第85章 盗賊
カズマサ『次期魔王であるフィディオにクーデターを起こされ討たれる…そんなプランもありかなと思っているよ…』
ジャック『あくまで着地点は変わらないのか…』
カズマサ『あぁ…』
イオリが討伐を放棄した場合のプランを語るカズマサ
フィディオ以外にもホルスやアサミによる討伐も検討されており
それを聞いたイオリは抱いた疑問をそのまま彼にぶつけた。
イオリ『その話…みんなは同意してるの…?』
カズマサ『同意してくれたのは麻美ちゃんだけかな…フィディオは他に相応しい人が居ないならと言ってくれたが実際に覚悟は出来てないだろう…』
イオリ『そう…』
カズマサ『イオリ…それでも俺は…お前に討伐されるのが1番だと思ってるけどな…』
イオリの問いに答えたカズマサはそのまま彼女に自らの想いをぶつけ
それは彼が幼なじみであるイオリに言った
最初で最後のわがままとなった。
彼の言葉に迷いが晴れたイオリは、勇者としてブラドゥークに戻る決意を決めており
そんな彼女に、カズマサは指輪を手渡そうとしていた。
イオリ『これは…ブラックリング…?』
カズマサ『あぁ…連絡手段くらいは必要だと思ってな…』
イオリ『それは受け取れないよ…だって…』
マリー『なら貴女には私からリングをプレゼントするわ…それでいいかしら?』
マリーの事を考え指輪の受け取りを拒むイオリ
そんな彼女の前に現れたのはそのマリー本人であり
マリーから受け取ったリングは
魔王軍の連絡に使っているものと全く同じものだった。
マリー『勇者イオリ…貴女は魔王軍の幹部イオリーンでもある…ならそのリングを持つ資格があるはずよ!』
イオリ『マリーさん…』
マリー『貴女には重荷かもしれないけど…私は魔王様のお言葉を尊重するわ…』
以前の彼女からは考えられない言葉…
マリーは魔王の意志を尊重した上で最期の時までその時間を大切に過ごすつもりであり
これで魔王カズマサの討伐は確定的なものになったかに見えた
だが…
マリー『あれ…リングが1つ足りないわ…落としたかしら…』
イオリの帰還後
マリーはブラックリングの数が1つ足りない事に気づく事となり
数日後
そのリングを使った者によって
カズマサはとある無人島へと呼び出されていた。
カズマサ『さすがは盗賊だな…マリーからリングを盗むとは…』
ジャック『あれだけ発情してたら落としても気づかないんじゃないか…?プライベートな事に口を出すつもりはないが人前に出てこれる状態ではなかっただろう…』
彼を無人島へと呼び出したのは盗賊のジャック…
事後だった事もあって
ジャックはマリーからの窃盗に成功しており
リングを通じてカズマサを呼び出したジャックは思いもよらぬ事を口にしてきた。
ジャック『魔王カズマサ…お前は本当に討伐される必要があるのか…?生き残る選択肢があってもいいんじゃないか?』
マリーやイオリですら言わなかった事を口にするジャック
個人的な好意を持っていない
普通の友人だからこその発言であり
これにはカズマサも驚きを隠せなかった。
カズマサ『まさかお前の口からそんな言葉が出てくるとはな…』
ジャック『理由は承知だがどうしても気になってな…今のお前はこの世界の英雄で皆から必要とされている…マリーやフィディオは勿論…イオリやアサミだって同じだろう…』
カズマサ『……』
ジャック『綺麗な自分のままで消えたいと思うお前の気持ちもわかるさ…だが…今のあいつらなら…お前の汚い部分を受け入れてくれるんじゃないのか?』
マリーやイオリの口からは言えなかった事を代弁するジャック
実際のところ
彼が生きたいと願えばそれを止める者は1人もおらず
少々の醜態を見せたところでそれが変わる事もないのは明らかであり
そんな彼女達に自らの討伐を望むカズマサの行為は
ただの自己満足なわがままでしかなかった。
カズマサ『そうだな…これはもう…俺のわがまま…皆の気持ちを無視した俺の自己満足だ…』
ジャック『それでも討たれる事を望むなら…イオリは望み通りに討伐するだろう…あいつはその為にこの世界に来たんだから…』
カズマサ『……』
ジャック『それともう1つ…俺はお前に生き残って欲しいかな…』
カズマサ『ん…どうしてだ…?』
ジャック『魔王カズマサは俺の友人だからな…それ以上理由はあるまい…』
想定外の言葉を連打され困惑するカズマサ
ジャックは全てを知った上で彼に生き残って欲しいと告げ
そんなジャックに対して
魔王カズマサは自らの想いを告げた。
カズマサ『悪いな…魔王である俺は死亡ルートを進むしかないんだ…』
ジャックの言葉を嬉しく思いつつも突き放すカズマサ
彼の心が変わる事はなかったが
ジャックの言葉はその心に深く刻まれる事となった。
ジャック『なら…盗賊の俺はお前の生存ルートを探すとしようかな…!』
カズマサ『ジャック…』
ジャック『そろそろ解散とするか…お互い…仲間を心配させるわけにもいくまい…』
道は違うものの
お互いに自分に似た何かを感じていた2人…
ジャックは最期の瞬間まで彼の生存ルートを探す事となり
敵対関係にあるはずの2人には
確かな友情が存在していた。




