第13章 竜魔王バルフート
カズマサ「カタカタカタ…」
マリー「魔王様…?モニターの前に座り込んで何をしてるのです?」
カズマサ「部下達のスキルポイントや作戦状態を管理してるんだよ…せっかくモニターがあるからエクセルでまとめてみたんだ!」
魔王城の指令室にて響き渡るキーボードの音
カズマサは部下のモンスター達のスキルカードを全てモニターで管理する事に成功しており
これにより直接命令を出さなくても作戦の変更や中止を伝えられるようになっていた。
無論外部から操作されると大惨事になるデメリットはあったが
モニターは魔術によって姿を変えられたトモスケであり
機械音痴なマリーが触らない限りは、ノーリスクハイリターンな改革となった。
カズマサ「さて…午後は火の国を攻める軍団長を召喚しよう!マリー…今日は全力で魔力を使うから俺が倒れたらベッドまで運んでほしい!」
マリー「魔王様!またそんな無茶を!!」
カズマサ「無茶をするのは今回で最後だ…これで4軍団が揃うわけだからな!」
その日の午後
モニターから描かれた魔法陣に対してカズマサは全魔力を注ぎ込み
召喚は成功した
漆黒の翼と身体に全長8メートルはあるであろう巨大なドラゴン
今の魔王に召喚可能な最強のモンスターである事は間違いなく
魔力を使い果たした彼はその場に倒れていた。
バルフート「我が名は竜魔王バルフート…まさか私を召喚する者が現れようとは…堕天使の娘よ…そなたが召喚したのか?」
マリー「違います…貴方を召喚したのはそこで倒れている魔王様なのです…」
バルフート「おぉ…若いのに無茶しおる…」
カズマサ「マリー…助けてくれぇ…」
マリー「すみません竜魔王様…詳しい話は私の方からしますので…」
マリーによってベッドへと運ばれるカズマサ
バルフートに関してはその気になれば火の国を単騎で滅ぼす事も出来る圧倒的な戦闘力を持っており
マリーも丁寧に状況を説明した。
バルフート「なるほど…滅ぼさずに適度に攻めれば良いのだな?」
マリー「はい…配下のモンスター達はこちらで用意しますので…」
バルフート「承知した…任せておけ!」
幸いな事にバルフートは高い知能でマリーの説明を理解し
カズマサが寝ている間に自ら動いて侵略をスタートしていた。
これによって魔王軍は完成
残る仕事は拠点から指示を出すだけでも問題無かったのだが
理想の魔王を目指すカズマサは
目を覚ますと自ら出陣すると言い出した。
マリー「出陣ですか…?」
カズマサ「あぁ…勇者の輩がどれくらい強くなったのか確かめてやろうと思ってな…」
マリー「とか何とか言って…可愛い幼なじみの顔が見たくなっただけですよね?」
カズマサ「まぁ…それもあるかな
…」
マリー「むぅ…」
勇者パーティを発見次第その戦闘への介入を表明するカズマサ
無論適当なタイミングで撤退するつもりではあるが
禁術による負担が心配なマリーとしては彼に休養して欲しいと思っており
少々不機嫌な顔を見せていた。
カズマサ「なんだよ…機嫌悪いのか?」
マリー「別に不機嫌じゃありませんよ!」
カズマサ「しばらく禁術を使う必要もないからな…少しは身体を動かしたいんだよ…」
マリー「運動ですか…?それでしたら私と…」
トモスケ「おい夜神!毒蛇王から連絡があったぞ!勇者イオリを雷の国にて発見したそうだ!」
毒蛇王からの報告に遮られるマリーの声
報告を受けたカズマサは移動用のブラックドラゴンを召集すると
そのまま現場へと向かってしまった。
悲しそうな顔で彼を見送るマリーの目には涙が浮かんでおり
それはモニターとなっているトモスケにもはっきりと見えていた。
トモスケ「一緒に行かないのか?」
マリー「私が戦場に居ても邪魔になるだけですから…」
トモスケ「まぁ…あんたまで参戦したら上手く敗けられないか…」
マリー「トモスケさん…魔王様は…本当に討伐されるおつもりなのでしょうか?」
カズマサが不在の今しか聞けない
彼女の疑問
魔王の親友であるトモスケならば彼の本心がわかると思いマリーは問いかけた。
カズマサの側近となって約2ヶ月と短い時間ではあるが既に彼女は彼が討伐される事を恐れており
その問いに親友は迷わず答えた。
トモスケ「間違いないな…あいつにとって理想の悪役とは最期に散るからこそ完成する物…狂ってるよな…」
マリー「トモスケさん…私は魔王様が助かる道を探してみるつもりです…勿論…魔王様には内緒でお願いしますね?」
トモスケ「生存ルート…か…」
マリー「堕天使の私は魔王様を死亡ルートから堕落させる…そして天使として…彼を生存ルートへと導きます!」
魔王を死なせない
そう誓った彼女は側近としての仕事をしつつも
裏で暗躍していく事になり
人知れずマリーの闘いは始まりを向かえた。
残る時間は9年と10ヶ月
長いようで短いこの時間は魔王にとって瞬く間に過ぎていく事となるのだが
彼女にとっては永遠にも感じる時間となった。




