第23章 魔王と勇者
イオリ「酷いよ…こんな事って…」
地上へと戻ったイオリの前に広がる半壊したブラドゥーク…
ダークナイトの猛攻でまだ幼さの残る冒険者達が何人も犠牲となり
その辛い光景に彼女は泣き崩れていた。
そんな中…
ジャックとアサミが無事に町へ戻って来た事は彼女にとって朗報だったが
その2人によって
マヤが囚われの身となっている事を知らされた。
イオリ「返して欲しければ1人で来い…か…」
アサミから魔王の手紙を受け取ったイオリは単身で魔王城へ乗り込む事を決意
夜まで宿で休んだ彼女はその日のうちに魔王城へ向けて出発した。
さすがのアサミも魔王城へ直接ゲートで飛ばす事は不可能であり
まず彼女は始まりの大陸南部の港へと到着
そこから船にて海を南東に進む事で魔王城のある島を目指した。
イオリ「魔王の城…世界の中心にあるんですね…」
船長「実際に中心にあるからな!まぁ納得いかない気持ちもわかるけどよ!」
船の中にで魔王城が地図の中心に描かれている事に疑念を抱くイオリ
船の中の世界地図は魔王城を中心に北部に風の国、南部に火の国、西部に水の国、東部に雷の国が描かれており
始まりの大陸は風の国と水の国との間に位置されていた。
初日に交戦した魔王と今回の人質作戦に関しても彼女は、若干のズレと違和感を感じており
疑問を抱いた船の寝室で眠りについた彼女は
ある夢を見る事となった。
イオリ「私の居た世界…私にパシられてる貴方は…誰…?」
女神によって記憶を封印されても
記憶の底に残っている幼馴染みの姿
同時刻…
その幼馴染みは
魔王城にて決戦の準備を整えており
闘いの前に温泉に浸かろうとした彼は利用中の張り紙に撃退された。
カズマサ「マリーか…そう言えば湯治中だったな…」
魔王軍のほとんどは治療中のマリーを含めて休暇となっており
それは幹部であるバルフートも例外ではなかった。
本人は負ける事など微塵も考えていなかったが
ここで敗北するような事があればカズマサの魔王生活はこの4ヶ月で終焉を迎える事となり
翌日
イオリが島へと上陸すると
彼は自らの足で彼女を出迎えに行った。
カズマサ「恐れずによく来たな…勇者イオリ…!」
イオリ「魔王…マヤはどこ!?」
カズマサ「そこの魔法陣に入れ…会わせてやる…」
イオリ「……」
言われるがままに魔法陣へと足を入れるイオリ
魔法陣の先は魔王城の地下牢へと繋がっており
牢獄に囚われたマヤは細い両腕を上から吊るされて
意識を奪われていた。
イオリ「マヤちゃん!!」
カズマサ「心配するな…催眠魔法で寝ているだけだ…お前が決闘に応じるならすぐにでも解放してやる!」
マヤの姿を見せすぐ隣の中庭へと移動させるカズマサ
中庭の決闘場はかつて雪男爵が誕生し実験させられた場所でもあり
生みの親である魔王と敵対する事になった男爵の核はその光を失っていた。
魔王本人にそのつもりは全くなかったのだが
イオリの視点から見ればそれは完全に卑劣な罠であり
中庭に到着した彼女は魔王に対して非難の声をあげた。
イオリ「人質をとって…自分に有利なフィールドに誘導して…貴方…それでも本当に魔王なの!?こんな小娘相手に恥ずかしくないの!?」
カズマサ「た…対等なフィールドのつもりだったのだが…」
思わぬ口撃に動揺し本音が出てしまうカズマサ
これ以上の口撃を受ければ思わず「ごめん」と言ってしまいそうであり
口喧嘩に敗北した彼が合図を出すと
中庭を繋ぐ通路にシャッターが降下した。
カズマサ「これでこの場には俺とお前だけだ…誰にも邪魔はさせないから安心するがいい!」
イオリ「……」
彼女との間に壁を作るかのように魔剣を構えるカズマサ…
勇者と魔王の2回目の闘いはこうして始まりを迎え
2人の魔剣はお互いの魔力を纏い
中庭の中央で交わった。
カズマサ「(もうすっかり勇者様だな…初日と全然違うじゃないか…)」
闘いの中でイオリを向き合うカズマサは初日との違いを実感する…
迷いのない剣筋
身体つきも普通の女子高生だったものが女勇者に相応しいものへと変わっており
震えるだけだった脚も格闘スキルで魔王を攻撃する立派なものへと変わっていた。
イオリ「そりゃーっ!!」
カズマサ「ぐっ…」
明らかに劣勢な魔王
身体能力やスキルではまだまだ圧倒的な差があったが
精神的には逆の意味で圧倒的な差があり
彼の心を惑わせた。
「このまま負けてあげたい…」
その感情が魔王の戦闘力を大幅に低下させ
勇者の膝蹴りを腹部に受けた彼はその場に膝をついた。
まもなく第1部が終わります




