第48章 円環の孤独
フィディオ「魔王様!?今治療いたしますわ!」
重傷のカズマサに応急処置をするフィディオ
処置を終えた彼女は倒れているテスタロッサにトドメを刺そうと魔法を唱えようとしたが
それはカズマサによって制止された。
カズマサ「待て…奴とはいずれ1対1で決着をつける…」
フィディオ「魔王様…タイダルの王女としては今倒せる強敵を見逃すわけにはいきません…」
カズマサ「フィディオ…」
フィディオ「ですが…魔王軍の幹部として…魔王様のお言葉は全てに優先しますわ!」
カズマサの言葉を受け
魔法を攻撃から回復に切り替えるフィディオ
彼女に治療されたテスタロッサは潔く敗けを認めており
後の決闘に同意していた。
テスタロッサ「魔王カズマサよ…お前との決着…楽しみに待っているぞ…!」
カズマサ「あぁ…こっちもだ!」
日を改めるべく自らの拠点へと帰還する両者
フィディオが通ってきたゲートによってカズマサは魔王城へと戻る事になり
傷だらけで戻ってきた彼は、泣きそうな顔をしたマリーに抱きつかれていた。
フィディオが傷を完治させなかったのはどう考えてもわざとであり
空気の読める14歳はさりげなく部屋から退場していた。
マリー「魔王様…もう…あんまり無茶しちゃダメですよ?」
カズマサ「な…何で嬉しそうなんだよ…敵を逃がして帰って来たんだから罵声の1つでも浴びせてくれ…」
マリー「私の為に闘って怪我をした魔王様にそんな酷い事を言えるわけないじゃないですか…?」
マリーのアプローチに思わず赤面するカズマサ
それは以前のハニートラップとは違い
本心によるものであり
それが彼女の選んだ3つ目の作戦だった。
魔王であるカズマサを自分に依存させる事で彼の死を回避する
外部から死因を排除する事だけを考えていた過去のマリーは、彼自身の心を完全に無視し結果として全てが失敗していたが
今回はお互いに心の内を見せあっており
そんな中
マリーのキューブに円環の騎士団襲来の通知が届いていた。
マリー「(火の国ブラスターに襲来…麻美…頼んだからね…)」
魔王と勇者には知らされていない役割分担
側近であるマリーと女神であるアサミはお互いに全世界の情報を管理し
戦力の薄いアルザークとシュトゥルムを魔王軍が担当する形で振り分けていた。
円環の騎士団は集団での侵略はせず、基本的にはゲーム感覚で1人1人が競いあっている状態であり
ブラスターを襲撃したのは
終戦日にイオリを不意打ちした
雷魔剣士プリズムハートだった。
ホルス「うああああっ!!」
ハート「この国の王子とは軟弱だな…この程度で女々しい悲鳴をあげるとは…」
雷魔剣士プリズムハート
身長3.5メートルはあるその巨体と
巨大な両手剣を持つ彼は円環騎士団の中でも屈指のパワーファイターであり
コロシアムにて交戦したホルスは圧倒的な力で捩じ伏せられていた。
14歳と大人の身体に近づいてきてはいるが
現時点での彼の体格はイオリと差のないものであり
その細腕で打ち合えば簡単に折れてしまう事が想像出来た。
ハート「そいつが炎の魔槍テスタロッサか…いかに強力な武器とて使い手が貧弱では話にならんな…」
ホルス「確かに僕は非力だよ…でも…イオリやアサミだって女の子なのに頑張ってきたんだ!そんな事を言い訳にはしない!!」
ハート「!?」
この4年間
アサミと出会った事がきっかけで彼は厳しい修行に打ち込んでおり
魔槍の力を得た今ではブラスター内でも騎士団長であるサーベラスに次ぐ実力を持っていた。
パワーでは敵わないと悟った彼は素早い盗賊のような動きでハートの攻撃をかわし
非力である事を回転させる事で補う突きで反撃
魔槍の力もあってハートの鎧を貫通し傷をつけたが
倒すには至らず
大剣を置いたハートは
ホルスの小さい頭を鷲掴みにし
その綺麗な顔を地面へと叩きつけた。
ホルス「あああああっ!!」
思わず悲鳴をあげるホルスだったが
それでも彼は立ち上がり
敵であるハートも
彼の根性だけは認める事となった。
ハート「なるほど…まだまだ未熟ではあるがお前を騎士として認めてやろう…」
ボロボロのホルスに迫るハートの大剣
直撃すれば命はまずなかったが
大剣の一撃は水の魔剣によって防がれていた。
アサミ「ホルス君…お待たせ!」
自らの攻撃を止められ困惑するハート…
明らかに以前のアサミとは様子が違っており
魔法の威力も比較にならないレベルに達していた。
アサミ「円環の孤独!!!!」
ハート「!!?」
円環の孤独…
彼女の水魔法は以前の魔法と比べても倍以上の威力を持っており
その一撃はプリズムハートを戦闘不能にするほどの威力を持っていた。
今ならばトドメを刺す事も出来たが
アサミはそれをせずに彼を撤退させる道を選んだ。
ハート「何故…トドメを刺さぬのだ…?」
アサミ「私は女神として最大の禁じ手を使った…だから初回だけは見逃すと決めていたの…」
ハート「!?」
女神としての禁じ手…
今の彼女は仮の身体では無く
女神マミ本体であり
女神としての力を戦闘に使用していた。
ブラドゥークの大陸が制圧された事で、アサミを蘇生させる不死天使アスモデウスが封印されたのが最大の理由であり
その力はプリズムハートを圧倒する程だった。
魔王と女神…
2人の闘いはトドメこそ刺しては居ないものの勝利と言って間違いない内容であり
この状況を知った円環の騎士団は
攻撃の手を更に強めていく事となった。




