第29章 魔導艦隊
カズマサ「ふははははっ!性懲りもなくまた1人で来るとはな…勇者よ!」
がいこつ兵「魔王様…お茶をお持ちしました!」
イオリ「ご苦労…下がっていいわよ!」
がいこつ兵「アイアイサー!!」
カズマサ「いやお前何勇者の言う事聞いてんだよ!?」
ここは魔王城の客室
幽霊船を占領して魔王城へと乗り込んだイオリは、魔王から客人として出迎えられ
ソファーの上に腰をかけていた。
その2人の様子は敵対する勇者と魔王ではなく
完全に転生前の2人と同じ状態だった。
カズマサ「んで…どうしてここに来た?仮にもお前は勇者で俺は魔王なんだが?」
イオリ「その勇者と魔王に(仮)がついたからだよ…人間同士の争いが始まって…私は勇者としてどうしたらいいのかわからなくて…」
魔王を討伐する為に選ばれ転生したイオリ…
彼女にとって今回の戦争は自分の存在意義を奪われるものであり
それは魔王である彼も同じだった。
イオリが選んだ相談相手は決して間違っておらず
そんな彼女に
カズマサは魔王として協力を要請した。
カズマサ「なら魔王としてお前に言おう…俺の部下になれ…!さすれば世界の半分をお前にやろう!」
イオリ「え…半分しかくれないの…?」
カズマサ「図々しい勇者だなおい!」
イオリ「だって君…私をあんなに痛みつけて殺そうとしたんだよ?半分で足りると思ってるの?」
カズマサ「そ…そうだったな…ごめ…」
イオリ「なーんてね…冗談だよ!私はあくまで勇者だからね!やるべき事が終わったら魔王の君を討伐するよ!」
カズマサ「イオリ…」
イオリ「ねぇ…君に1つだけ確認したい事があるんだけど…いいかな?」
カズマサの協力要請を受ける前に1つの確認をするイオリ
それは勇者としてではなく
彼の幼なじみである伊織としての言葉であり
彼女は震える声でカズマサに問いかけた。
イオリ「少し前の事だけど…魔王軍の侵略で冒険者の女の子が殺されたわ…君はその事についてどう思ってるの?」
イオリの問いに言葉を詰まらせるカズマサ
魔王として就任後した以上
冒険者の死は必要な犠牲だと考えていたが
それが少女となると精神的には辛いものがあり
少し間を空けて彼は口を開いた。
カズマサ「魔王に就任した以上人間の死は付き物だ…仇を討ちたければかかってくるがいい…全てが終わった後でな…」
魔王と勇者の一時的な共闘…
カズマサの返答を聞いたイオリは彼の部下として戦争を終わらせる為に闘う道を選び
彼から今後の作戦を聞く事となった。
イオリが占領した幽霊船はその作戦の尖兵であり
カズマサはモニターを使用して彼女にわかりやすく説明した。
カズマサ「我が軍は魔導戦艦の開発に成功した…これを使い武力行使で停戦させるのだ!」
イオリ「一隻で?」
カズマサ「確かに戦艦は一隻だが戦艦の回りに幽霊船がたくさんいたら大艦隊に見えるだろう?戦艦の主砲を放てば他の幽霊船も戦艦に準ずる強さだと錯覚する…」
イオリ「ブラフで停戦させるって事ね…魔王とは思えない姑息なやり方だけど賛成するわ!」
一隻の戦艦と無数の幽霊船によるブラフ戦術
カズマサのその戦略は一見卑怯で姑息なものに見えたが
勇者の視点から見れば犠牲を出さずに終戦させる合理的なものであり
更に彼には確実に1ヶ国を闘わずして降伏させる自信があった。
イオリ「ふ~ん…ここが戦艦の内部か…動力はどうなってるの?」
トモスケ「動力は動力室でアンデッド達が必死にプロペラを回す事になるぞ!」
イオリ「あれ…その声…橋田君?」
トモスケ「久しぶりだな宮田…話には聞いていたが会えるとは思ってなかったぜ!」
魔王城での説明後
カズマサががいこつ兵達と出撃の準備を整えているその間
イオリは戦艦の指令室でモニターにされたトモスケと再会した。
戦艦の動力は船底の動力室でスタミナの概念がないアンデッド達がペダルを回し続ける原始的なものであり
緊急時には動力を魔力に切り替えて魔王の力で高速移動する事も可能としていた。
魔導戦艦の名の通り
主砲からは魔王が詰め込んだ必殺の火炎魔法が発射される事となり
全ての説明を聞いたイオリは
戦艦では無く前線の幽霊船に乗り込む事を希望した。
カズマサ「おいおい…幽霊船は囮や盾の役割も兼ねてるんだ…どうして…?」
イオリ「知ってる…?船に女を乗せると不吉な事が起きるんだよ?」
カズマサ「面白い冗談だ…船には魔王である俺が乗っているんだぞ?それより不吉な事など存在しない!」
イオリ「あはは…そうかもね…」
カズマサ「まぁいい…危なくなったらこのリングを使え…異空間へのワープと俺への通信が可能だ…」
イオリ「一応貰っておくよ…多分使わないと思うけど…」
アサミに渡した物とは別空間へと繋がるリングを渡すカズマサ
全ての準備を終えた魔王軍は一隻の魔導戦艦と12隻の幽霊船を率いて出港する事となり
まずは風の国シュトゥルムへと向かった。
以前魔王軍から攻め込まれたシュトゥルムの王族達は瞬く間に水の国タイダルへと亡命しており
魔王軍の大艦隊を目前とすればどうなるかは魔王の想像通りだった。




