第59章 エルフの女王
カズマサ「はぁ…はぁ…フローリアン様…無事でいてくれよ…」
草の国プラントにて必死に魔剣を振るカズマサ
その相手はかつて自らが配下とした毒蛇王ゾーリャと同じ姿をしており
5体の毒蛇王と交戦した彼は何とか城へとたどり着く事が出来た。
城下町は既に廃墟となっていたが
城内はまだ女王フローリアンと配下の兵士達が必死の防衛戦を繰り広げており
敵の戦力と国力を考えるとこの善戦は奇跡と言っても過言ではなく
カズマサは脳内を魔王モードに切り替えて、城内のゾーリャに火炎魔法を放った。
フローリアン「テスタロッサさん!?」
カズマサ「女王フローリアン…テスタロッサとは仮の名前…俺の本当の名は魔王カズマサだ…」
敵を退け本当の名を語るカズマサ
多大な恩のあるフローリアンに対して彼は素の自分を隠しきれず
彼女は何も変わらない態度で魔王である彼を受け入れた。
非力ではあるものの高い魔力を持つエルフの女王は、植物を操る特殊なスキルで毒蛇王から城を防衛しており
戦線にカズマサが加わった事で
城内の敵全ての撃退に何とか成功していた。
フローリアン「魔王様…ご救援感謝致しますわ…」
カズマサ「フローリアン様…俺と一緒に魔王城へ来てくれないか…言いにくいがこの国はもう…」
魔王であるカズマサは長期に渡ってプラントに滞在する事は出来ず
彼女を救うには国を捨てさせるしかなかった。
無論女王であるフローリアンにそんな事が出来るはずもなかったが
彼女は微笑みながら自らを拐うように話してきた。
フローリアン「ふふっ…魔王であるなら魔王らしく…私を拐ってしまえばよろしいのでは…?」
カズマサ「あ…」
フローリアン「女王として国を捨てて逃げる事は出来ません…ですが…魔王に拐われたのであれば不可抗力です…」
彼女の言葉に戸惑うカズマサ
イオリ、マリー、フィディオと彼を取り巻く女性陣はいずれも自ら動いてくる言わば肉食系であり
受け身に回ってくるフローリアンに対して
彼はどうしても上手くペースが掴めなかった。
兵士「ぎゃああああっ!!」
カズマサ「!?」
休む間も無く城内に響く兵士の悲鳴…
これは城内に新たな敵が現れた証拠であり
王室まで押し寄せてきた2体の敵は兵士の亡骸を女王の前に投げつけていた。
フローリアン「きゃあああっ!」
カズマサ「貴様らぁ!!!」
非道な行為に激怒するカズマサだったが
円環の騎士団であるファントムとハートの両名は、リベリオンの命令によってこの国を滅亡させるつもりであり
ゲーム感覚で侵略を楽しんでいた先日までとは、根本的に闘い方が変わっていた。
ハート「ファントムよ!現職の魔王は俺に任せろ!お前はその間に城を破壊するのだ!」
ファントム「本意ではありませんが…まぁ良いでしょう…」
ファントムの魔剣が大気を斬りつけると強烈な竜巻が発生し
ハートの大剣をカズマサが回避すると
床が破壊され地割れが発生した。
敵の両名がまともに闘う気がないのは明らかであり
風魔法を止めようと触手魔法を放つフローリアンだったが風の刃によって切断され
ファントムは確実に倒せるであろう彼女に狙いを定めた。
ファントム「エルフの女王さん…貴女に恨みはありませんが野望達成の為…消えて貰いますよ!」
フローリアン「あ…あぁ…」
ファントム「魔嵐斬!!!」
ファントムの魔剣から迫る風を纏った斬撃
急所こそ避けたものの
斬撃は彼女の右肩を直撃しており
それを見たカズマサは炎の魔剣を振りかざし
黒煙を発生させた。
ファントム「何っ!?」
フローリアン「カズマサ…さん…」
視界が完全に遮断される程の黒煙に風魔法を発動させたファントムだったが
黒煙が吹き飛ぶころには2人の姿は無く
フローリアンを抱えたカズマサは魔法陣によって決闘空間へと移動していた。
魔王にあるまじき逃げの一手ではあるが
状況を考慮すれば最善の一手でもあり
彼女を下ろしたカズマサは
即座に回復魔法を発動していた。
フローリアン「魔王様なのに回復魔法が使えるんですね…助かりました…」
カズマサ「人間の中級魔法程度の効果しかないがな…聖なる魔法ゆえに魔王としての力は反映されないんだ…」
フローリアン「そう…なのですか…」
カズマサ「すまなかったな…カッコつけて出てきたのに国を救えなかった…プラントは部下の故郷でもあってな…助けたかったのだが…」
治療中に国を守れなかった事を謝罪するカズマサ
彼個人が戦闘に敗走したわけでななかったが
結果としてこのまま魔王城へ逃げ帰る事となり
魔王城へと続く魔法陣を発動させると
移動する寸前…
別の魔法陣から同じ状況の人物が合流する事となった。




