100 臨時世界魔法会議報告を全世界に
臨時世界魔法会議の翌日。
今回の会議で初めての試みとして、会議の内容が映像と同時通訳によって全世界へ公開された。
映像には、魔術協会の長と精霊協会の長が並んで立っていた。
「魔術協会と精霊協会は、互いの領域を干渉せず、不可侵を原則とする。
しかし、世界の安定と未来のため、必要な情報を共有し、協力していくことをここに宣言する。」
二人はそう告げると、今回の臨時世界魔法会議で話し合われた内容を、隠すことなく全て公表した。
精霊王様の愛し子様が語った言葉も、竜皇国国王様が伝えた内容も、同時に全世界へ届けられた。
これまで当たり前だと思われていた自然が、決して当たり前のものではないこと。
精霊様や妖精様が土地を離れた場合、大規模な自然崩壊が起こる可能性があること。
そして、それは魔法では止めることができないこと。
世界中の民が、初めて知る事実だった。
続いて、精霊協会の長が前へ進み出た。
「皆様に、改めてお伝えする。エルフは、お伽噺の中にだけ存在する種族ではない。皆と同じ世界に生き、精霊様と共に暮らす存在だ。」
その言葉に、多くの民が息を呑んだ。
さらに、精霊様や妖精様を傷つけた今回の出来事について、厳しい言葉が続いた。
「今回のようなことが再び起これば、二度目はありません。我々は精霊と妖精と共に、この世界から去ることを選択する。」
そして最後に、強い口調で告げた。
「竜皇国と同じく、エルフの里も永久に不可侵、不干渉だ。そのことを、決して忘れることがないように後世に伝えよ。」
続いて、竜神様からの神託を受けた神官長が話し始めた。
「スタンピードは、竜神様でさえ管理することのできない自然の摂理です。
いつ、どこで突然発生しても不思議ではありません
各国に対し、日頃から十分な備えと対策を怠らないように」伝えた。
「そして、当たり前のことですが、自然と精霊様や妖精様を大切にし、竜神様に感謝する心を忘れずに生活してください」
神官長は静かに見渡した。
「此度のような愚かな過ちを、二度と繰り返してはなりません。
この出来事を後世へ語り継ぎ、誠実に、真摯に生きてください」
そう言って、神官長は話を終えた。
全世界の民は、映像という新たな記憶魔法と、同時通訳によって頭の中へ直接響くように伝えられる言葉を驚きながらも聞いた。
多くの者にとって、それはこれまで経験したことのない恐ろしい体験だった。
そして、絵本や古い物語の中でしか見たことがなかったエルフが、実際にこの世界に存在していることにも大きな衝撃を受けた。
同時に、人々の胸には不安が広がった。
これから、自分たちの生活はどうなってしまうのか。
自然は本当に崩壊するのか。
精霊様や妖精様が去ってしまった土地は、どうなってしまうのか。
誰も、その答えを知ることはできなかった。
しかし、それから一ヶ月後。
世界中の民は、言葉だけでは理解できなかった
「自然の崩壊」と「精霊王様の怒り」が、どれほど恐ろしいものだったのかを、身をもって知ることになる。
目の前で変わり果てていく大地を見ながら、多くの者は自分たちの犯した過ちと向き合うしかなかった。
そして、ようやく理解した。
自分たちが自然を支配して生きているのではない。
自然と精霊様や妖精様に守られ、支えられながら、生かされているのだと。
その事実を知った人々は、自らの愚かさを深く反省するのだった。




