第21章 ジャックとマヤ
マヤ「ジャック…どうして…?」
ジャック「町に残されるよりはお前と一緒にいた方が安全だと思ったんだがな…うん…やらかした…」
異空間にて竜魔王バルフートと対峙するジャックとマヤ
漆黒の翼と身体に全長8メートルはあるであろう巨大なドラゴンを見た2人は、まず最初に勝ち目がない事を悟った。
さりげなく半歩前に踏み出して竜魔王を牽制するジャックだったが
マヤはそんな彼に本音をぶちまけた。
マヤ「ジャック!見栄を張らなくていいから脱出する方法を考えて!」
ジャック「うぐっ…」
マヤ「時間を稼ぐのは私の仕事だよ…あんたが考える時間くらいは作って見せるから!」
ジャック「マヤ…」
マヤ「どうしたの?」
ジャック「倒してしまっても構わないぞ?」
マヤ「それはあんたが今言うべきセリフではないでしょう!!」
ジャックに脱出方法を考えさせるべく竜魔王へと向かっていくマヤ
彼女の長い脚による飛び膝蹴りや回し蹴りが次々と命中したが
残念ながらダメージは殆ど無かった。
竜魔王の皮膚は鉄どころかミスリル以上の硬さであり
逆にマヤの脚にダメージが残っていた。
バルフート「我が名は竜魔王バルフート!元気な娘さんだ…魔王様の命令とは言え殺してしまうのは惜しいな…」
マヤ「そう思うなら脱出する方法を教えてくれませんかね?」
バルフート「脱出は不可能だ…この異空間からは勝者しか出る事は出来ない…勝者が決まった時にそこの魔法陣が輝き地上へと戻るのだ…」
脱出の鍵は地面にある魔方陣…
バルフートの言葉が正しければ勝者しか使う事は出来ないようだったが
ジャックは過去の経験と盗賊の勘で必死に考えた
だが…
マヤ「きゃああああっ!!」
ジャック「マヤ!!」
バルフートの強さは圧倒的であり
尻尾が被弾したマヤは悲鳴をあげて転倒
どう考えても時間を稼げるような状態では無くなっており
転倒したマヤに竜魔王の更なる追撃が迫ると
ジャックは思わず救出に入った。
マヤ「わ…私に構わないで!早く方法を!」
ジャック「考えたが俺の手持ちでは無理だ…闘って倒すしかない!!」
マヤ「本気で言ってるの!?私達2人で勝てるわけ…」
ジャック「闘うのは俺1人だ!マヤは下がってろ!!」
マヤ「え…?」
ジャックはマヤを抱えて竜魔王から距離をとり
彼女を降ろすと1人で闘う事を宣言した。
冷静に考えれば勝ち目が0なのは明らかだったが
ジャック特有の謎の自信がマヤを納得させていた。
ジャック「これでも喰らいやがれ!!」
バルフート「!?」
ジャックから投げつけられる金属製の水筒
その中身は先日調合した猛毒薬だったが無情にも全く効果は無く
バルフートの尻尾が彼に直撃すると
全身が砕けるような衝撃を受けダウンした。
マヤ「ジャック!!!」
ジャック「ぎゃあああっ!!死ぬ死ぬ死ぬぅぅぅ!!!!」
瀕死の重傷を負ったジャック…
誰がどう見ても彼の戦闘不能は明らかであり
マヤは敵わないのを承知で竜魔王の前へと飛び込むつもりだった。
武闘家としての誇りを持つ彼女はジャックより先に死ぬ道を選ぼうとしていたが
そんなマヤに対して彼の声が響き渡った。
ジャック「マヤ!!フィールドをよく見ろ!!お前だけでも逃げるんだ!!」
ジャックの声で魔法陣の光に気づくマヤ…
彼の狙いは自らがボコボコにやられる事で魔方陣に敗北を認識させる事であり
ジャックの言う通り
今魔法陣に飛び込めば脱出する事が出来た。
だが…
ジャック「おい!何をしている!早く逃げ…ぬああああ!!」
ジャックの元へ駆け寄るマヤ
彼女はジャックを無理矢理起こすとそのまま巴投げで彼を投げ飛ばした。
マヤ「ジャック…逃げるのは盗賊の仕事だよ!!」
魔法陣の中へと消えていくジャック…
彼が地上へと戻ると魔法陣は光を失ってしまい
覚悟を決めたマヤはその場に座り込んでいた。
マヤ「やれる事はやったわ…好きにしなさい…」
バルフート「我も城に戻らねばならんからな…娘よ…悪く思うな…」
マヤに迫る竜魔王バルフート…
その巨大な足に踏まれてしまえばまず彼女の命は無かったが
マヤがバルフートに潰されるその直前
逆立った赤髪の男が魔法陣より現れ
バルフートを制止していた。
マヤ「赤髪の剣士…もしかして武術大会の…」
バルフート「……」
無言のままに魔法陣へと消えていく竜魔王…
九死に一生を得たかに見えたマヤだったが
赤髪の男はそんな彼女の首筋に触ると
雷魔法を放った。
マヤ「あぁ…」
首筋に電流を流されたマヤはそのまま意識を失い
彼女を抱えた男はそのまま魔法陣の中へと消えていった。
マヤが目を覚ますと
そこは魔王城の地下牢獄であり
最悪の事態こそ回避したものの
まだまだ彼女の危機的状況は続くのだった。




