第84章 迷い
イオリ『あれから2年…すっかり元通りだね…』
ジャック『お前は元に戻れてないみたいだけどな…?』
魔王軍が活動を再開するのと同日…
最果ての氷土基地では海賊の頭となったジャックがイオリの悩み相談を受けていた。
彼女は世界が平和になった事で自分がやるべき事を見失っており
ジャックはイオリの心が2年前から止まっている事に気づいていた。
イオリ『私…どうすればいいのかわからないんだ…今や魔王軍は世界から必要とされている組織…滅ぼすのは勇者の仕事じゃないよね…』
ジャック『そんな事で悩んでたのか…本人に聞いてみればいいんじゃないか?』
イオリ『本人って…私は勇者なんだよ?』
道を見失っている彼女に
魔王本人に会うべきと進言するジャック
彼は本人が忘れているイオリのもう1つの姿を知っており
魔王との気軽な接触は出来ないと話す彼女の道を切り開いた。
ジャック『確かにお前は勇者だが…確か魔王軍の魔女でもあったよな?』
イオリ『お…思い出させないでよ!!』
黒歴史を引っ張り出され思わず赤面するイオリ
そんな彼女はジャックから更なる追い討ちを貰う事となり
数分後
ジャックの高度な裁縫スキルによって
彼女の悩みは解決へと進む事となった。
ジャック『魔女イオリーン…確かこんな感じの服だったよな…?』
イオリ『う…うぅ…』
見るからに悪そうな黒いローブを手渡すジャック
彼はそのローブを纏ったイオリに縛りあげられた事を鮮明に覚えており
ローブを纏い
魔女イオリーンとなった彼女は
ジャックのキャラベル船にて魔王城へと向かう事となった。
マヤ『イオリちゃん…相変わらず魔女の姿似合うね…誰も勇者だなんて思わないよ…』
イオリ『むぅ…元々私の顔は勇者よりは魔女寄りなんだよ!』
アルテミス『そうかなぁ…私は天使の翼を着けたイオリちゃんも見てみたいけど…?』
キャラベル船に同乗する
マヤ、アルテミス、アザエルの3人
3人はジャックと共に海賊団を結成しており
世間からは魔王軍と互角の戦力を持つ海賊団だと恐れられていた。
数日の航海を経て魔王城へと到着したキャラベル船は、無事に島へと上陸する事ができ
自室にてマリーと2人の時間を過ごしていたカズマサは
フラワーから上陸の話を聞く事となった。
フラワー『魔王様!マリー様!キャラベル船が港に…』
カズマサ『わかった…30分だけ待って貰ってくれ…すぐ行くよ…』
フラワー『了解しました!』
上陸報告を受けたカズマサはフラワーに少しだけ待たせるよう指示を出し
仕事へと戻ろうとするカズマサ…
そんな彼をマリーは後ろから抱きしめており
その細すぎる腕を見たカズマサは
その場から動く事が出来なかった。
カズマサ『マリー…仕事に戻らないと…』
マリー『ふふ…そうは言っても振りほどかないんですね…』
カズマサ『リベリオンに刺された腋がまだ痛むんだろ…?そんなお前の腕に乱暴な事は出来ないさ…』
カズマサの優しさに甘えて腋の傷を残したマリーは
数分間彼をからかった後に自ら腕を解く事となった。
事の発端はマリーのあからさまな誘惑にカズマサが釣られたからであり
準備に手間取った彼は
10分の遅刻をした後にキャラベル船の客人を迎える事となった。
カズマサ『すまない…待たせてしまったようだな…』
イオリ『ううん…こちらこそごめんね…お楽しみ中だったんでしょ…?』
カズマサ『えっ…』
イオリ『2人きりで話すのは彼女に悪いから…ジャックさんを同席させるね…』
状況を察してカズマサに気を遣うイオリ
客室へと案内された彼女は幸せそうな彼を見て更に迷いを深めており
そんなイオリを見たジャックは
彼女の言葉を自らが代弁した。
ジャック『魔王城も随分アットホームになったな…魔王さん…幸せそうに見えるけど後2年で討伐されるんだろ?』
直球で言葉をぶつけるジャック
彼の言う通り
魔王軍の面々とカズマサは既に家族のような関係となっており
普通の人間であれば
自ら関係を放棄する事など考えられない状況なのは間違いなかった。
カズマサ『あぁ…討伐される為のプランは色々考えてるよ…麻美ちゃんはその為にホルスを育ててくれたみたいだしな…』
イオリ『プランって…』
カズマサ『イオリ…お前に直接言うのもあれな話だけどさ…勇者として…今の俺を討伐なんかしたくないだろう…?』
先程のお返しとばかりに
イオリの核心を突くカズマサ
彼女の心情を察していた彼は、討伐されるルートを数パターンに分けて構成しており
このままイオリが彼の討伐を放棄する事となれば
その役割を継ぐのは次期魔王であるフィディオになる予定となっていた。




