢いよく開く。


「どういうことですか!?」


 お父様は、伯父様を見るなり眉を吊り上げた。


「ちゃんと馬車で来てくださいと話しましたよね?」


「いや、それは……」


「ルノアの部屋に勝手に転移して入ったというのは、どういうことですか?

 もし着替えていたら、どうするんです!?」


「……」


「入室するときは、きちんとマナーを守ってください。

 今後、ルノアの部屋への転移は禁止にしますよ」


 お父様はそう言うと、魔力を一気に放った。


「結界!」


 部屋の周囲に、強固な結界が展開される。


「うわぁぁ……ラルフ、張ったなぁ!」


 伯父様が頭を抱えた。


「結界まで張るか!? 面倒くさいやつだな!」


「当然でしょう!」


「なんで国境の辺境伯領以上の強度があるんだよ!」


「必要だからです」


「個人の部屋にそんな結界を張るなよ!」


「必要です」


「お前、本当に宰相なんか辞めて、魔術師団長でもやれよ!」


「余計なお世話です!」


 二人のやり取りを見ていると、不思議と可笑しくなってくる。


 さっきまで怒っていたはずのお父様も、いつの間にか伯父様と昔のような口調になっていた。


 どうやら二人は、こうして顔を合わせると、自然と幼馴染の頃に戻ってしまうらしい。


 伯父様は三人の中で一番年上だった。


 それなのに、一番子供っぽかったらしい。


「本当に大変だったんだぞ」


 お父様が、少し呆れたように笑う。


「ヴァリーは昔からこうだった」


「おい、余計なことを言うな」


「お母様も一緒になって、三人で悪戯をして……」


「ラルフ!」


「そのたびに三人そろって怒られていたんだ」


「だから、その話はするなって!」


 伯父様が慌てて止めようとする。


 私は思わず笑ってしまった。


「もっと聞きたいです」


「ルノアまで!」


 その後も、三人で悪戯をしては罰を受けたことや、お母様と一緒に叱られたこと。

 そんな昔の話を、二人は楽しそうに話してくれた。

 私はその話を聞きながら、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。

 こんな穏やかな時間を過ごせることが、嬉しかった。

 前世の私は、ゲームくらいしか楽しみがなかった。

 毎日を一人で過ごして、誰かと食卓を囲むこともなかった。

 一日の終わりに、「今日はこんなことがあった」と話す相手もいなかった。


 でも、今は違う。

 私には、お父様がいる。

 福ちゃんもいる。

 ヴァリー伯父様もいて、お母様の思い出も、こうして聞くことができる。

 毎日、家族と食卓を囲んで。

 特別なことなんて何もない、他愛のない話をする。

 そんな当たり前の日常が――。

 こんなにも幸せなものだったなんて。

 私は、目の前で言い合いを続ける二人を見ながら、そっと笑った。


 この穏やかな時間を、ずっと大切にしたい。


 そう、心の中で噛み締めていた。


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