第63章 隠れ家の死闘
ホルス『まさか隠れ家がこんな形で役に立つなんてね…スキルを教えてくれたジャックに感謝しないと…』
マヤ『あいつもここまで大規模な隠れ家になってるとは思ってないよ…隠れ家と言うより秘密基地だね…』
ブラスター城の地下に広がるホルスの隠れ家
地下20階に相当するその場所の下には海が広がっており
隠れ家に残されたマヤとホルスは
海から補充した海水を塩抜きする事で水を確保していた。
2人を生存させたのは間違いなくジャックの使っていたサバイバルスキルであり
敵に見つかりさえしなければ
このまま生活する事も可能な状態だった。
ホルス『選択肢は2つだね…助けが来るのを待つか…海底から脱出するか…悔しいけど僕の力じゃ奴らを倒すのは無理だ…』
マヤ『脱出したところで行く場所なんかないでしょ…今はみんなを信じて待つ…少なくとも私はあいつを信じてるから!』
2つの選択肢から救助を待つ道を選ぶ2人
全世界が制圧されてる以上その選択は正解だったが
不運にもジャック達が到着する前に
敵に見つかる事となってしまった。
ハート『こんなところに隠し通路があるとはな…一応確認しておくか…』
隠れ家への通路を発見したのは雷魔剣士プリズムハート
ブラスター制圧後の指揮官となった彼は、偶然にも通路を発見してしまい
近づいてくる物音に気づいたマヤは
迷う事無く王子であるホルスを樽の中へと隠れさせた。
ホルス『マヤ!君も隠れて!見つかったら殺されちゃうよ!』
マヤ『残念だけど…私が隠れる場所はないみたい…ホルス君…私に何かあっても声を出しちゃダメだよ?』
ホルス『マヤ…何を…あっ…』
樽の中へとホルスを押し込むマヤ
彼女は隠れ家へと侵入してきたハートと対峙する事となり
マヤを見たハートは拍子抜けしたような表情で彼女を嘲笑した。
ハート『なんだ…勇者一向の小娘か…わざわざ来るほどの者ではなかったな…』
マヤ『あら…だったら見逃してくれると嬉しいんだけど?』
ハート『そいつは無理な相談だ…我ら円環の騎士団はリベリオン様の命により地上を糧とする…小娘とて障害とならば排除する!』
嘲笑しつつも見逃す気はない事を告げるハート
彼は自らの魔剣を納めるとマヤに対して殴りかかり
マヤは全神経を両腕に集中させた十字受けにてその攻撃を受け止めた。
ハート『ほう…そんな細腕で我が拳を止めるとは…』
マヤ『雷魔剣士なのに剣を使わないの…?』
ハート『丸腰の小娘を相手に魔剣は必要あるまい…剣を抜かしたくば実力で抜かせてみるのだな!』
剣を使わないハートに対して疑問を抱くマヤだったが
剣を使わずとも彼の力は圧倒的であり
必死の応戦も虚しく
非力なマヤの打撃では
全くダメージを与えられなかった。
マヤ『(私の打撃じゃダメだ…だったら…!)』
ハート『むっ!?』
攻撃の隙を狙って腕を捕らえるマヤ
テコの原理を利用する関節技ならばダメージを与えられるとの考えであり
全体重を乗せた脇固めがハートの右腕に炸裂した
無論僅かな時間で脱出されてしまったが
ダメージを与えたのは間違いなく
これには彼も動揺を隠せなかった。
ハート『こ…これが人間の技と言うやつか…』
マヤ『どう…?素手の闘いなら私に分がある事がわかったかしら?』
ハート『うむ…人間の技が見事なのは認めよう…だが…同じ事をされたらどうするかな…?』
マヤ『!?』
動揺しつつもあくまで剣は使わないハート
打撃が有効ではないと考えた彼は組み技で攻める事を選び
剣を誘発させるつもりだったマヤはその怪力に負け押し倒された。
いくら武術のスキルがあろうとも3倍以上の体重を持つハートと組みあって敵うはずもなく
床に倒された彼女はその重さに思わず悲鳴をあげた。
マヤ『ううっ!!』
ハート『ほう…まだ抵抗する技があるのか…?』
マヤ『武術とは元来非力な女性や老人が身を守る為に伝承されるべきもの…力に屈するわけにはいかない!』
倒されつつも両脚でしっかりとガードポジションを完成させるマヤ
脚力は腕力の3倍あると言われていたが
無論ハートの腕力はマヤの脚力を遥かに凌駕しており
彼女もそれを承知で立ち回っていた。
マヤ『(剣を使ってくれたら海に落とせたけど…見た目のわりに頭もキレるのね…)』
ハート『そろそろ限界みたいだな…細い脚が震えてるじゃないか?』
マヤ『そうだね…確かに私の脚はもう限界…だから私は限界を超えるよ!!』
ハート『何っ!?』
マヤが懐に隠していた丸薬…
それはジャックが彼女の為に研究を進めていた試作品であり
マヤはジャックを信じて丸薬を口にした。
効果時間は3分…
彼女の身体能力は3倍に跳ね上がり
両足でハートの顔を挟み込んだマヤは、そのまま彼の巨体を後方へと投げ飛ばした。
ハート『な…なんだと!?』
思わぬ反撃に驚愕するハート
彼が動揺したこのタイミングが最初で最後のチャンスであり
マヤはこのチャンスに全てを賭けて
起き上がったハートの巨体をボディスラムの要領で担ぎ上げた。
ハート『馬鹿なっ!?この俺の重量は200を超える!持ち上がるはずが!?』
マヤ『そりゃあああっ!!』
ハート『っ!?ぐああああっ!!!』
担ぎ上げたハートを頭から地面に突き刺すように叩き落とすマヤ
彼女が元居た世界ではノーザンライトボムと呼ばれるデンジャラスな投げ技であり
ハートの巨体が床に叩きつけられると
そのまま床を貫通…
両者は海の底へと沈む事となった。
マヤ『(私まで落ちちゃった…馬鹿だな…私って…)』
丸薬の効果が無ければ水圧で即死だったであろう捨て身の攻撃…
奇跡的にも海に沈んだ彼女の身体は、魔王軍の潜水艦によって回収される事となり
海中で意識を失ったマヤが目を覚ますと
そこは潜水艦の中だった。




